プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森~voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

今週も引き続き、鎮守の森のプロジェクト・植樹リーダーで
林学博士・西野文貴さんの拠点、大分県の「グリーンエルム」からのレポートです。
グリーンエルムは、私たちが東北で長年植樹してきた苗木を、
どんぐりから育てる「里親」の役割を担っていることは先週お伝えしましたが、
ほかにも、豊かな森をつくるための様々な研究をしているんです。
その一つが「シダ植物」
どんな研究なんでしょうか。西野さんに案内してもらいました。


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高橋:連れてきてもらった違うハウス?

西野:そうなんです。
違うビニールハウスにいて、実はこの中はシダ植物が
めちゃめちゃ育っているんですけど、
今日はそのシダ植物の魅力を皆さんに紹介したいと思ってやる気満々です。
ここの栽培担当をしている清澤くん、
彼はもともと東京農業大学の僕と同じ研究室にいたんです。
僕がずっとシダの研究で博士号の勉強しているときに、
その実験の画期的な方法を編み出した人物で、
卒業した後なんとグリーンエルムに入社していただきました。


西野:シダはいろんな種類があって、
日本に700種類ぐらいあるんですね。
日本はシダ大国と言われています。




高橋:南国に入っているイメージ。今見えている景色はジュラシックパークみたい?

西野:そうなんですよね。
3.5億年前の石炭紀に出てきた植物なんですけど、
その時は本当にジュラシックパーク的なイメージ。
ただ、シダはそれだけではなく、海辺にも水中にもいるし、
北岳のような高山帯、2400~2500メートルのところにもシダはいるんです。
これまでシダ植物は20種類ぐらいしか緑化に使われていなかったんですね。
その需要がどこで高まっているかというと、
例えば室内緑化、デパートや普通の住宅、室内に緑を置きたい時。
シダ植物の特徴のひとつが、全部がそうではないが影に強い、
耐性を持っている植物なんですね。
僕がシダ植物が研究するきっかけとなったのは、
鍾乳洞を訪れた時なんですね。
鍾乳洞の入り口は光があるのでたくさんいろんな植物があるんですね。
それが歩いて鍾乳洞の奥に入っていくと、シダ植物とコケしかなかったんです。
それを見たときに、これから先、室内緑化はシダ植物。
それを調べていくとシダ植物って緑化に使われているのって
20種類ぐらいしかないんだ、なぜもっと在来の植物を使わないんだろう、
やってみたいということで、
賛同してくれたのが清澤くんとかなんですよね。


清澤:うちで育てているシダはもともと100種類ぐらいいまして、
今はできるだけ栽培しやすい、育てやすいものに絞って
50種類くらいがハウスで育っています。
今までシダ植物の増やし方は、株自体を切って分ける「株分け」と、
あとは山からとってくる方法しかやられてこなかったのですが、
安定していて自然環境にも優しいことを考えて
胞子を使った増やし方が一番良いと思って
研究をしたところになります。


高橋:胞子から増えるって、めちゃめちゃ小さい点ですが、あそこから?

清澤:少しコツがあるんですが、
シダの胞子は膜で覆われているんですね。
膜で覆われているちょうど良い時を狙って、
葉っぱを取らせてもらって、
それを乾燥させると胞子だけが取れる仕組みになります。


高橋:マニアックなことをしていますね!

西野:マニアックです。
清澤君は僕と同じだと思うんですけど、
ハウスに入ったら声が聞こえていると思うんですよね。


高橋:清澤さんはシダの声が聞こえるんですか?

清澤:最初はだいぶ枯らせてしまったんですけど
そのうち、水が欲しいとか肥料が欲しいというのは、
やっと聞こえるようになったかもしれないです。


高橋:西野さんの会社に入るとだんだん声が聞こえるように。連れてきてもらったところには小さなシダ植物がいっぱい生えていますね!

清澤:そうですね。
まずは育苗箱みたいなのに胞子を蒔いて、この一つ一つがそうですね。


高橋:小さい葉っぱが出ていて、苔がちょっと大きくなったくらいの感じの?

清澤:それをピンセットで移して、
プラグにあげたのがこちらになります。
これで1年ぐらい経っている、こんな形で胞子から一気に増やす形です。


西野:実は、このシダ植物は胞子から栽培もして、
うちにせっかくいろんな種類があるので、
それを合わせて植えてみたりしたら、
景色が変わるんじゃないかと清澤君が挑戦しています。


高橋:今見せていただいていますが、いろんなシダが「寄せ植え」ということであってますか?

