- 2022.08.14
シダ植物でより自然に近い森へ! 「グリーンエルム」_②
今週も引き続き、鎮守の森のプロジェクト・植樹リーダーで
林学博士・西野文貴さんの拠点、大分県の「グリーンエルム」からのレポートです。
グリーンエルムは、私たちが東北で長年植樹してきた苗木を、
どんぐりから育てる「里親」の役割を担っていることは先週お伝えしましたが、
ほかにも、豊かな森をつくるための様々な研究をしているんです。
その一つが「シダ植物」
どんな研究なんでしょうか。西野さんに案内してもらいました。
===========
高橋:連れてきてもらった違うハウス?
西野:そうなんです。
違うビニールハウスにいて、実はこの中はシダ植物が
めちゃめちゃ育っているんですけど、
今日はそのシダ植物の魅力を皆さんに紹介したいと思ってやる気満々です。
ここの栽培担当をしている清澤くん、
彼はもともと東京農業大学の僕と同じ研究室にいたんです。
僕がずっとシダの研究で博士号の勉強しているときに、
その実験の画期的な方法を編み出した人物で、
卒業した後なんとグリーンエルムに入社していただきました。
西野:シダはいろんな種類があって、
日本に700種類ぐらいあるんですね。
日本はシダ大国と言われています。

高橋:南国に入っているイメージ。今見えている景色はジュラシックパークみたい?
西野:そうなんですよね。
3.5億年前の石炭紀に出てきた植物なんですけど、
その時は本当にジュラシックパーク的なイメージ。
ただ、シダはそれだけではなく、海辺にも水中にもいるし、
北岳のような高山帯、2400~2500メートルのところにもシダはいるんです。
これまでシダ植物は20種類ぐらいしか緑化に使われていなかったんですね。
その需要がどこで高まっているかというと、
例えば室内緑化、デパートや普通の住宅、室内に緑を置きたい時。
シダ植物の特徴のひとつが、全部がそうではないが影に強い、
耐性を持っている植物なんですね。
僕がシダ植物が研究するきっかけとなったのは、
鍾乳洞を訪れた時なんですね。
鍾乳洞の入り口は光があるのでたくさんいろんな植物があるんですね。
それが歩いて鍾乳洞の奥に入っていくと、シダ植物とコケしかなかったんです。
それを見たときに、これから先、室内緑化はシダ植物。
それを調べていくとシダ植物って緑化に使われているのって
20種類ぐらいしかないんだ、なぜもっと在来の植物を使わないんだろう、
やってみたいということで、
賛同してくれたのが清澤くんとかなんですよね。
清澤:うちで育てているシダはもともと100種類ぐらいいまして、
今はできるだけ栽培しやすい、育てやすいものに絞って
50種類くらいがハウスで育っています。
今までシダ植物の増やし方は、株自体を切って分ける「株分け」と、
あとは山からとってくる方法しかやられてこなかったのですが、
安定していて自然環境にも優しいことを考えて
胞子を使った増やし方が一番良いと思って
研究をしたところになります。
高橋:胞子から増えるって、めちゃめちゃ小さい点ですが、あそこから?
清澤:少しコツがあるんですが、
シダの胞子は膜で覆われているんですね。
膜で覆われているちょうど良い時を狙って、
葉っぱを取らせてもらって、
それを乾燥させると胞子だけが取れる仕組みになります。
高橋:マニアックなことをしていますね!
西野:マニアックです。
清澤君は僕と同じだと思うんですけど、
ハウスに入ったら声が聞こえていると思うんですよね。
高橋:清澤さんはシダの声が聞こえるんですか?
清澤:最初はだいぶ枯らせてしまったんですけど
そのうち、水が欲しいとか肥料が欲しいというのは、
やっと聞こえるようになったかもしれないです。
高橋:西野さんの会社に入るとだんだん声が聞こえるように。連れてきてもらったところには小さなシダ植物がいっぱい生えていますね!
