今週は、先週に引き続き、作家で環境活動家のC.W.ニコルさんのインタビューをお届けします。
東日本大震災で被災した、宮城県東松島市野蒜地区。ニコルさんはこの土地で行政や地域の方々とともに、豊かな森が子どもたちの心にもたらす力を活用する学校、「森の学校」を作る計画に取り組んでいます。

◆森の学校づくりのきっかけ〜C.W.ニコルさん
十数年前から、トラウマを受けた子どものためのプログラムがあります。いじめや虐待を受けた子ども、ダウン症の子どもたちなどを生きた森に連れて行くと心の窓が開くんです。
東日本大震災後、家族や友だちをなくし、つらい思いをしているひとたちを森に招待しようとしたとき、一番最初に手を挙げてくれたのが東松島でした。3日間子どもたちは森で遊び、大人たちは色々なことを話し合いました。その後、津波で破壊された学校を山側に移動するにあたって、東松島市からアドバイスをしてくれと言われたんです。移設先の山は暗い藪だったので、明るい森をつくるための手伝いをしました。また、校舎を木造にすることや、森のなかで勉強、遊びができるよう森と学校をひとつにすることを提案しました。


こうして東松島市はニコルさんのアドバイスを受け、野蒜地区の高台にある森を手入れして、そこに学校を作るために動き出しました。この計画は単純に森のなかに学校をつくるわけではありません。森そのものを子どもたちが学ぶ「教材」にしようというものなんです。

◆森を教材に〜C.W.ニコルさん
丁寧に間伐をすれば、その谷間はすごく音が通るようになります。森には独特の音があり、本当の音の良いスタジオみたいになるんです。そこで音楽や劇、朗読などをできるようにしようと思いました。音楽は森で始まったんですよ。考えてみてください。楽器は木や動物の皮で出来ていますよね。それは森にあるものですね。人間の心には森が必要なんです。森のなかで、電気の力を使わずに天然の音で音楽を奏でると森は喜ぶんです。これは何回も実験しましたが、いい音楽を演奏した後、拍手をしないで10秒待つと、鳥は鳴くし、木も動くのがわかります。森は音楽が大好きなんです。また、震災では津波の後に凍えて亡くなった人が大勢いました。焚き火がたけなかったんです。だから、子どもたちに正しい、安全な焚き火の炊き方を教えるつもりです。雨の中でも焚き火は炊けるとか、そういうサバイバルも教えますが、一緒に「酸素ってなに?」、「二酸化炭素ってなに?」、「煙はどうしてできるの?」、「炎ってなに?」とか、そういう科学も一緒に教えることができます。科学も、自分の生活の中にあると感じてもらえます。また、地理も教えられますし、湧き水が出る理由、川がある理由、動物がいる理由など、色んな可能性があります。


確かに、理科も、社会も、図工も、音楽も、体育も森のなかで全部勉強できるということなんですよね。学校の勉強は、なにをいつまでに教えなければいけないという学習指導要領がありますが、どうやって教えるかは決まっていません。そこで森を教材にしようというのが「森の学校」です。
作家であるニコルさんは森の授業で使うための教科書の執筆にとりかかっているそうです。ただし、森の学校の完成は2018年の予定。まだ数年かかります。
そこでニコルさんはいま森を必要とする子どもたちのためにツリーハウスをつくりました。

◆ツリーハウス〜C.W.ニコルさん
僕は小さい時から大きなツリーハウスに住むことが夢でした。ツリーハウスの夢をもつ人は結構いますよね。森の学校ができるのは2018年ですから、今の東松島市の小学生たちは卒業してしまうので、この新しい森の学校に行くことができません。そこで、森のなかに夢のあるツリーハウスをつくってあげようと考え、日本で一番有名なツリーハウスクリエイターの小林崇さんに頼んで、地元の木を使って4階だてのツリーハウスをつくりました。ツリードラゴンと名づけました。

ツリーハウス
写真(提供):一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団

とてもおもしろいデザインで、実際に入ってみるととてもワクワクするんですね。このツリーハウスを支えている木は山桜ですね。ツリーハウスのなかで生きている木があるんです。いちばん上のステンドグラスの窓がある小さな部屋は、まだ完成する前に小鳥が巣つくってしまって、子どもを育てたんですね。できあがる前に住人が入ってしまった(笑)。下の部屋は大きな天然の石があるのですが、その石を削って暖炉をつくりました。
僕たちは子どもの基地にしようと考えたのですが、地元の人が結婚式に利用したり、いろいろな用途で使います。とくにお年寄りはいろいろと思い出すものがあったみたいです。だから、このプロジェクトでいちばん良かったことは、子どもたちとお年寄りが会話をするようになったことですね。

ツリーハウス
写真(提供):一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団

このツリーハウス、とても大きいですね!このツリーハウスは地元の子どもたちも木を運んだり、木の皮を剥いだり、大人と一緒につくったんだそうです。
森の学校の完成予定は2018年。ニコルさんはこの学校を日本一の学校にしたいと話します。

◆森の学校を日本一の学校に〜C.W.ニコルさん
海も見えるし、森もあるし、自然もある日本一の学校をつくりたいと思っています。”いい学校”じゃダメです。日本一の学校をつくるんです。いまの若い親は子どもたちのことをすごく心配しています。ですから、いい自然のあるところで一流の教育ができる学校を選ぶと思うんです。ひょっとしたら、子どもの教育のためにその街に行くということもあるかもしれません。
木造の建物といっても、近代的な技術を使えば火事や地震についても安全です。それにインフルエンザとかアレルギーはコンクリートの建物よりも圧倒的に少ないんです。また、ハイテクを使えば、その学校は日本中の学校とつながることができます。僕は決して現在の技術を否定しているわけではありません。ただ、基本は自然にあります。


ニコルさんはツリーハウスの話をする時、とても熱っぽく語っていらっしゃいました。
この取材時に「ツリーハウスで遊ぶ子どもたちはどんな様子でしたか?」と伺ったところ、自分も一緒に遊んでいたので覚えてないとおっしゃってました。ニコルさんはご自身のことを73歳の子どもといっていましたが、確かにツリーハウス、とても楽しそうですし、みんな憧れがありますよね。
こういう中に学校があって、子どもたちが育っていったら、とてもいい教育になりますよね。


写真(提供):一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団

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高橋万里恵
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