今週は、昨年から今年にかけて30万部を超すベストセラーとなった『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』の著者、藻谷浩介さんにお話を伺いました。

藻谷さんは日本総合研究所というシンクタンクの主任研究員です。数年前のベストセラー「デフレの正体」の著者としても知られ、ニュース番組のゲストコメンテーターとしてもおなじみです。
地域経済の専門家ということで常に日本全国の市町村を飛び回り、各地の地域経済や街づくりについて調査をされているます。
そんな藻谷さんがいまいちばん注目しているのが「里山」
そして、今後の日本経済を豊かにするキーワードとして「里山資本主義」という言葉を提唱しています。

◆里山資本主義とは
里山資本主義とはマネー資本主義の反対語としてつくった言葉です。マネー資本主義では、生活に必要なものを全てお金で買ってきます。ですので、お金が大事なので、もっともっと持っているお金を増やしましょうというのがマネー資本主義です。
里山資本主義はその反対で、なんでもかんでもお金ばかりではなく、生活に必要なものは採ってくるとか、物々交換とか、育てるとかして調達してはどうだろうということです。
人が住んでいる場所の近くにある山を、うまく暮らしに活かす「里山」という技術は世界的に有名です。日本では、昔からお金だけではなく、地元の資源を循環させて、大事に育てながら、使える分だけ使って、回していこうというシステムが備わっています。一方的に木をとってくるのではなく、きちんと育てて、薪を取り、山菜を取り、肥料をつくります。また、山を保全するので養分が流れていき、海でまたいろいろなものが育ちますし、木をちゃんと残しているので洪水が起きにくくなります。
すべてちゃんと次のことを考えて、里山の恵みを活かしていくシステムというのは、日本独自のものです。それを世界の人々が評価しているんですが、山で木をとってきたり、いろいろなものを育てながら、お金も使うけど、半分はお金を使わずに楽しく暮らしている人たちがいっぱいいます。
そういう暮らしを都会の人もできないのかということで考えたのが「里山資本主義」。ちょっと生活に里山を取り込んでみようという主義です。


いま、日本の里山をうまく活用した暮らしは「SATOYAMA」として世界的にも注目を集めているそうです。
なぜ日本の里山がそんなに評価されているのでしょうか。海外の実情を伺いました。

◆気候風土に恵まれた日本
海外では、文明が木を切りすぎてしまって、それがなかなか回復していないんですよ。たとえば中国は、古代の漢のころから木を切りすぎてしまって、禿山になってしまいました。ヨーロッパも産業革命で木を切りすぎてしまって、いまは草原となっています。
日本は偶然にも恵まれた気候風土で、雨が多く、日も照るので木が再生するのです。そのおかげで里山の生活が現代でも成り立っています。
ただ戦後、燃料は輸入したほうが安価だったので、里山の木を切って、燃料として燃やすという取り組みがなくなっていきました。農作物も輸入したほうが安いということになり、里山でやっているような農業は効率が悪いのでやめようということになってしまいました。それで耕作放棄地が大量に発生するということになりました。
しかし、燃料の価格が最近大きく値上がりし、ついに昨年は山の木を切ってきて燃やしたほうが安いという状況に50年ぶりになったんです。これは21世紀の大きな変化なんです。


藻谷さんが『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』という本のなかでいっているのは、「日本人全員が江戸時代のような生活をしよう」ということではありません。お金の経済、マネー資本主義のサブシステム、バックアップとして里山の暮らしも並行してやっていこうという提案なんです。
そして日本には今もそうした暮らしを実践している人たちがたくさんいます。

◆田舎では豊かな暮らしができる
いま、山の中で暮らしている人たち、一部の林業の人や公務員、建設業の方々ですが、ひとつの仕事だけでは給料が十分に足りないので、いくつかの仕事を同時にしているケースが多いようです。公務員でも家には田んぼがあるというケースが圧倒的ですね。
しかし都会で暮らすのに比べてお金はかかりません。まず家賃が安い、そして食費が安い。もちろん自分で作っていればその分安いのですが、田舎では「はんぱもの野菜」というものがすごく多いのです。収穫量の少ない野菜は市場では買ってくれませんから、しかたがないので家にあるという野菜が大量にあります。とくに、その野菜が一番美味しい時期にたくさん採れすぎてしまいますから、結局は人にあげてしまうんですね。
だから田舎で子育てをしていると、自分で農業をやっていなくても、近所の農家が「子どもがいて大変だろう」と届けてくれるんです。ですので都会で子育てをしているのに比べて食費が本当に助かる。
かつては日本ではあたりまえのことでしたが、都会ではそれがないんですね。田舎にはそういう支え合いが、市場に出すほどの量はないけれども、近所の人で分け合う分には十分にあるんですね。それで結果的に現金の支出が都会の半分とか、何分の一しかかからないケースが多い。
そうすると収入が半分くらいになっても、結局は手取りの現金が多いんですね。実際退職した人なんかは、ちょっとした畑を持っているだけで食費が月に数万円ちがってきます。この安心感はとても大きい。死ぬまで現金で買い続けるしかなく、現金がなくなったらどうするんだという不安にさいなまれている人と、田舎で家や土地を持っている人では、歳をとればとるほど目の色が違ってきます。


このように里山資本主義にはお金がかからないというメリットがあります。しかもお金では換算できない様々なものをわけあって、交換しあうことができるというのです。それが「手間返し」です。

◆「手間返し」と「恩送り」
田舎は人が少ない、とくに若い人は貴重な存在です。ですから、誰かの家が壊れたら、修理を手伝って欲しいといわれて、手伝いに行くこともあります。そうすると自分に別の問題が起きた時に、お返しに誰かが来てくれる。これを手間返しといいます。AがBの役に立ち、BがCの役に立って、それがぐるぐる回る。江戸時代ではこれを「恩送り」といいました。恩返しの逆ですね。
人に恩を送っておくと、それがぐるぐると回って自分にもいいことがあるかもしれない。これは原始社会にもある考え方ですが、最近の経済理論でも恩送りは非常に社会の効率を上げるということがいわれています。より長期的に長持ちする社会づくりには、お互いに出来る範囲で恩を送っておく。こういうお金にならない取引きをたくさん持っている社会は強いし、安心だし、安全。良いシステムなんです。


「手間返し」っていい言葉ですよね。お金を使わなくても、生活に必要な物がお互いに手に入るということですね。これって都会に住んでいるひとでもできる里山資本主義の暮らし方かもしれないですよね。
これについては次回以降、藻谷さんに伺っていきます。お楽しみに。

今回の藻谷さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・夕陽 / PUSHIM
・Some Nights / fun.

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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