清澤:そうですね。
まずは育苗箱みたいなのに胞子を蒔いて、この一つ一つがそうですね。
高橋:小さい葉っぱが出ていて、苔がちょっと大きくなったくらいの感じの?
清澤:それをピンセットで移して、
プラグにあげたのがこちらになります。
これで1年ぐらい経っている、こんな形で胞子から一気に増やす形です。
西野:実は、このシダ植物は胞子から栽培もして、
うちにせっかくいろんな種類があるので、
それを合わせて植えてみたりしたら、
景色が変わるんじゃないかと清澤君が挑戦しています。
高橋:今見せていただいていますが、いろんなシダが「寄せ植え」ということであってますか?
清澤:ちょっと薄型のマットに5種類くらいシダを入れて
寄せ植えをしているような形です。
高橋:濃いグリーンのシダもいれば、ちょっと薄い黄緑色のものもあったり、丸い葉っぱもあったり、かわいいですね。玄関とかリビングとかによさそう
西野:マットにして4種類5種類を入れることで
新しい景色を生み出しながら、さらにリスク分散にもなるんです。
例えばエアコンの風が当たったときに、
この種類は弱くなりやすい、
でも中にはエアコンの風にも強い種類もあるかもしれない。
そうすると1つの種類が弱くなっても、他でカバーできる。
高橋:この寄せ植えの中でお互いに助け合っている世界があるということですね。植樹と一緒ですね
西野:実はこれは、宮脇方式、
混植密植といわれることを草やシダ植物で
やったらどうなるだろうというのをもとにやって、
共存させているんですよね。
高橋:いっぱい苗がありますが、このシダ植物は植樹はしないんですか
西野:実は僕はその植樹も考えています。
なぜかというと、ミヤワキ方式で作られた森は、将来大きくなると、
場所によるんですけど、早く大きな木が大きくなって、
林床と言って、そこに草が出ないんですよね。
ずっと光が当たらないから。
今日の話で言うとシダ植物って光がある程度当たらないと胞子が発芽しない、
前葉体というのが出てこないんですね。
そういう場所にはこれから先、最初からシダを植えるかわからないですけれども、
シダを植えていた方が生物多様性として循環していく、
もっと自然に近い森ができるんじゃないかなと考えて、
栽培しているわけです。
高橋:確かに西野さんと植樹をして4年、5年経った時に地面は何もなく、無駄がないイメージですもんね
西野:暗くなっているおかげで草取りをしなくて良い、
光で発芽する雑草の類が出ないからメンテナンスしなくても
どんどん大きくなるという特性はあるんですね。
ただその特性と引き換えに、自然に入ってくる種類もちょっと少ない。
じゃあちょっと後押ししてあげようと言う時代に
将来になるんじゃないかなと思って、
シダ植物を育てていることもあります。
高橋:自然に放っておいてもシダ植物が勝手にやってくるんですか
西野:そうなんです。
実はシダ植物は自然に勝手に入ってくる種類でもあるんですね。
それは今日の話でもあるんですが、
胞子はとても小さいので風散布、風でどんどん広がっていくので、
風で飛んだやつが光に当たって水があれば発芽するんですよね。
面白いのが、明治神宮の森を歩かれているときに
見ていただきたいんですが、シダ植物が結構いるんですよ。
でも造園当初の頃はシダ植物は入っていない、植えていないんです。
だから彼らは最後に胞子が飛んできて戻ったんですね。
それを人工的にもっと早くできるんじゃないか
という技術を追い求めていますね。
高橋:じゃあもしかしたら私たちが東北で植えたところに何年か後には、シダ植物もいるかもしれない。その多様性の森、めちゃくちゃ素敵じゃないですか
西野:そういう森を作りたいなと思うんです。
もっと宮脇方式をアレンジしていけば、
もっと自然に近い森ができる可能性を感じていますね。
★「グリーンエルム」★

鎮守の森のプロジェクトで植樹してきたポット苗の「里親」、
大分県にあるグリーンエルムからのレポートお伝えしました。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do / Maroon 5 Feat. SZA
・スプリンクラー / 山下達郎
林学博士・西野文貴さんの拠点、大分県の「グリーンエルム」からのレポートです。
グリーンエルムは、私たちが東北で長年植樹してきた苗木を、
どんぐりから育てる「里親」の役割を担っていることは先週お伝えしましたが、
ほかにも、豊かな森をつくるための様々な研究をしているんです。
その一つが「シダ植物」
どんな研究なんでしょうか。西野さんに案内してもらいました。
===========
高橋:連れてきてもらった違うハウス?
