今週は、私たちの周りの森と、大きな循環の中で繋がる存在「海」を舞台に、長年写真を撮り続ける水中写真家・中村征夫さんにお話を伺います。
中村さんは半世紀・50年以上にわたり、世界の海に潜り、海の生き物たち、そして海とともに生きる人々の姿を、写真に収め続けています。まだヘドロだらけだったころから、東京湾の写真も撮り続け、誰も知らなかった東京湾の真実を伝えた方としても知られています。


〜中村さんは一年のうちどのくらい水中潜っていらっしゃるんですか?
半分くらいでしょうか。鼓膜が今も耳鳴りをしてるんですけども、あまり潜るので水圧から体が守ろうとしてるんじゃないかと思うんですよ。それで恐らく耳の軟骨が発達して水圧を防ごうとしてるんじゃないかと思うんです。それでど耳鳴りしてるんじゃないかと思うんですよね。さらに耳の中から毛が出てきました。これも鼻毛と同じように余分なものを防ごうとしてるんじゃないかなと思うんですね。だから徐々に徐々に半魚人に近づいてるんじゃないかと思うんです。

〜どのくらい深さまで潜るんですか?」
いざってときは70mくらいまで行ったことありますけども、深いと魚も少ないし暗いし、それよりは一番生き物が豊富な太陽の燦々と降り注ぐ10mそこそこ。それより浅いところですね。深いところにずっと長いこといるとあんまり体に良くない。体内に窒素がたまってしまう。ボンベの空気の窒素が体内に溶け込んでしまうんです。
海は人間の住める世界じゃないので、いつも慎重に潜っています。自分の今までの長年の経験なんていうのも海の生き物からみればそんなもんかって言われちゃうくらい下手くそだと思うので、海は別世界だからそこで事故を起こさないように無謀なことは一切しないで、だから一度も今まで潜水事故はないです。


〜中村郁夫さんのカメラマンとしての最初の水中での一枚ってどういうものだったんですか?
神奈川県の真鶴岬っていうのがありますけども、19歳のときにそこがバスから見て目の前に海が広がってるっていうことで、琴ヶ浜っていうところでバス停で降りて、そこで海水浴をしてたんです。そこで写真を撮ってるダイバーに出会って、ものすごく体が震えるくらい感動した。それで写真をやってみようと思ってすぐ翌日には水中カメラと、小さなカメラですけど、ダイビングウィットスーツとか全部揃えて真鶴に通い始めました。
我流だったので、シャッタースピードとか露出とか全くわからなくて。なにしろ写真に興味がなかったから。撮っても撮っても何も写ってなくて、2年以上は写ってなかったかもしれません。写真屋さんにいつも笑われてました。「今回もだめですね」って。光が足りないよって言われても、光が足りないって意味がよく分からないわけですよ。それである時今日は思いっきり潜ろうと思って2mか3mまで潜って岩にしがみついたんですね。黙ってると体がフッて浮いてきちゃうもんで。
しがみついて何となく水面を見上げたら一匹のフグがひゅーっと泳いでいったんで、「あ、フグだ」と思ってパチッと撮ったんですよ、上の方を向けて。それだけが写ってたんです。ということは僕は泳ぎも潜りもできないから、ほとんど水面から暗い岩を上からパチパチ撮ってたけども水面は明るいので逆光でシルエットでフグが写ったんです。光が足りないってことはこういうことかって思って納得して、徐々に徐々に色んな本を読んでわかってきたんですけどね。よくやめなかったなっておもいます。


〜この番組は森をテーマにした番組なので、水中から見た緑のある風景について色々お伺いしたいなと思うんですが、北海道の知床に漂着する流氷。あの流氷を水中から見ると、白じゃないんですか?
海中から見るとグリーンです。あのグリーンが実は知床の海を支えている植物プランクトンの塊なんですよ。そもそも流氷っていうのは、シベリアを流れるアムル川が冬には凍って、それが風で流されて、海の周りも流氷で満ちて行くんですよね。それが今度は海流で流されて押しやられて知床半島まで流れてくるんですけども、アムル川はツンドラを流れる川なので、植物プランクトンとかびっちり詰まってるんですよ。凝縮されてる、そういう栄養満点の氷なんですよね。その緑色に見えるのが植物プランクトンの色。アイスアルジーと呼ばれる植物プランクトンなんですよね。それが岸とか沿岸に流れ着くことによって、沿岸にいるエビ、カニなどの動物性プランクトンがアイスアルジーの中に突っ込んでいくわけですよ。
で、ばくばく食べてるわけ。そのえびやカニを狙って今度は小魚がやってくる。それを狙って一回り大きな魚がやってくる。スケソウとか、ニシンとかやってくる。それを狙ってトド、アザラシがやってくる。それを狙ってシャチまでやってくる。そういうアイスアルジーっていう植物プランクトンが連鎖を編み出している。だから流氷が来ない年は海が非常に栄養が乏しくて漁獲がガクンと落ちるとよく言われています。
海の食物連鎖を支えているのはほとんど沿岸だと僕は思ってます。岸に流れ着く栄養が原点で、これらを動物性プランクトンが食べにくる。要は全部岸から始まっていくと思っています。


〜私たちは流氷の色は白だと思っていますが、でもそれを下から見たらアイスアルジーのグリーンを見ることができるんですね。
できます。ものすごくきれいなグリーンの色ですよ。氷の切れ目から太陽の光芒がさーっと差し込んでいて、本当息を呑むような美しさです。

中村さんのお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き中村征夫さんのお話をおとどけします。

中村征夫さんのサイト→http://www.squall.co.jp/
中村征夫さんの本→http://squall.shop-pro.jp/?mode=srh&cid=&keyword=


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Skinny Genes / Eliza Doolittle
・Tenerife Sea / Ed Sheeran

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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