今回も引き続き、南国の森のお話をお届けします。
奄美の森の中にいるという「妖怪 ケンムン」について、数週にわたってお届けしてきましたが、きょうが最終章です。

ケンムンは、奄美では、木に暮らしているとされています。特に、奄美や沖縄で見られる亜熱帯の樹木「ガジュマル」には、ケンムンがいると考えられているんです。
奄美の人なら、子どもの頃、誰もが言われる「あそこはケンムンがいるから近づくな」という言葉。この言葉とともに、島にはたくさんの、大きなガジュマルが残っています。

今回の取材では、私もそんなガジュマルの木に会うことができました。
このガジュマル、加計呂麻島の海沿いの道路から、ちょっと山道へ入っていったところにあります。正確には不明なのですが、樹齢300年以上ともいわれています。本当に、ケンムンがいてもおかしくないと感じる、大きなガジュマルだったのですが、なぜここにケンムンがいると考えられているのでしょうか。
ケンムンのことを長年調べてきた考古学者でケンムン村の村長、中山清美さんに伺いました。


◆ケンムンの住む木
ケンムンが住む木は、北部ではアコウ、南部ではガジュマルといわれています。共通しているのは絞め殺しの木ということ。ガジュマルの実を鳥が食べ、大きな木の上で糞をすると、そこで発芽して、下に向かってヒゲが伸びていくわけです。そうすると、そのヒゲが下につくとそれが根になり、ヒゲがだんだんこの木を巻いていくわけです。そして大きなり、そのうち木が絞め殺されてしまう。そのガジュマル、アコウの木にケンムンが住むといわれているんです。
ガジュマルはたいてい海岸と集落の間、周辺域に防風林として植えてあります。また、大きなガジュマルは貝塚であったり、神山といったところにもあるので、そこにケンムンが住んでいるということになります。そのガジュマルを切ったりすると祟りがあるといわれているんです。


防風林だったり、貝塚など「大事にしている場所」にガジュマルが植えられ、そこにケンムンがいる、ということで近づかず、大事に守ろうとしたんですね。
ガジュマルの木を「切る」と、祟りがある。というお話がありましたが、実は奄美には、これを象徴する伝説が一つあるんです。
太平洋戦争のあと、奄美ではガジュマルを伐採しろという命令が GHQから出ました。島の人たちは祟りを畏れて切ろうとしませんでしたが、「お前たちは悪くない。マッカーサーの命令で切るんだ」と言われ、切ってしまいました。
すると数か月後、なんとマッカーサーが死んだとのニュースが!
自分たちのせいじゃない、マッカーサーが悪いんだ!とガジュマルを伐採した島の人たちは、ケンムンが太平洋を渡ってマッカーサーを呪い殺したと考えたんだそうです。

そして、ケンムンは奄美の人々が 「もめごと」を避けるためにも必要な存在でした。例えば、集落と集落の境目には、必ずケンムンがいるとされていたといいます。どういうことなんでしょう。

◆争いをさけるためのケンムン
集落のことを島といいますが、山に行くとここからは向こうの島、ここまではこっちの島というふうに縄張りがあるわけです。深い山から海のサンゴ礁に至るまで、境界線がはっきりしています。集落、集落が独立していて、伝統行事もしまぐち(方言)もひとつひとつ違うんです。顔の形も違います。それくらい境界線を大事にします。狩猟採集の社会では境界線がはっきりしていないと争いになるわけです。
奄美では15歳になると、自分の島の周りを歩きます。たとえばタケノコがでる時期やシイの実が落ちる時期になると、確認してこいということで、境界を歩くんです。そのとき、隣の島の人がいないと、見てないからといって境界を超えたりする。そうすると、「おまえ、境界を超えて取っただろう」と争いになることがあります。そのときに「ケンムンのせいじゃない?」ということでおさめるわけです。「ほんとうはあんたが取ったんだろう」といっても「「いやあ、ケンムンじゃない?」というと納得するわけです。だから、ケンムンというのは争いを避けるためにも使われるということなんです。ですから深い山にはケンムンはあまりいません。出没マップはだいたい集落の周辺域、入り口になるわけです。
ケンムンを見たという人は年々減っていますが、いま、奄美群島が考えるべきなのは、ケンムンを絶滅危惧種にしていいのかということです。アマミノクロウサギなどの動物も大切ですが、ケンムンを絶滅危惧種にしてしまうと、集落の共同体意識も崩れてしまうという恐れもあるんです。



ちなみにお話しをしてくれたケンムン村の村長で考古学者の中山さんは、ケンムンをあと一歩のところで見逃したという経験があるそうです。
田んぼの籠の中にケンムンを捕まえたという知らせを受けて見に行ったんですが、籠を開けたら、夜が明けて朝になっていたので見えなかったんだそうです。

いま、奄美群島は「世界自然遺産」を目指しています。これについて、中山さんは、まずは「島として畏れ敬うもの」をちゃんと島の人たちが大事にするところから始めないとダメだと話していました。自然遺産でも、文化遺産でもなく、複合遺産を目指すべきだともおっしゃっていました。

今回のお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!

【番組内でのオンエア曲】
・Comfort / David Mead
・秘密の森 / Keishi Tanaka

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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