東北・宮城県東松島市で、完成が近づく東松島の「森の学校」のレポートを先週からお届けしています。
作家で環境活動家・CWニコルさんが代表をつとめる「アファンの森」と東松島市が取り組む『東松島 森の学校』。ここでは2年後の開校へ向け、森の整備が定期的に行われています。

今年の初夏にも森の手入れが行われ、地元の方・ボランティアの方が森の健康を維持するための「笹狩り」に汗を流しました。
そして仕事の後、森の学校のシンボル、TreeDragonというツリーハウスの元に集まって開かれたのが「Tree Dragon BAR」。森の中の、一夜限りのバーです。

みんなでたき火を囲み、お酒や美味しいごちそうを食べて語り合ったり、ニコルさんはほろ酔いで歌いだしたりしていました。地元のお母さんたちも、それぞれ自慢の手料理を持ち寄り、参加者に振る舞っていました。

ただ、このお母さんたち、そしてそのお子さんも多くは、あの震災と津波を経験しています。いまも、その時のショックは、心のどこかに影を落としているんです。

◆いまでも震災の影響は心に
 子どもは水に浸かることはなかったんですが、教室の窓から浸水してくるのをずっと見てたらしいですね。いまは高校一年生になりましたが、今でも震災の影響なのか、暗いところがだめですね。
 上に女の子2人いるんですけど、真ん中の子が当時高校生で、雨の音がしばらくだめだったって言ってました。津波が一晩中寄せて返してっていう、その音にすごく似てるって言って。雨になると布団に潜って寝れないんだそうです。
 今はもう平気になったかなと思ったんですけど、岩沼市の空港に就職してすぐに地震があって、お客さんを助けなきゃいけない役目だったんだけど、足がすくんで何もできなかったっていうのを聞いた時に、やっぱりまだまだなんだなって。
 私もその震災の時はちょうど川の近くを車で走っていて、流されてしまったんですね。なので、風が強くて川の水面が波立ってるのが今でもやっぱりだめですね。


ツリーハウスの中で、こう話して下さったのは槻木(つきのき)かずこさん。三人のお子さんと 元々 野蒜地区で暮らしていました。
震災後は内陸側の矢本へ転居。森の学校にお子さんが通うことは無いのですが、子どもたちの育った故郷のために、森の整備を手伝っているそうです。



森の学校に賛同する親御さんたちは、子どもたちと、故郷・野蒜の将来のために、学校作りに協力を続けています。もうひとり、山田真理さんのお話です。

◆「森の学校」で子どもも大人も何かが変わっていけば
野蒜小の体育館で津波に遭ったんですけど、自分は泳げないので、必死でしたね。子供も最初は自分の周りにいたんですが、津波が何度もくるのでどこにいるかもわからなくなってしまいました。上の子が小学6年生と2番目が小学3年生で、下が2年生でした。
上の子はギ体育館のギャラリーに上がってたので大丈夫だったのですが、2番目の子と3番目の子は濡れてしまいました。前から水泳を習わせていたのですが、習わせててよかったかなって思いました。
私は泳げなかったので、もう必死でした。水の中でもがき苦しむうちに、意識も遠のいていって、「あ、死ぬってこういうことなんだな」って一旦は思いました。でも次の瞬間、「いや、やっぱり死にたくない」と思って必死になったら力が湧いてきたんです。今ここで死にたくない、絶対子供たちを見捨てないって思う力がなんか働いて頑張った感じですかね。
4年経ったんですけど、まだやっぱり心のどこかで忘れられないというか、鮮明に覚えてるんでちょっとまだ辛いっていうのがありますね。
自分の子どもがこの森の学校には通わないのですが、この森はやっぱり故郷、野蒜の場所です。野蒜の小学校は失われましたが、この「森の学校」ができることによって、子どもだけじゃなくて大人の方たちとか地域の方とかも何か変わっていくんじゃないのかなって思います。


夜の森で、静かに聞こえる様々な音、焚き火のあかりの中、お母さんたちは自分の体験や思いを素直に話してくれました。森の中だからこそ、心静かに、こういう話しができるのかも知れません。
最後にCWニコルさんさんのお話です。

◆ここで育った子どもたちは日本のリーダーになる
この震災でみなさんがすごくトラウマを受けましたが、生きてる森、ひょっとしたら一日しか命がないカゲロウもいれば、何百年も生きるミズナラの木もある。そういう森に来たら少し癒しになると思ったんです。
東松島のみなさんは我々を家族にしてくれました。私は本当に幸せです。僕は死ぬまでここに来ます。僕が死んでからも、うちのスタッフや友人が来ます。ただ、あんまりうるさいから来るなって言われたら来ないかもしれないね(笑)だからあんまりうるさいなら言ってね!
自分はもうあと2カ月75歳ですが、ますます未来を信じます。たとえばここにいいヤマザクラがあります。町とみんなが納得してくれるなら、ここでヤマザクラを作りましょう。この池は本当珍しい蛙もいるからこの池も活かしましょうよ。
それでこの学校は間違いなく日本一の学校になります。トラウマを受け、苦労をした人は人の苦労がわかります。だから僕はここで育った子どもたちは日本のリーダーになるに違いない、そう思うんです。



このツリーハウスで行われた一夜限りのバーは、ニコルさんではなく地元のお母さん達が、「“私たちのツリーハウス”で、こういうことしたい」と声を上げ実現したものだそうです。自分たちでつくり、守る森だという思いが伝わってきますね。
夜の森、闇の中でぼんやりと焚き火の明かりに照らされるツリーハウス。そこで語り合う人たちは本当に素敵な雰囲気ですよね。
ニコルさんはツリーハウスで一人ウィスキーのグラスを傾け、ときおりイギリスの歌を口ずさんだりしていました。

今日お届けしたお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・風は西から / 奥田民生
・やわらかくて きもちいい風 / 原田郁子

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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