- 2013.05.19
「アマゾンの森を行く」関野吉晴さんの旅〜?
JFN38局結んでお送りする『いのちの森 voice of forest』。
この番組は、「森の長城プロジェクト」をはじめ、
全国に広がる植林活動や、自然保護の取り組みにスポットを当てる
プログラムです。各分野の「森の賢人」たちの声に耳を傾け、
森と共存する生き方を考えていきます。
今週は、海外…とくにアマゾンの森を良く知る方のインタビューをお届けします。
お話を伺ったのは、探検家で武蔵野美術大学の教授、関野吉晴(せきの・よしはる)さん。
アフリカで生まれた人類が、ユーラシア大陸を経て、南アメリカへたどり着いた
悠久の旅『グレートジャーニー』。関野さんは、その5万キロの道のりを
さかのぼる旅を成し遂げた方として知られています。
実は学生時代から南米を旅してきたという関野さんが、その目で見てきた
アマゾンの森林が持つ力、自然のしくみについて、色々教えて頂きました。

6万年前にアフリカで生まれた人類が、5万キロを経て
南米の最南端に行き着いたグレートジャーニー。
関野さんが、このグレートジャーニーをさかのぼる旅を考えたのは、
南米・アマゾンで出会った、現地の人々の「顔」でした。モンゴロイドと
呼ばれる彼らの顔は、私たち日本人と共通点が多いんだそうです。

「アマゾンに行くと、似ているわけですよね、日本人と顔が。
顔だけじゃなく背格好や仕草、性格もシャイなんです。
ラテンアメリカに住んでいるのにラテン系ではなくアジア系の人たち。
それは行く前からわかっていたんですが、やっぱり似ていて驚いた。
アマゾンに居る人たちのルーツは、
シベリアからベーリング海峡が陸続きだった頃にマンモスやトナカイを追いかけてアメリカ大陸へ渡ってしまった人じゃないかと。
残った人もいるわけだが南下した人もいるから、
そういう人たちだから似ているのは当たり前ですね。」
どうしてグレートジャーニーという旅を始めたのか、関野さんにお伺いしました。
「20年間にわたってアマゾンやアンデス、パタゴニアの先住民と付き合っているうちに、
この人たちがいつどのようにして、なぜやってきたのかを知る旅をしたいと思って始めたのがグレートジャーニーなんです。
ゴールはアフリカ。
アフリカで生まれてヨーロッパ、オセアニア、日本列島に来た人もいるけれど、
一番遠くまで行ったのがアフリカ発、シベリア、アラスカ経由、南米最南端。
その旅路をイギリス人考古学者がグレートジャーニーと名付けたんです。
南米の先住民たちがいつどのようにしてやってきたのかと言う発想でやってきたから逆ルートになったのです。
ルールを決めて、出来るだけ太古の人に想いを馳せながら、太古の人たちがどういう想いで旅をしたのか。
風や暑さ寒さ、臭いや埃を太古の人たちと同じように五感で感じながら旅がしたかったから、
自分の腕力や脚力でやった。
ただ、トナカイや犬やラクダ、ウマは昔の人も使っていただろうから、それを自分でくくれればいいというルールにした。
昔の人がやった旅がグレートジャーニーなので、僕がやったのはプライベートグレートジャーニー、マイグレートジャーニーと言った方が良いかもしれません。」
関野さんは、このグレートジャーニーの旅に出る前から、
何度もアマゾンを訪れています。
アマゾン川流域に広がる熱帯雨林の巨大な森林と、
そこで生きる先住民たちと接する中、関野さんが感じたことを伺いました。
「最初に感じたのは、森の中で周りを見ると同じ木を見るのに苦労するということ。
色んな木が生えている。
なぜかというと、同じ木が生えていたら根の張り方も同じで同じ栄養を取るため「つぶしあう」から。
違う木が生えることで、根の張り方も栄養も違うためお互いに譲り合って、こんもりした森が緑のじゅうたんの上にできるんです。
実はアマゾンの土は腐葉土が薄く貧しいが、植物が多様であることでなんとかなっている。
