自然科学ライターでイラストレーターの川上洋一さんのインタビュー、3回めをお届けします。川上さんはTV番組「鉄腕ダッシュ!」の、東京・新宿の生きものを探す企画でもおなじみ。前回までは、タヌキや、トンボや水鳥が集まる水辺など、「東京にもいるんだな〜」「あるんだな〜」というお話をたくさん伺いました。
最後は、「東京にしかいない」「東京でしかみられない」そんな生きもののお話です。意外に思われますが、実はそういう生きものがいるんです!


〜川上さんは都内でいろんな自然を見てきてらっしゃると思うんですが、珍しい生き物にも出会っているとか
 意外と東京にしかいない生きものがいたりするんです。キイロホソゴミムシと言うんですが、1センチ位しかなくて、しょぼい虫なんですけども、地球上で東京湾の周辺にしかいないんです。

キイロホソゴミムシ 撮影:原島真ニ

すごく小さくて、川岸のゴミが打ち寄せられているような場所の下にいます。東京では多摩川の河口あたりにいるんですけれども、それは125年間再発見されなかったんです。絶滅したと思われていて、よく探してみたら多摩川の河口にいたということなんです。それは125年前に隅田川のほとりで、イギリス人が発見したんです。幕末ぐらいに来た外国の人たちは、「日本はなんて自然が豊かなんだ!」ということで夢中になって調べたんです。そうしたら、両国橋のほとりで偶然見つけた虫が新種で、日本にしかいないキイロホソゴミムシだったんです。
 後は、ダンゴムシ。もともと東京にいたダンゴムシとそうでないダンゴムシがいるんです。公園の石の下とかによくいるダンゴムシはオカダンゴムシといって、海外から入ってきたものなんです。トウキョウコシビロダンゴムシというのがいまして、それは豊かな自然が残った、例えば明治神宮とか皇居とか自然教育園とか、大学のキャンパスなんかにもいるところがあるそうですが、そういう豊かな森が残っている場所でないといないんです。


トウキョウコシビロダンゴムシ 撮影:吉田譲

〜どう違うんですか?
 お尻の所の節の形がちょっと違うんです。だから捕まえてみてこうやってお尻の形を調べてみるとわかるんですけれども、逆にそれで森の豊かさもはかれるんですね。他にもセミの抜け殻を集めて何種類いるかどうか。いろんな種類があるんですけれども、それによっても自然の豊かさをはかれるんです。

〜隅田公園は、あいだに川が通っていて、川を挟んでセミの色種類が違うそうですね。
 ミンミンゼミは1980年代くらいまでは、23区内にはすごく少なかったんです。私が子どもの頃は新宿でミンミンゼミなんて、見たことも聞いたこともありません。それはやっぱり、緑が少なかったからだと思うんですけれども、今はだんだん増えてきています。
 隅田公園の、川を挟んで東側にはミンミンゼミがいなくて、西側にはいるんですけれども、セミの飛べる距離ってそんなに長くないんですね。隅田川は広いですから、どうやらそこを飛び越せないらしいんです。あと、下町の西部の方は、いちど東京の大空襲で地面が焼かれちゃったもんですから、ミンミンゼミもいなくなっちゃったんですが、まだそこまで分布を回復してきていないみたいなところがあるらしいですね。
 また、東京の山手と下町って段差がすごくあるじゃないですか。山手のほうにいたミンミンゼミがだんだん分布を広げてきて、隅田川まで来たんだけれどもそれを越せずにいるということもあるようです。ただ千葉の方からも入り込んでくることはあるので、そっちから来るものもあるかもしれないですね。


ミンミンゼミ 撮影:佐久間聡

〜そうなんですね。昔はクマゼミもあまり東京では聞かなかったっていいますもんね。
 大阪の友達に聞くと、セミといえばクマゼミだそうなんですね。東京にいるクマゼミは、どうも人工的な公園から広がったようなんです。例えば、代々木公園とか平和島公園とか葛西の方とか、ああいうところに常緑の木を植えるじゃないですか。それを関西のほうの植木屋さんから持ってきたらしいんです。そうすると根っこにセミの幼虫がついたままになっていて、それが出てきて、そうすると同じように仲間もいるから、そこでオスメスが出会って繁殖できたということみたいなんです。

クマゼミ 撮影:佐久間聡

〜じゃあ点々と渡ってきたというよりは、知らないうちに私たちが運び役になっていたという事ですね。
 運び役にもなってるし、環境を整えてやれば、東京の生物多様性も豊かになるということが言えますね。

〜東京にこれだけ豊かな森があるなら、もっと生きものや森と身近に関われるといいなと思うんですが、何か私たちがやれる事って何かありますでしょうか。
 やっぱり雑草をやたら取らないことですね。駐車場のフェンスとかにいろいろ雑草が絡んでいるじゃないですか。あれが意外と重要で、蝶や蜂が飛んでくる蜜源になっていたり、それを食べているいろんな幼虫がいたり、またその虫を目当てに鳥が集まってきたりします。ちょっとした雑草でも、全くないのとちょっとあるだけでは全然違うんですよね。

川上さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、そちらもぜひお聞きください!


「東京いきもの散歩――江戸から受け継ぐ自然を探しに」川上洋一(早川書房)

【番組内でのオンエア曲】
・Big Sur / Jack Johnson
・In The Morning / The Coral

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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