今日は、ぜひお子さんをお持ちのママ、パパにも聞いてほしい、東京の「いきもの」をめぐるお話です。
スタジオにお越し頂くのは、自然科学を専門にしたイラストレーター、ライターとして活躍されている、川上洋一さんです。日本昆虫協会の理事や里山保全活動にも長年かかわられていらっしゃって、TV番組「鉄腕ダッシュ」の新宿の生きものを探す企画でもおなじみです。「東京いきもの散歩――江戸から受け継ぐ自然を探しに」という本を出されたばかりの川上さんに、いっぱい、子どもも大好きな「いきもの」のお話伺います!


〜「東京いきもの散歩――江戸から受け継ぐ自然を探しに」のなかには新宿界隈の生きものに関することがたくさん紹介されていまして、気になったのがタヌキでした。このスタジオの近く、半蔵門の周りでもスタッフがタヌキを見たって言うんですが、東京ってタヌキなんかいるんですか?
 そういうのを専門に調べている人の話だと、1000頭くらいいるんじゃないかっていわれていますね。神田川の北側ってずっと緑地帯が続いているんですが、そこらへんではよく見かけます。それから一時、明治神宮とか、新宿御苑にも住み着いていたっていう話は聞いていますね。新宿はけっこう緑地が線状に続いているんで、それに沿って移動していたり、そこを住処にしていたりするみたいなんですよ。

撮影:坂本和子

〜それが川上さんの本のなかに出てくる、タヌキロードというものですか?
 そうですね。まあ移動しているというか、拠点ごとにそこに住み着いているんですけれど、その緑地の間を行き来して、たとえば縄張りが変化したりとかもします。タヌキって溜め糞といって、トイレの場所が決まっているんです。そこに暮らしている家族がみんなそこでするし、近くに住んでいる他のグループもそれを利用しているんですよね。そうすると、そこで情報交換ができるんですよ。他のグループと出くわさないように、仲良く暮らそうというような意識が両方にはたらくんですね。

〜先程お話に出てきましたが、新宿御苑とか明治神宮がタヌキの住処になっていたときもあるんですね?
 そうなんですね。新宿御苑や明治神宮は、元は大名屋敷だった場所ですが、その周りに雑木林とか農村が結構あったんです。そういう環境が、明治、大正、昭和とずっと受け継がれてくる間に、どんどん宅地化が進みますよね。そうすると周りにいたタヌキが逃げ込んでくるんです。だから、そういうところが住処になっているんですね。
 じつは江戸の7割は大名屋敷だったんですよ。ただ、江戸っていうのは、1599年に徳川家康がやってきて、はじめて都市として歩み始めたんです。それまでは本当に、海辺の漁村みたいな寒村だったんですよね。このスタジオのある半蔵門、ここは高台なんですけれども、ここは東京湾に突き出た岬だったんです。その前は浅い海で、葦とか、そういうのが生えている湿地帯みたいになっていたんですね。それを埋め立てて、どんどん開発を進めるために職人が地方から集まってきた。その人たちが下町の方に住んでいたんですけれども、下町というのは全体の2割に満たないような場所で、ギュウギュウ詰めに人が住んでいたんですね。
 一方、大名屋敷は外交にも使うので、たとえば将軍が来たり、幕府の偉い人が来たりすると、接待するじゃないですか。そのためにきれいな庭や建物が造ってあるんですね。それを明治になってから買い取ったり、受け継いだりした人が、庭園を壊すのがもったいないから、うちの庭として使いましょうということで、そのまま受け継がれて、いまは公園になったり、大学のキャンパスになったりとか、結婚式場の施設になったりしています。そういうような形で姿を変えて残っているんです。


明治神宮の森

〜そうなんですね。タヌキのお話をいろいろ伺ってきたんですが、タヌキが暮らしていける森というのは、生態系も豊かだったりとか、いわゆる整った森なんですか?
 タヌキって雑食なので、なんでも食べるんです。ただドングリとかは食べないんですね。銀杏なんかは大好きですし、エノキとかムクノキの非常に小さい木の実とか、そういう実をこまめに食べるんです。あと昆虫もよく食べるので、夏はセミなんかよく食べていると思いますよ。都内って意外とセミが多いんですよ。おそらく、世界の都市の中でも、こんなに昆虫が夏にわーわー鳴いている都市って無いと思うんですけど、それは結構よく食べているんですよね。

〜私もよく小さい頃セミ取りしましたが、なかなか難しいじゃないですか。どうやってとってるんですか?
 やっぱり地面から出てくる瞬間があるじゃないですか。おそらくそういう場所をタヌキも知っていて、出てくるやつを端から食べていったりとか、夜はセミは寝ているじゃないですか。で、低いところにいるやつなんかは飛びついて食べたりとかしてますね。

〜じゃあ、本当にいろんなものを食べるという意味では、すごくタヌキってタフですね。
そうなんです。だから都内でも生きていけるのは、そういう雑食性の習性がすごくプラスに働いていると思いますね。

川上洋一さんのお話いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!


