プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森~voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

暑い日が続く中、番組は涼を求めて森へ!
場所は神奈川県南東部・真鶴町。
熱海と小田原のあいだにある相模湾に突き出た真鶴半島を含む小さな町で
この真鶴半島のさきっぽには、
何百年をかけて大きく育った、まさに「日本ならではの森」が残っています。
その森を、観光ガイド・山崎陽軒さんに案内していただいた様子を数回に分けて、お伝えします。




高橋:いま入り口に行きましたが、「御林」と書いてありますが、すごくありがたい感じがしますね

山崎:真鶴町の人にとって、ここは聖域なんですよね。
「お」をつけて歴代何百年も前から言っています。
もともと小田原藩、幕府の持ち物だったんですね。
御留山といって中に入っちゃいけない山だったんですよ。
その後は明治になって皇室の御料林になりました。
だから天皇家のものなので「御」をつけて。


 

高橋:確かに。「林」とは言えないですね。いつから入れるようになったんですか

山崎:1952年かな。戦後、御料林から国有林になって、
そこから5年ぐらいして町に払い下げられてからは
自由に出入りできるようになりました。
ここは遊歩道が整備されています。ちょっと別世界ですよね。
御留山だった頃、御料林だった頃は一切人の入れない場所だったので、
自然の植生になっているんですよね


高橋:じゃあこの森は、自然にこういう形になっていった森ということですか。人が手に入れたわけではなくて?

山崎:今はそうなんですけど、
もともとはこの半島の先端部全体が萱原だったと言われています。
萱がしょぼしょぼ生えているくらいの草原。
江戸時代の初め頃は大きな木がなかったみたいです。
今のこの風景を見ると全然想像できないんですが、
きっかけとなったのが江戸時代の明暦の大火、
1657年。江戸の町の6割が焼けたそうです。
その江戸の街を復興するために全国各地に木を植えるよう幕府が命じて、
小田原藩はクロマツを植えたんですね。




山崎:それが1661年。
3年間かけて150,000本のクロマツを植えたんです。
1661年の火事には間に合わないですが、
今後火事が何度あっても復興できるようにということで、
そのために幕府の政策として全国に木を植えたんですね。
そして、いま歩いてきたのがおはやし遊歩道なんですが、
ここと交差しているのが森林浴遊歩道なんです。


山崎:お林の歴史、御留山だった1661年から明治維新まで、
小田原藩が管理していた頃は本当に手付かずの森。
その後は明治になってクスノキが植えられたんですね。
明治政府の殖産興業の政策の一環で、
クスノキの木を植えて樟脳を取ろうと。
防虫剤にもなるし、樟脳はその頃ものすごくいろんな使い道があったらしいです。
弾薬の材料になっており、薬にもなって、いろいろな効能があって、
日本は世界の8割くらいの生産量を占めていたらしいです。
ヨーロッパですごく珍重されていたんですね。
セルロイドも樟脳でできるんです。
写真や映画のフィルムも樟脳からできていたんですけど、
それが石油製品に変わっちゃったので
樟脳は使われなくなっちゃったんですよね。
だからクスノキも伐採されることなく、
そのまま残っているという形。


高橋:じゃあその時はここはクロマツとクスノキが混在しているような森だったんですよね



山崎:一般の人が入れないので写真もないんですけど。
それで、だんだんそれがクスノキばかりが育って
今では一番目立つのがクスノキですね。
大体お林の中で大きな木はクスノキです。
30メートルくらいあるんですかね。
この中心にあるのはクロマツですよね。
小田原藩のクロマツを象徴するようなクロマツで、
だからこの交差点のところにあるんですね。
そしてその後は自然に生えてきたスダジイが増えました。
いまは本数で言えばスダジイが一番多いです。


高橋:お話聞きながら歩いているときに、最初はクロマツを植えたとおっしゃっていましたが、クロマツはあまり見かけないと思いました。


山崎:だんだん植生が変わってきているんですよね。
クロマツは何しろ植えてから350年ぐらい経っているわけじゃないですか。
どんどん枯れちゃったんです。
大体自然に生えているクロマツは400年前後から寿命じゃないかと言われていて、
もうほぼ全部が寿命の時期なんですよね。
あとは松食い虫という虫の被害もあって、
年間40から50本のクロマツが立ち枯れしている。
クロマツは日光が100%当たる場所じゃないと育たないんです。
だから森の中ではまずは育たないんです。


高橋:今の状況を見ると日光が入ってきていないですもんね



山崎:だからこの森、お林のコアの部分では増えないんですけど、
ただ海岸のほうに行くと横から日光が入りますよね。
そういうところでは増えています。
自然の生態系の移り変わりなんですが、
奇しくも明治神宮の森と一緒なんですね。
そこの森は人工的に作られたもので、1920年にできたのかな。
だからちょうど100年なんですよ。
最初に松を植えて、針葉樹が主木だったんです。
そこからシイやカシやクスノキを同時に植えるんですが、
そっちの方が育ってきて、50年後100年後には主木になると。
150年たったらそれが自然に、連続して移り変わるような植生になるだろうと想定して、
当時設計をした森、人口の森なんですよね。
今ちょうど100年でそろそろ自然に生え変わるような時期になっているんですが、
ここはクスノキを植えて150に立っています。
だから明治神宮の50年先を行っているんですよ。
自然の移り変わりの場所になっています。