清澤:ちょっと薄型のマットに5種類くらいシダを入れて
寄せ植えをしているような形です。


高橋:濃いグリーンのシダもいれば、ちょっと薄い黄緑色のものもあったり、丸い葉っぱもあったり、かわいいですね。玄関とかリビングとかによさそう

西野:マットにして4種類5種類を入れることで
新しい景色を生み出しながら、さらにリスク分散にもなるんです。
例えばエアコンの風が当たったときに、
この種類は弱くなりやすい、
でも中にはエアコンの風にも強い種類もあるかもしれない。
そうすると1つの種類が弱くなっても、他でカバーできる。


高橋:この寄せ植えの中でお互いに助け合っている世界があるということですね。植樹と一緒ですね

西野:実はこれは、宮脇方式、
混植密植といわれることを草やシダ植物で
やったらどうなるだろうというのをもとにやって、
共存させているんですよね。


高橋:いっぱい苗がありますが、このシダ植物は植樹はしないんですか

西野:実は僕はその植樹も考えています。
なぜかというと、ミヤワキ方式で作られた森は、将来大きくなると、
場所によるんですけど、早く大きな木が大きくなって、
林床と言って、そこに草が出ないんですよね。
ずっと光が当たらないから。
今日の話で言うとシダ植物って光がある程度当たらないと胞子が発芽しない、
前葉体というのが出てこないんですね。
そういう場所にはこれから先、最初からシダを植えるかわからないですけれども、
シダを植えていた方が生物多様性として循環していく、
もっと自然に近い森ができるんじゃないかなと考えて、
栽培しているわけです。


高橋:確かに西野さんと植樹をして4年、5年経った時に地面は何もなく、無駄がないイメージですもんね

西野:暗くなっているおかげで草取りをしなくて良い、
光で発芽する雑草の類が出ないからメンテナンスしなくても
どんどん大きくなるという特性はあるんですね。
ただその特性と引き換えに、自然に入ってくる種類もちょっと少ない。
じゃあちょっと後押ししてあげようと言う時代に
将来になるんじゃないかなと思って、
シダ植物を育てていることもあります。


高橋:自然に放っておいてもシダ植物が勝手にやってくるんですか

西野:そうなんです。
実はシダ植物は自然に勝手に入ってくる種類でもあるんですね。
それは今日の話でもあるんですが、
胞子はとても小さいので風散布、風でどんどん広がっていくので、
風で飛んだやつが光に当たって水があれば発芽するんですよね。
面白いのが、明治神宮の森を歩かれているときに
見ていただきたいんですが、シダ植物が結構いるんですよ。
でも造園当初の頃はシダ植物は入っていない、植えていないんです。
だから彼らは最後に胞子が飛んできて戻ったんですね。
それを人工的にもっと早くできるんじゃないか
という技術を追い求めていますね。


高橋:じゃあもしかしたら私たちが東北で植えたところに何年か後には、シダ植物もいるかもしれない。その多様性の森、めちゃくちゃ素敵じゃないですか

西野:そういう森を作りたいなと思うんです。
もっと宮脇方式をアレンジしていけば、
もっと自然に近い森ができる可能性を感じていますね。



「グリーンエルム」


鎮守の森のプロジェクトで植樹してきたポット苗の「里親」、
大分県にあるグリーンエルムからのレポートお伝えしました。



【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do / Maroon 5 Feat. SZA
・スプリンクラー / 山下達郎

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番組では長年「鎮守の森のプロジェクト」による
東北沿岸部の植樹活動をリポートしてきましたが、今回の主役はその「苗木」です。
わたしたちがこれまで植えてきたたくさんの苗木たち。
その多くは、どこで育てられたのかと言うと、実は、九州・大分県なんです。
ということで今回は、鎮守の森のプロジェクト・植樹リーダーで
林学博士・西野文貴さんのもう一つの拠点、
大分県の「グリーンエルム」という会社にお邪魔して、
苗木たちはどう育てられているのか、その様子を見させてもらってきました。



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高橋:今日は鎮守の森のプロジェクト、我々も何度も植樹で伺っていますが、植樹をする苗のどんぐりの里親を尋ねるということで、大分に来ています。鎮守の森のプロジェクトの植樹といえばこの方です、西野先生よろしくお願いします。いま目の前に広がっている景色がすごくて、小さい苗木がありますがここはどこですか



西野:ここは今までまりえさんたちが東北で
鎮守の森のプロジェクトで植樹をしてきた苗木たちの、
東北で取った種をいま大分で育てて、
いわゆる里親制度をしているようなもので、
それをずっと植樹の時に送っていた場所なんです


高橋:そしてここは西野さんが勤めている会社!

西野:ついに、やっと来てくれました。
ありがとうございます。目の前に低木、
オオバイボタという縁の下の力持ちになる樹木、
将来3メーターくらいになる木なんですが、
東北で取った種が育っているのがあるので
ちょっと見てもらいたいと思います。




高橋:このオオバイボタは40センチから50センチくらい。びっしり根っこが生えてますね。

西野:ポットの大きさは10.5センチくらいの高さ、
幅になるんですけど、そこに白い根っこがびっしりで、
ほぼ9割終わっているくらいのイメージなんですけど、
この根っこをどれくらい増やしてあげるかが、
植樹の鍵を握っているんですね。
僕の親父、社長が30年前から宮脇先生の森を作ろう、
応援しようと興した会社なんですけど、
なのでこのぎっしりした根っこを作る技術を持っているんですね。


高橋:根っこを育てるのに大事なことはありますか?