西野:そうなんです。
違うビニールハウスにいて、実はこの中はシダ植物が
めちゃめちゃ育っているんですけど、
今日はそのシダ植物の魅力を皆さんに紹介したいと思ってやる気満々です。
ここの栽培担当をしている清澤くん、
彼はもともと東京農業大学の僕と同じ研究室にいたんです。
僕がずっとシダの研究で博士号の勉強しているときに、
その実験の画期的な方法を編み出した人物で、
卒業した後なんとグリーンエルムに入社していただきました。
西野:シダはいろんな種類があって、
日本に700種類ぐらいあるんですね。
日本はシダ大国と言われています。

高橋:南国に入っているイメージ。今見えている景色はジュラシックパークみたい?
西野:そうなんですよね。
3.5億年前の石炭紀に出てきた植物なんですけど、
その時は本当にジュラシックパーク的なイメージ。
ただ、シダはそれだけではなく、海辺にも水中にもいるし、
北岳のような高山帯、2400~2500メートルのところにもシダはいるんです。
これまでシダ植物は20種類ぐらいしか緑化に使われていなかったんですね。
その需要がどこで高まっているかというと、
例えば室内緑化、デパートや普通の住宅、室内に緑を置きたい時。
シダ植物の特徴のひとつが、全部がそうではないが影に強い、
耐性を持っている植物なんですね。
僕がシダ植物が研究するきっかけとなったのは、
鍾乳洞を訪れた時なんですね。
鍾乳洞の入り口は光があるのでたくさんいろんな植物があるんですね。
それが歩いて鍾乳洞の奥に入っていくと、シダ植物とコケしかなかったんです。
それを見たときに、これから先、室内緑化はシダ植物。
それを調べていくとシダ植物って緑化に使われているのって
20種類ぐらいしかないんだ、なぜもっと在来の植物を使わないんだろう、
やってみたいということで、
賛同してくれたのが清澤くんとかなんですよね。
清澤:うちで育てているシダはもともと100種類ぐらいいまして、
今はできるだけ栽培しやすい、育てやすいものに絞って
50種類くらいがハウスで育っています。
今までシダ植物の増やし方は、株自体を切って分ける「株分け」と、
あとは山からとってくる方法しかやられてこなかったのですが、
安定していて自然環境にも優しいことを考えて
胞子を使った増やし方が一番良いと思って
研究をしたところになります。
高橋:胞子から増えるって、めちゃめちゃ小さい点ですが、あそこから?
清澤:少しコツがあるんですが、
シダの胞子は膜で覆われているんですね。
膜で覆われているちょうど良い時を狙って、
葉っぱを取らせてもらって、
それを乾燥させると胞子だけが取れる仕組みになります。
高橋:マニアックなことをしていますね!
西野:マニアックです。
清澤君は僕と同じだと思うんですけど、
ハウスに入ったら声が聞こえていると思うんですよね。
高橋:清澤さんはシダの声が聞こえるんですか?
清澤:最初はだいぶ枯らせてしまったんですけど
そのうち、水が欲しいとか肥料が欲しいというのは、
やっと聞こえるようになったかもしれないです。
高橋:西野さんの会社に入るとだんだん声が聞こえるように。連れてきてもらったところには小さなシダ植物がいっぱい生えていますね!
清澤:そうですね。
まずは育苗箱みたいなのに胞子を蒔いて、この一つ一つがそうですね。
高橋:小さい葉っぱが出ていて、苔がちょっと大きくなったくらいの感じの?