それが剥がされてしまう…大規模な農園を作ったり牛を飼うために木を全て切ってしまうと、直射日光があたり雨脚の強さで養分が消化されたり流されてしまうことで砂漠化してしまう。
それをアマゾンの人たちは上手く真似しているですよ。
木を全部切らないで、パイナップルやトウモロコシ、バナナやイモなど色んなものを植えるというのは、森の真似をしているということ。
焼き畑が悪いことだと言われるが、森を真似したやり方。この人たちは生態学者なのかと言うくらい持続可能な農法をやっているんですね。」
なんか、「森の長城プロジェクト」の指南役、
宮脇先生が唱えている「潜在自然植生理論」に似てるような・・・。
アマゾンの人たちは、
「森と同じように、色んなものを植えたほうがいいんじゃないか」と、
ずっと昔に気がついていたんですね。
その一方、関野さんは、
森の中で動物を狩り、木の実を取って暮らす先住民の生活も見ています。
そこで感じたのは、彼らと日本人の生き方・考え方の大きな違いです。
「彼らのすごいのは、足跡を見ていつのものか分かるということ。
ちょっとへこみがあるとどんな動物なのかもわかるんです。
バクを見つけると、バクは大体同じコースを通うので、それを追いかける。
動物によっては違う歩き方をする。弓矢で急所にあたってもすぐには死なない。血を出して歩いていく。
足跡と血痕を見ながら追いかけて、出血死するのを追いかけてとどめを刺して捕まえる。
だから森や動物をちゃんと知らないとと狩りは出来ないのです。
いつも同じじゃないから創意工夫、知恵、想像力が必要です。
アマゾンの民は、本当に狩りを好きでやっている。喜々としてワクワクやっている。
それは、農耕民とは違うんです。
農耕民は面白くない。
種をまいて苗を植えて雑草を取ってというのは楽しくない。
何か月後1年後の収穫のために今の作業をしている。
それが森の場合はその日のうちに木の実は取れるし、動物も魚も獲れる。
生き方が違うんです。
森に生きる人は今を大切にしています。
今を生き生きと味わって生きています。
ただし将来の夢みたいなものをもたないという傾向はあります。
我々の情報社会のもとは農業が基盤。
その影響が来ていて、将来のために生きている。
極端な話をすると小学校に入る前にいい小学校、中学校、大学、良い就職先、良いポストを願いますよね。
気がついたら「俺はなんのために生きていたんだ」ということになりかねない。
夢は持てるが下手すると未来ばかり見て生きて今を大切にしていないというところがある。
森の人間は、生きがいがないわけじゃない。
子どもたちを育て、みんなと仲良くやって歌を歌い踊る。生きがいはある。
ただ、それは遠い未来ではない。
今を大切にするという意味では森の人たちには敵わない。
僕たちには夢を持つ、生きがいを持つという違う到達点がある。
ただ、もうちょっと今を大切にした方がいいんじゃないかとも思う。」
なるほど〜〜!
「今を生きるアマゾンの民」と「未来の為に今を過ごす私たち」。
深いです!!
来週も、この続きをお送りしますね!
関野さんの優しい語り口を聞きたい人は、ポットキャストでお楽しみ下さい。
この番組は、「森の長城プロジェクト」をはじめ、
全国に広がる植林活動や、自然保護の取り組みにスポットを当てる
プログラムです。各分野の「森の賢人」たちの声に耳を傾け、
森と共存する生き方を考えていきます。
今週は、海外…とくにアマゾンの森を良く知る方のインタビューをお届けします。
お話を伺ったのは、探検家で武蔵野美術大学の教授、関野吉晴(せきの・よしはる)さん。
アフリカで生まれた人類が、ユーラシア大陸を経て、南アメリカへたどり着いた
悠久の旅『グレートジャーニー』。関野さんは、その5万キロの道のりを
さかのぼる旅を成し遂げた方として知られています。
実は学生時代から南米を旅してきたという関野さんが、その目で見てきた
アマゾンの森林が持つ力、自然のしくみについて、色々教えて頂きました。

