今週は先週に引き続き、ベストセラー『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』の著者 藻谷浩介さんのお話をお届けします。
地域経済の専門家の藻谷さんがいま最も注目している「里山」。
藻谷さんがテレビ番組の取材などを通じてみた、里山の可能性を紹介した本が『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』です。
この本には実際に里山資本主義を実践している様々な例があげられていて、そのひとつが広島県最北部の小さな山村の、ひとりの男性の暮らしです。

◆広島県庄原市 和田さんのエコストーブ
広島県庄原市旧総領町木屋という山の中なんですけれども、そこに和田さんという面白い人が住んでいます。70歳近いおじいさんなんですが、とにかくいきいきとした人です。仲間が多い人で、その仲間には若い人や女性が多い。
彼は「里山を食いものにしてやる」といって、実際に原価0円の暮らしをしています。山に入って、木を切り、エコストーブという、自分で石油缶を改造した、煮炊きの設備でいろいろなものを煮炊きしたり、ピザも焼いたりしているんです。
エコストーブとは、だいたいどこのガソリンスタンドでもゴミ箱につかってい石油缶、あれを切って加工したものです。ごく少量の木切れを中に入れると燃やせるように工夫してあって、石油缶の上で煮炊きができるんです。いざなにかあったときにひとつ持っておくと、そこら辺の公園から拾ってきた木切れでもご飯を炊けてしまうんで安心ですね。
彼は近所の人が持っている山の、木だけをもらって、それを焚きながら暮らしていますが、かなり電気代ガス代が浮くそうです。もちろん電気、ガスも使いますが、都合のいい部分だけ木を燃やして暮らしている。まさに里山を食いものにしているわけです。
自分で持っている畑でもおいしいものが採れますし、採れないものは買ってきて、あわせて暮らしている。
そして、いろんな仲間と楽しく集まって、山里料理みたいなものを奥さんが出してみたりしている。イノシシとか鹿がたくさん捕れるんですが、とくにイノシシがおいしいんですね。どんぐり食べ放題で、本当にイベリコ豚みたいな味になっています。そういうものを、猟ができる仲間が捕ってくると、「じゃあみんなで飯でも食うか」といって、集まっている。そこに地域のおもしろい人達が集まって、情報交換が始まる。山の尾根線沿いに全国がつながっているみたいなネットワークができているんですよ。


エコストーブ

写真提供:庄原市観光協会

このエコストーブ、見た目は石油缶の横から煙突が出ている、とてもシンプルな構造です。これでピザも焼けてしまうんだそうです。エコストーブの作り方はインターネットでもたくさん出ています。高さが30〜40センチくらいの石油缶は、ガソリンスタンドなどでタダで譲り受けることもできますし、それ以外のパーツはホームセンターで購入することができます。全部あわせても、5000〜6000円くらいで作ることが可能だということなんです。炊飯器とか、暖房とか、オーブンなど、全部買い揃えるのに比べると、すごくお得ですよね。
それに、いろいろ使ったとしても、木を拾ってきたりする必要はありますが、電気代がかからないということは大きな魅力ですよね。ちなみに和田さんは、東日本大震災直後、電気もガスも使えない環境の被災地へ、エコストーブの作り方を教えに行ったそうです。
そしてもうひとつ、岡山県には町ごと里山資本主義を実践しているところがあるんです。

◆岡山県真庭市の木質バイオマスペレット
岡山県真庭市の場合、ここは儲かっている製材所がありまして、木くずが大量に発生します。この木くずを燃やして市民の電気の一割くらいをまかなっていますが、いま増強投資をしていて、今後は二割、三割と増やしていくんです。自然エネルギー比率二割、三割というと、ドイツやオーストリアに匹敵する、非常に立派な成績になるわけなんです。
製材所から発生する木くずを加工して、木質バイオマスペレットという、燃えやすい燃料の粉みたいなものにするんですが、ペレットストーブというものを皆さん買いまして、家の中で燃やして暖を取っているんです。灯油がどんどん値上がりしていますが、それに影響を受けない。だからハウス農家のひともコストアップにならずに、とても助かっているわけなんです。
みなさんは過疎という言葉を悪い意味で使います。過疎は人間が過剰に少ないということですが、逆にいうと自然が過剰に多いわけですから、一人あたりが使えるエネルギー量が多いわけです。だから、過疎も悪いことばかりではないんですね。