西野:あります。まず基本的には、
農業や家庭菜園も一緒なんですが、土壌の三層構造というのが
すごく重要になってきます。
土壌は全部で3つの相「固相、液相、気相」があって、
固体の土の部分、液体の通る未知の部分、
空気の入る未知の部分3つで構成されているんですね。
そして重要なのが、割合「4: 3: 3」。
マニアックなんだけど農業も一緒です。
なので最近家庭菜園をしていてうまくいかない、
この植物を育てると土が固くなると思ったら、
4:3:3を目標に土を作っていくとバッチリできます。
そしてこの土壌の3層構造は地層のようになっているわけではなくて、
団粒構造、土の中って大中小、いろいろな大きさの土があるんですね、
これがバラバラになっていることが育てやすい土なんです。
この4対3対3の割合にしているところ団粒構造が、
きれいな大中小が粒が揃っているイメージなんですね。
例えば同じ土しか使わない、
黒土だけですよとなると粒の大きさが全部一緒になりますよね。
そうすると雨が降ったりするとどんどん押し固まって隙間がなくなる。
隙間は何なのかというと気相がなくなる。
気相がなくなると水も通らなくなるということで、
植物は空気が来なくて生育不良になってしまう。
じゃあ自然界はどうなっているのという話ですよね。
実は森の中にはその団粒構造を作る生き物がいます。
それがミミズ!です。
彼らがやっぱりそういうふうにしてくれているから
森は常に健全で歩くとふかふか。
今日はその秘密についても触れていきたいなと。




高橋:西野先生これは?


1メートルくらいありますね。
植樹の時にこれはいつも植えている樹種で、どんぐりを付けるアカガシ。
これは将来大きくなると30メートルくらい。
東北だとゆっくり育つので20メートルくらいです。
大きくあると材が赤いんですね。なのでアカガシ。
使われている用途としては木刀とか、
硬い材なのでそういうのに使われたりします。
で、先ほどオオバイボタの根っこを見てもらったとき
白い根っこがびっしりしていましたよね。
このどんぐりの仲間はポットを外して中を見ると
太い根っこがあるのわかりますか。


高橋:ちょっと茶色の太い根っこ。さっきのは細かい網目状になっていましたけど?

西野:そうなんです。
どんぐりの仲間は主根と言う、主役の根っこがあって
それが地面の奥深くまで入っていくんですね。
それを深根性、直根性があるという言い方をするんですけど、
そうすることでこの大地を支えて倒れないようになるんですね。
ドイツなんかでは「地上の森、地下の森」というくらい、
地上が成長すれば地下もその分 成長すると。
これだけ根っこがしっかりして生き生きしていれば、
どんな場所に植えても枯れる確率は少なくなります。
やっぱり植物は根っこが命です。
宮脇先生もずっとそうおっしゃっていましたね。
それで今日、周りを見ると植物がすごくありますよね。
ここだけで何万ポットがあるんですね。
ここが微妙に斜めになっていますよね。
なぜ傾斜があるかというと、水がはける。
やっぱり水ってそこにずっと停滞してしまうと、
ばい菌が繁殖したりあまり良くないんですよね。
なので若干、2〜3度だけ傾斜をつけて水はけを良くしているんですね。
それで、秘密があって、地面と育てているポット苗の間に・・・


高橋:直おきじゃないですね?

高橋:ちょっと茶色の太い根っこ。さっきのは細かい網目状になっていましたけど?

西野:そうなんです。10センチから15センチぐらい
開けているんですね。これは「空気根切り」と言うんですが、
もし地上に直置きしちゃうと地球と繋がっちゃうんですよ、
ポット内の穴が開いているところから。
一般的なユズリハとかアカガシは、空気があるところに
根っこを出さないんですね。なので地上とつながらないように
10センチ15センチ浮かせる、
「空気で根切りをする」ことで空気根切りと呼びます。
全国で苗木を育てている方々はやっぱり出荷するとき、
植樹祭にもっていくときに地球とつながっているとこれを切っちゃうんですよね。
ブチブチっと抜いちゃう。そうするとこの根っこは枯れやすくなったりしますし、
やっぱり自然にできる根っこと違ってちょっと切れたりするので、
自然樹形と異なってくるという感じなんですよね。


高橋:だからおうちでやる時もちょっと地面との間を開けることが大事?

西野:そうなんです。
ただそうするとちょっと手間が1つ増えます。
それは何かというと水やりの頻度。
直おきしていると地面が湿っている時が長いので
水やりする頻度が少なくなるんですが、
空気根切りをしているとこれ以上水が入らないので、
ちょっと頻度が多くなるんですね。 



鎮守の森のプロジェクトで植樹してきたポット苗の「里親」、
大分県にあるグリーンエルムからのレポートお伝えしました。


「グリーンエルム」

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Spinning World / Perfume
・花になる / 奥田民生

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