6万年前にアフリカで生まれた人類が、5万キロを経て
南米の最南端に行き着いたグレートジャーニー。
関野さんが、このグレートジャーニーをさかのぼる旅を考えたのは、
南米・アマゾンで出会った、現地の人々の「顔」でした。モンゴロイドと
呼ばれる彼らの顔は、私たち日本人と共通点が多いんだそうです。

「アマゾンに行くと、似ているわけですよね、日本人と顔が。
顔だけじゃなく背格好や仕草、性格もシャイなんです。
ラテンアメリカに住んでいるのにラテン系ではなくアジア系の人たち。
それは行く前からわかっていたんですが、やっぱり似ていて驚いた。
アマゾンに居る人たちのルーツは、
シベリアからベーリング海峡が陸続きだった頃にマンモスやトナカイを追いかけてアメリカ大陸へ渡ってしまった人じゃないかと。
残った人もいるわけだが南下した人もいるから、
そういう人たちだから似ているのは当たり前ですね。」
どうしてグレートジャーニーという旅を始めたのか、関野さんにお伺いしました。
「20年間にわたってアマゾンやアンデス、パタゴニアの先住民と付き合っているうちに、
この人たちがいつどのようにして、なぜやってきたのかを知る旅をしたいと思って始めたのがグレートジャーニーなんです。
ゴールはアフリカ。
アフリカで生まれてヨーロッパ、オセアニア、日本列島に来た人もいるけれど、
一番遠くまで行ったのがアフリカ発、シベリア、アラスカ経由、南米最南端。
その旅路をイギリス人考古学者がグレートジャーニーと名付けたんです。
南米の先住民たちがいつどのようにしてやってきたのかと言う発想でやってきたから逆ルートになったのです。
ルールを決めて、出来るだけ太古の人に想いを馳せながら、太古の人たちがどういう想いで旅をしたのか。
風や暑さ寒さ、臭いや埃を太古の人たちと同じように五感で感じながら旅がしたかったから、
自分の腕力や脚力でやった。
ただ、トナカイや犬やラクダ、ウマは昔の人も使っていただろうから、それを自分でくくれればいいというルールにした。
昔の人がやった旅がグレートジャーニーなので、僕がやったのはプライベートグレートジャーニー、マイグレートジャーニーと言った方が良いかもしれません。」
関野さんは、このグレートジャーニーの旅に出る前から、
何度もアマゾンを訪れています。
アマゾン川流域に広がる熱帯雨林の巨大な森林と、
そこで生きる先住民たちと接する中、関野さんが感じたことを伺いました。

「最初に感じたのは、森の中で周りを見ると同じ木を見るのに苦労するということ。
色んな木が生えている。
なぜかというと、同じ木が生えていたら根の張り方も同じで同じ栄養を取るため「つぶしあう」から。
違う木が生えることで、根の張り方も栄養も違うためお互いに譲り合って、こんもりした森が緑のじゅうたんの上にできるんです。
実はアマゾンの土は腐葉土が薄く貧しいが、植物が多様であることでなんとかなっている。
それが剥がされてしまう…大規模な農園を作ったり牛を飼うために木を全て切ってしまうと、直射日光があたり雨脚の強さで養分が消化されたり流されてしまうことで砂漠化してしまう。
それをアマゾンの人たちは上手く真似しているですよ。
木を全部切らないで、パイナップルやトウモロコシ、バナナやイモなど色んなものを植えるというのは、森の真似をしているということ。
焼き畑が悪いことだと言われるが、森を真似したやり方。この人たちは生態学者なのかと言うくらい持続可能な農法をやっているんですね。」
なんか、「森の長城プロジェクト」の指南役、
宮脇先生が唱えている「潜在自然植生理論」に似てるような・・・。
アマゾンの人たちは、
「森と同じように、色んなものを植えたほうがいいんじゃないか」と、
ずっと昔に気がついていたんですね。
その一方、関野さんは、
森の中で動物を狩り、木の実を取って暮らす先住民の生活も見ています。
そこで感じたのは、彼らと日本人の生き方・考え方の大きな違いです。
「彼らのすごいのは、足跡を見ていつのものか分かるということ。
ちょっとへこみがあるとどんな動物なのかもわかるんです。
バクを見つけると、バクは大体同じコースを通うので、それを追いかける。
動物によっては違う歩き方をする。弓矢で急所にあたってもすぐには死なない。血を出して歩いていく。
足跡と血痕を見ながら追いかけて、出血死するのを追いかけてとどめを刺して捕まえる。
だから森や動物をちゃんと知らないとと狩りは出来ないのです。
いつも同じじゃないから創意工夫、知恵、想像力が必要です。
アマゾンの民は、本当に狩りを好きでやっている。喜々としてワクワクやっている。
それは、農耕民とは違うんです。
農耕民は面白くない。
種をまいて苗を植えて雑草を取ってというのは楽しくない。
何か月後1年後の収穫のために今の作業をしている。
それが森の場合はその日のうちに木の実は取れるし、動物も魚も獲れる。
生き方が違うんです。
森に生きる人は今を大切にしています。
今を生き生きと味わって生きています。
ただし将来の夢みたいなものをもたないという傾向はあります。
我々の情報社会のもとは農業が基盤。
その影響が来ていて、将来のために生きている。
極端な話をすると小学校に入る前にいい小学校、中学校、大学、良い就職先、良いポストを願いますよね。
気がついたら「俺はなんのために生きていたんだ」ということになりかねない。
夢は持てるが下手すると未来ばかり見て生きて今を大切にしていないというところがある。
森の人間は、生きがいがないわけじゃない。
子どもたちを育て、みんなと仲良くやって歌を歌い踊る。生きがいはある。
ただ、それは遠い未来ではない。
今を大切にするという意味では森の人たちには敵わない。
僕たちには夢を持つ、生きがいを持つという違う到達点がある。
ただ、もうちょっと今を大切にした方がいいんじゃないかとも思う。」
なるほど〜〜!
「今を生きるアマゾンの民」と「未来の為に今を過ごす私たち」。
深いです!!
来週も、この続きをお送りしますね!
関野さんの優しい語り口を聞きたい人は、ポットキャストでお楽しみ下さい。