清澤:それをピンセットで移して、
プラグにあげたのがこちらになります。
これで1年ぐらい経っている、こんな形で胞子から一気に増やす形です。
西野:実は、このシダ植物は胞子から栽培もして、
うちにせっかくいろんな種類があるので、
それを合わせて植えてみたりしたら、
景色が変わるんじゃないかと清澤君が挑戦しています。
高橋:今見せていただいていますが、いろんなシダが「寄せ植え」ということであってますか?
清澤:ちょっと薄型のマットに5種類くらいシダを入れて
寄せ植えをしているような形です。
高橋:濃いグリーンのシダもいれば、ちょっと薄い黄緑色のものもあったり、丸い葉っぱもあったり、かわいいですね。玄関とかリビングとかによさそう
西野:マットにして4種類5種類を入れることで
新しい景色を生み出しながら、さらにリスク分散にもなるんです。
例えばエアコンの風が当たったときに、
この種類は弱くなりやすい、
でも中にはエアコンの風にも強い種類もあるかもしれない。
そうすると1つの種類が弱くなっても、他でカバーできる。
高橋:この寄せ植えの中でお互いに助け合っている世界があるということですね。植樹と一緒ですね
西野:実はこれは、宮脇方式、
混植密植といわれることを草やシダ植物で
やったらどうなるだろうというのをもとにやって、
共存させているんですよね。
高橋:いっぱい苗がありますが、このシダ植物は植樹はしないんですか
西野:実は僕はその植樹も考えています。
なぜかというと、ミヤワキ方式で作られた森は、将来大きくなると、
場所によるんですけど、早く大きな木が大きくなって、
林床と言って、そこに草が出ないんですよね。
ずっと光が当たらないから。
今日の話で言うとシダ植物って光がある程度当たらないと胞子が発芽しない、
前葉体というのが出てこないんですね。
そういう場所にはこれから先、最初からシダを植えるかわからないですけれども、
シダを植えていた方が生物多様性として循環していく、
もっと自然に近い森ができるんじゃないかなと考えて、
栽培しているわけです。
高橋:確かに西野さんと植樹をして4年、5年経った時に地面は何もなく、無駄がないイメージですもんね
西野:暗くなっているおかげで草取りをしなくて良い、
光で発芽する雑草の類が出ないからメンテナンスしなくても
どんどん大きくなるという特性はあるんですね。
ただその特性と引き換えに、自然に入ってくる種類もちょっと少ない。
じゃあちょっと後押ししてあげようと言う時代に
将来になるんじゃないかなと思って、
シダ植物を育てていることもあります。
高橋:自然に放っておいてもシダ植物が勝手にやってくるんですか
西野:そうなんです。
実はシダ植物は自然に勝手に入ってくる種類でもあるんですね。
それは今日の話でもあるんですが、
胞子はとても小さいので風散布、風でどんどん広がっていくので、
風で飛んだやつが光に当たって水があれば発芽するんですよね。
面白いのが、明治神宮の森を歩かれているときに
見ていただきたいんですが、シダ植物が結構いるんですよ。
でも造園当初の頃はシダ植物は入っていない、植えていないんです。
だから彼らは最後に胞子が飛んできて戻ったんですね。
それを人工的にもっと早くできるんじゃないか
という技術を追い求めていますね。
高橋:じゃあもしかしたら私たちが東北で植えたところに何年か後には、シダ植物もいるかもしれない。その多様性の森、めちゃくちゃ素敵じゃないですか
西野:そういう森を作りたいなと思うんです。
もっと宮脇方式をアレンジしていけば、
もっと自然に近い森ができる可能性を感じていますね。
★「グリーンエルム」★

鎮守の森のプロジェクトで植樹してきたポット苗の「里親」、
大分県にあるグリーンエルムからのレポートお伝えしました。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do / Maroon 5 Feat. SZA
・スプリンクラー / 山下達郎