今週は、ちょっと怪談話の時期には早いのですが、奄美の森の中にいるという「妖怪 ケンムン」のお話です。
ケンムンは、奄美の人々が、昔からずっと語り継いできた妖怪です。
ケンは、木、樹木のことで、ムンは「もの」という意味で、つまり、「木のもの」。樹木に潜む妖怪、森に住む妖精ということになります。
今回訪れたのは、奄美大島の北東に突き出た 笠利町。案内してくれたのは、ケンムンのことを長年調べてきた考古学者で、「ケンムン村の村長さん」という不思議な肩書きもお持ちの中山清美さんです。

中山さんにつれられ、最初に訪れたのは、街道沿いに立てられた、大きな看板でした・・・。

◆島の宝
奄美群島では集落のことを島といいます。島の人達が畏れ敬い、守って残して伝えていきたいものを、地域の人達が自分たちの遺産として、島遺産から奄美遺産にしよう、奄美遺産を観光に活かしましょうよという取り組みなんです。
みなさんに、いちばんの島の宝はなんですかと聞くと、そういったものは何もないよといいます。それならば、守りたいとか、大切にしたいという場所があるかというと、それはあるよといいます。つまりそれが宝なんだということです。
最初は何もないといっていたのが、これもあった、あれもあったといって、30くらい出てきました。最初は10といっていたのですが、10では多すぎるから8がいいという話になりました。8はケンムンが嫌う数字なんですが、それだったら8つにしようということになりました。旧石器時代から残る遺跡があるというのは、島の人々が畏れ敬い、守り、残し、伝えたいということが今に維持されてきているということなんです。


中山さんは、奄美の文化財を保護する協議会の会長でもあります。笠利町の看板には、これを通じて選ばれた島遺産が紹介されています。
例えば、古くからわき水が出る場所。そのわき水は「聖水」として神事に使われていたそうです。また、すぐそばには宇宿貝塚もあり、やはりこれも島遺産になっています。
ちなみにこのわき水と貝塚のあたりには、首の無い豚があらわれる・・・という怖い伝説もあるんです。
そんな風に畏れ敬われ、残ってきた遺跡・文化財とともに、ケンムンの伝説もずっと語り継がれています。ではケンムンとは一体なんなのか。どんな姿をしているのか、ケンムン博士の中山さんに伺いました。

◆ケンムンの出る場所
ケンムンというのは妖怪なんです。カッパの仲間でもあるし、沖縄のキジムナーの仲間でもある。でもカッパとも違う、キジムナーとも違う。奄美の人たちはケンムンとよんでいるんです。そのケンムンがこの集落の周辺域に出るということがわかったんです。
ケンムンは恐れるものなんです。恐れるからそれ以上、その場所に入っていかないわけです。入るときには口タブという、おまじないを唱えます。山に入るときも、海にいくときもボソボソっと「わたしは今日はイノシシを一頭捕るだけで木は切りません。どうか獲らせてください」というようなおまじないをして入っていくわけです。そうするとちゃんと獲らせてくれる。
しかし黙ってそのままいい加減に行ってしまうと、お前は何しに来たんだということになって、ケンムンが悪さをして捕れない。そういう自然との関わりを密接に信じているということですよね。
ケンムンを知っていますか?と子どもからお年寄りまで聞いたら必ず知っている、聞いたことあるといいます。小学校など、いろいろなところにアンケート調査をしたら、だいたい80%は知っていますね。
でも見たという人はここ数年激減しています。昔はあちこちにいました。80代、90代の人に聞けば相撲をとったという人もいます。ケンムンは相撲が大好きなんです。弱いのに相撲を挑んでくるんです。
ケンムンを見たという人の話によると、身長は1mくらい、痩せていて、全身が毛に覆われていて、体育座りをすると、膝小僧が頭の上まで出るんだそうです。つまりか弱いわけです。それが相撲を挑んでくるので、投げ飛ばす。投げ飛ばしても、投げ飛ばしても、何回も挑んできて、夜明けになってしまう。そのうちに疲れてしまうので、人間が負けてしまうそうです。
そんなうふうに相撲をとったり、山に入ってきた人間に、ここに入れたくないというところでは石を投げたします。それを無視して行ってしまうと、引き回しの刑といって、山をあちこち連れ回して、自分では帰っているつもりだけどまた同じ場所に戻ってしまう。そうして山からおりてこなくて行方不明になってしまった人もいます。
そこはまたハブがでる場所でもあるんですね。この島と徳之島と沖縄には猛毒のハブがいるのですが、親たちは、あそこに行くとハブがいるからとは言わず、あそこにはケンムンがいるから行くなよと言うんです。そうすると怖いから、そこにはいかないということになる。
ケンムンがでるという場所には意味があるんです。それを調べていけば、こういった遺跡だったり、貝塚だったり、山城であったりといことに行き着くんですね。だから、そういったケンムンが出る、ハブが出るという場所は、逆にいえば大切に守ってきた場所なわけです。だからこの島には縄文時代に相当する遺跡とか、旧石器時代の遺跡とか、山城とかが多く残っているんです。



いかがでしょう。これがケンムンです。見たことある方いますか?奄美の人々はたいてい名前は知っていて、さらに、なんらかの体験をした・・・という人も多いんです。
そして、「あそこはケンムンが出るから近づくな」という言葉は、この土地で生まれ育った人なら、誰もが子どもの頃 言われた言葉だと言います。

◆足もとを見つめなおす
親たちも、あそこにいくとハブが出るというよりは、ケンムンが出るといったほうが子どもが近づかない。「あそこには妖怪が住んでいて、ここに来てはいけないと言っているから、行かないようにしようね。」「妖怪と友だちになれるように、妖怪が嫌がることはしないようにしようね」というふうに言うんです。
しかし今の子どもは逆かもしれませんね。ケンムンに会いたいから行こうって行ってしまうかもしれないですね。あんまり妖怪は仲良くなっちゃいけないんですよ。恐れるものだから、それ以上妖怪が嫌うことをしないように、妖怪と共存するように住んでいかないといけないねというふうに教えないと。可愛いからっていうのではありません。これは商品になるよとか、こうすれば売れるよといったらだめですよ(笑)。そうするとケンムンが怒って、しっぺ返しがきます。
最近、ケンムンを見たことがないという人がいるということは、島の自然環境に変化が出ているということかもしれません。ですからもう一度、たくさんあるこの島の宝物を見つめなおそう。この自然と共生している島の人達の暮らしに宝があるから、それを自分たちで再確認しようよというのがさっきの看板なんです。


今回のお話しいかがだったでしょうか。
このケンムンには、頭にお皿があるとも言われています。タコが苦手で魚の目玉が大好きという言い伝えもあります。また、日が沈んだ後は、外でケンムンの話をしてはいけないんだそうです。ですから、日没後は屋根のあるところで話をするんです。
この日は宇宿貝塚という場所でお話しを聞いていたのですが、周りの木々からなにかに見られているような気配を感じて、ゾゾッとしてしまいました。

来週もケンムンのお話しです。
お楽しみに!

【番組内でのオンエア曲】
・やさしさに包まれたなら / 荒井由実
・イラヨイ月夜浜 / 大島保克

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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