木質ペレット

写真提供:銘建工業株式会社

西日本のリゾート地としても知られる蒜山高原を含む真庭市。お話にあった製材所は発電した電気を電力会社に販売するところまで進んでいるんです。著書『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』によれば、2015年には、さらに大きなバイオマス発電所が計画されています。これが動き出すと、なんと真庭市全世帯の半分の電力をカバーできるということで、市役所にはバイオマスの部署まであるそうです。
また、発電だけではなく、木くずで作った木質ペレットを使ったボイラーやストーブも普及しています。地元の小学校、役場、温水プール、さらにトマトのハウス栽培などで、このペレットボイラーやストーブが使われているんだそうです。これは、温めるだけではなく、冷房にもなるんです。さらにこうしたバイオマスの燃料を加工する工場ができたことで雇用も生まれて、地元を離れた若者が戻ってきているそうなんです。里山をエネルギーという視点でみると、日本にはものすごい量のエネルギーが蓄えられているんですね。藻谷さんは海外と比較しても、日本の森にはまだまだ可能性があるといいます。

◆里山資本主義は日本ならでは
オーストリアはヨーロッパの中では数少ない、まだ木が残っている場所です。そこではひとつの村全体が地下に配送管を通して、空気圧でペレットを飛ばして、各戸に配送しています。ガスみたいな感じですね。それを家の中で暖房に使ったり、いろいろなことに使われているという例もあります。
ヨーロッパでは、木を燃やすということはずいぶん前から技術革新が進んでいて、もうドイツなどでは木が足りなくなってしまいました。しかし日本はそのはるか手前、二周遅れくらいで、まだ山に生えている木が燃料として有効活用できて、ヨーロッパよりはるかに遅れているということに誰も気づいていない。間伐材もとるひとがいなくてほったらかし。
ドイツは元々あまり木がありません。産業革命で切ってしまってはえてこないのです。しかしオーストリアは国土の15パーセントが森です。その森にある木を、新しく生えてくる分の7割くらいまで活用して、かなり大きな産業になっているんです。ちなみに日本は国土の70パーセント近くが森です。しかも本当に世界的にも珍しいと思うんですが、年々森が増えているんですね。耕作放棄地がどんどん森に戻っていますし、人口が減っていますから。しかもヨーロッパよりもはるかに南なので、たくさん太陽が注ぎ、雨も多いので、木がたくさん育ちます。日本は、まじめにやると、ドイツの6倍くらいの自然エネルギーがあるらしいですね。それがまだほとんど手付かずの状態です。この里山資本主義は最先端なんですが、あまり世界で普遍的ではありいません。日本くらい自然に恵まれている社会であればよく機能しますが、砂漠の国などでは限界があります。
だから、里山資本主義は最先端であると同時に、日本ならではのやり方でもあるのです。せっかく日本に住んでいるんだから、それをやらないのはなんともったいないことです。木というのは太陽エネルギーを山に蓄えておく装置みたいなものなのです。過去何十年の間の太陽エネルギーが木の中に蓄えられている。砂漠では、いくら太陽が照っても、その日それっきりです。こういうありがたい仕組みを使わない手はないですよね。
本来持っている資源を、まだあまり活用していないということは、逆にいうとまだまだ可能性が大きいということですね。


今日のお話にでてきた広島県庄原市と岡山県真庭市。とても素敵ですよね。ぜひいちど行ってみたいなと思います。
藻谷さんのことはよくテレビで拝見しますが、冷静に経済をお話される方なのかと思っていたら、山や森についてお話されるときは情熱的で、とても熱いものを感じました。
木は太陽エネルギーを蓄える装置のようなおのというお話もとても印象的でした。
エコストーブもとてもいいですよね。自分で作るのも楽しそうです。
藻谷さんのお話を伺うと、里山資本主義、憧れるなという部分もあると思うんですが、次回は都会でも里山資本主義を取り入れる方法をお伝えします。

今回のお話はポッドキャストでも配信中です。
こちらもぜひお聞きください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Living in the Moment / Jason Mraz
・Re:やさしい気持ち / HALCALI

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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