今回は、300年以上の時間をかけて育った大きな森、「お林」のレポートお伝えしました。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・I Ain't Worried / OneRepublic
・夏の光 / キリンジ

     ポッドキャストを聴く  
福島県南相馬市の「鎮魂復興 市民植樹祭」。
第十回目の植樹会場は、小高区塚原という地区だったんですが、
実はココ、数年前にも植樹が行われた場所で、当時、たくさんの苗木を植えました。

そうなるとやっぱり、あのとき植えた苗木はどうなったのか気になります。
ということで、見てきました。
案内してくれたのは、鎮守の森のプロジェクト・植樹リーダーで
植物学者の西野文貴さんです。




西野:年前に植樹した森です。
初めて見ましたが、成長がすこぶる良い。
高いのだと3メートルくらいはありますね。
数年でこの成長!地面のスキマが見えないということは、
森に入って少し覗いてみると、もう草が生えていない、
雑草が生えていない。
これ、見る人によってはちょっと密すぎる思うかもしれないんですが、
将来、20年も経過すると木々が大きくなって、
自然淘汰で「自己間引き」され、自分たちで枯れて肥やしになって
主役たちが生き残って立派な森に近づいていくと思うんです。




高橋:競争し合っている感じですか?

西野:そうです。
今回の植樹は21種類を植えましたが、
そのなかでも低い木、オオバイボタとかマサキといった
縁の下の力持ちになる木々が先行して大きくなっているんですね。
いま目の前にあるのはマサキ。太さが親指くらいあって、
高さも3メートルくらいありますよね。
海風がこんなに強く吹いているのにしっかり育っている。




高橋:これが生垣などに使われる風よけの木。たしかにすごく風が当たる位置にあるのにこんなに大きく。

西野:海風強い植物が先に大きくなって、
他の大きくなる木、20メートルクラスになる木を支えながら、
「僕が私が守るから控えていて、力蓄えていて」と。
そして後ろでタブノキが力を蓄えている。
これがやっぱり我々宮脇方式がやっている混植の意義。
いろんな種類を混ぜることでいろんな環境に対応できる。
これが早く森に成長できる1つの秘密。
ちょっと覗いてみると、落ち葉が堆積しているのわかりますか?



西野:だから土壌もどんどん成長しているんです。
森は上だけが成長するのだけではなく土壌も成長する。
落ち葉も養分になる。
ちょっと森に入ってみますと・・・ダンゴムシが。
ということはめちゃめちゃ良い土ということですね。




私たちがみんなで植樹した場所が
こうしてほかの生き物を呼び寄せて、育っているんだな~と実感したシーンでした。
ということで、令和元年・2019年に植樹した場所はいま、
20年後に主役となる木々を、優しく包み込むような形で、成長を続けていました。


西野:森に入ると風を感じない。
からいかに周りに木々がちょっとあることで、
中の木々が早く成長することができるということ。
だからいま目の前にある木々、これはアカガシの新芽なんですが、
まだ毛がふかふかしている。
これが外の環境が強いところだと
葉っぱがボロボロになってしまうんですね。
すくすく育つんです。さらにここからしゃがむと新しい世界が見えます。
地面から30センチくらいのところに雑草は1種類ぐらいしかない。
スギナという細い葉っぱの植物一種類。ここにはここの世界がある。
でも風はここだとさらに全く来ないですよね。
明治神宮の森なんかでも特に言われるんですが騒音が聞こえない。
いま植樹祭を隣であんなにやっているのに全然音が聞こえない。
鳥の声だけ。
さらに、いま土をとってきたんですが、昔の縄の跡。(




西野:ちゃんとボロボロになって土に還って肥料になっていく。
土もちょっとだけすくってみるとふかふかで適度な湿り気。
どこをとっても根っことか植物がいっぱい生えているから
植物たちにとっては良い環境になっている。
落ち葉が堆積してダンゴムシもいて。
本当に森は、ドイツとかでも言われるが
地上だけでなく地下にも森があると言われていて、
両方とも成長しています。



西野:これはセイタカアワダチソウ。
外来生物で結構繁殖力のつよいやつですよね。
一時期は多摩川をまっ黄色に染めたと言われる
セイタカアワダチソウがここにもいます。
なぜここに生えたかと言うと、ここは風などの外からの環境圧が凄く強い。
木々があんまり大きくなれなくてちょっとこの場所が開いたんですね。
そこを見つけたセイタカアワダチソウが生えた。
茶色の枯れているのは去年の違う個体のセイタカアワダチソウの花。
彼らは種をめちゃめちゃいっぱい出すんですよね。
ほかの植物が減っちゃうかもしれないと思いがちですが、
そうはならない。まわりが大きくなってくるとここに光が入らなくなり、
そうなると光で発芽する植物たちは発芽できないから。



今回は、福島県南相馬市で行われた「第10回 南相馬市鎮魂復興市民植樹祭」で、数年前に植えた植樹のいまをお伝えしました。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Hung Up / madonna
・夏の思い出 / ケツメイシ

     ポッドキャストを聴く  
«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 5 | 6 | 7 |...| 266 | 267 | 268 || Next»

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFN募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。

アーカイブ

  • 鎮守の森のプロジェクト
  • LOVE&HOPE~ヒューマン・ケア・プロジェクト~
  • AIG損保 ACTIVE CARE

PAGE TOP