「東京いきもの散歩――江戸から受け継ぐ自然を探しに」川上洋一(早川書房)

【今週の番組内でのオンエア曲】
・I'm the One - feat. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne / DJ KHALED
・Go Do / Jonsi
自然音録音家・ジョー奥田さんのインタビュー、3週目となります。
奄美大島、沖縄、ハワイ・・・真っ暗な夜の森、夜明けを迎えた森など様々な表情を、高性能なマイクで録音。その音源を発表しているジョーさん。ほかにも、長年ライフワークとして通い続けている森があります。
それが東京・明治神宮の鎮守の森です。
ジョーさんは、マイクを通じて明治神宮の、なにを伝えようとしているのでしょうか。


「Tokyo Forest 24Hours」ジョー奥田

〜自然音録音家ジョー奥田さんがフィールドワークにしている、明治神宮の森の音を録音した「Tokyo Forest 24Hours」が6月20日リリース予定ですが、明治神宮の森を録音し始めたのはいつ頃からですか?
 2002年か2003年ぐらいですから、もう十五年ぐらいになります。ちょうどその時期、ロサンゼルスから東京に出てきて、活動の拠点を東京に置くと決めた時なんですけれども、東京の中で1番好きな場所が明治神宮の森だったんですね。ですから東京にもこんなところがあるんだ!と思ったので、試しにいろいろ録音してみようと思ったのがきっかけです。

〜今回は明治神宮の森100周年に向けて、改めてレコーディングされたということですが、「Tokyo Forest 24Hours」はいつごろの録音ですか?
 去年の11月3日です。11月3日は明治神宮の大祭で、1年の行事の中で1番大きい行事の日ですね。ちょうど満月の日でもあったので録音したんです。

〜やはり満月の日の音は違いますか?
 どこの森もそうですが、満月の日はとても賑やかなんです。逆に新月の夜はとても静かです。だから月がいまどれくらいの大きさかというのは、録音する大きな基準になるんですよ。

〜今回明治神宮の森を録音された場所はどのあたりですか?
 録音に選んだ場所は、御苑と呼ばれる池があったり、皆さんよくご存知の清正井があったりする真ん中あたりのエリアです。ここの森が1番深い。池のほとりなので水鳥がいたり、生き物がすごくたくさん住んでいるんですね。その池のほとりで録音しました。
 夜明け前から録音し始めて、だんだん鳥が鳴き始めて、朝の知らせの太鼓が遠くから聞こえるシーンなんですけれども、それを2018年と10年前と、全く同じシーンが2つあるんです。10年前に録ったものオープニング、今回録ったものをエンディングにしたんですけれども、10年の時間の経過がそこにあるんですよね。


〜10年前の音とは何が違いますか?
あまり違っていませんでした。僕が表現したかったのは自然の永続性。10年かけて比較して、このまま全く同じ音が10年後も聞こえるはずだろう、20年後はどうだろう、200年後はどうだろう。それくらいの単位の時間になると必ず変化していくと思うんですよね。ですけれども水の音は変わらない。

〜私たちはそんな素敵な森というのが近くにあることをついつい忘れがちですもんね。
 実は世界的に言うと、明治神宮の森というのは非常に特殊な森です。むやみやたらに植林をしたのではなく、100年たっても200年たっても、人の手が入らなくても生態系が成立する森を綿密にデザインしているんです。人間の英知を結集すれば大都会の真ん中に森を創り上げることができるという、ひとつの証明なんですね。僕にとって明治神宮の森の大きな価値はそこなんです。ですからそれをみんなに知っていただきたい。そんな思いですね。

〜まもなく明治神宮の森が作られてから100年。この先の明治神宮の森はどうなっていくと思いますか?
 僕の想い、想像なんですけども、たとえば今日、東京中、日本中の人が全員いなくなったとしても明治神宮の森は生きていくんです。そうするとおそらく、明治神宮のあの森を中心に森がどんどんどんどん広がっていくと思うんですよ。ですから、そういう意味では、あれは森の種なんですね。人間が止めているから広がっていかないんですけれども、人間がもしいなくなったとしたら、あの森を中心に東京中が大きな森になる。何かそんな可能性を秘めた力強さがある、そんな森ですね。

〜確かに最初は人の手で作られたかもしれないけれども、もう自立して歩いていますからね。夜の明治神宮は私たちが入れませんが、どんな感じですか?
 意外と賑やかなんです。耳を澄ませると、遠くから何かが聞こえてくるんです、そういう感じの森ですね。非常に整備された森ですから、例えば人間に危害を加えるような生き物はいませんし、怖さがないですね。ただやっぱり、本殿の側だったり、そういう所に近づくと、何かがあるというのは感じます。それが神様の存在なのかもしれませんね。

ジョー奥田さんのお話、いかがだったでしょうか。
お話にも出てきた明治神宮の森の音のCD「Tokyo Forest 24Hours」は6月20日発売予定です。詳しくはサイトをチェックしてみてくださいね!
http://www.m-i-m.com/sound/mimj0011

【番組内でのオンエア曲】
・Have It All / Jason Mraz
・Kiss You Back / Nulbarich
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パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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