さて今週は、まだ人類が森や、自然の中で生きていた時代のお話です。
スタジオに起こしいただくのは、わたしたち日本人はどこから、どうやってこの日本の土地へやってきたのか。その謎を解き明かそうと取り組む、国立科学博物館の人類進化学者 海部陽介さんです!


〜今日はスタジオに国立科学博物館の人類進化学者、海部洋介さんにお越しいただきました。前回は2016年の年末ごろにご出演いただいて、フランスラスコーの洞窟に描かれたクロマニヨン人の壁画の話をたくさんしていただきました。その時も少しお話しいただいたんですが、海部さんは長年日本人に関する大きな大きな謎に取り組んでいらっしゃっていて、3万年前の航海というお話がすごく興味深かったのを覚えています
 ちょうどクロマニヨン人と同じ時代の話なんです。クロマニヨン人は3万年前のヨーロッパにいた人たちで、壁画を描いてたりしたわけですが、それと同じ時に、東アジアの方では海を越えて、それまで人がいなかった島にもどんどん進出していった人たちがいたんです。それが僕らの祖先になるはずなんですけれども、アフリカでホモサピエンス、つまり私たちが生まれて、西へ行ったのがクロマニヨン人。東のほうに行ったのが僕らの祖先と考えればいいです。私たちの祖先はアジアなどで、新しいチャレンジを繰り広げていたんです。
 面白いことにアジアでは、オーストラリアに当時の遺跡が現れます。おそらく人が海を渡ったんでしょう。今まで人がいなかった場所に、インドネシアの海を超えて、そこに突然遺跡が現れる。同じことが日本列島でも起こっていることがわかってきたんです。日本列島では3万8,000年前に急に遺跡が出現します。つまり誰かがやってきたということです。それはホモサピエンスに違いないわけなんですけれども、その頃の日本列島は海で切り離されていることもわかっていますので、これは海を越えてきたということに他ならないわけですよね。


〜海部さんはその航路を研究されているわけですね
 遺跡の分布からいくつかわかっていて、対馬海峡を超えて九州に入ってくるルートが存在したことは間違いないと思います。それから、沖縄に人が現れるんですね。ですから琉球列島にも人が入ってきます。つまりこの時期に、突然人が海に出て、今まで無人だった島にどんどん入り込んでいくということが起こっているんです。日本列島の人類の歴史は、どうやらそうやって始まったということが見えてきたわけです。僕らの最初の日本列島人は航海者だったんですね。そして、どこから来たかというのもおもしろいんですが、どうやってきたかということもとてもおもしろいんです。泳いで渡るのは厳しいですよね。1つ大事なポイントは、これは冒険ではなくて移住なので、ある程度の集団でいかなければいけないんですね。男だけで行ってもダメです。女性も一緒に行かないといけない。そういうことになると、やっぱり船が存在したんだろうということにはなります。でも、何の船だったのかというのが謎なんです。

〜そんな中で海部さんはどういったルートを今研究されているんですか?
 僕らが注目しているのは沖縄です。理由は簡単で、難しいからです。琉球列島は1,200キロにわたる島の列ですけれども、一個一個島が遠いですよね。何度も航海しないと沖縄までたどり着けないんです。でも、そのど真ん中の沖縄島に3万年前に人がいるんです。琉球列島の、少なくとも6つの違う島で、3万年前クラスの遺跡が見つかっています。つまりこの時期に突然人が現れるんですね。それも、1つの島に現れるのではなくて、突然列島全体に人が散らばる。そういうことが見えてきたんですね。つまり、海を越える技術を身に付けた人たちがここに現れて、どんどん海を越えて新しい島にたどり着いていたんじゃないかと、そんなことを考えざるをえない状況なんですよね。

〜その中でも今回の「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」とはどんなものなんでしょうか。
 海を越えるのが難しいのは想像できると思うんですが、考えていただけでは分からないのでやってみようということなんです。自分で船を作って海に出てみたらどれだけ難しいかわかるだろうと思ったんです。それでこんなプロジェクトを始めました。実際に昔の船を推定して作るんですが、船自体は遺跡に残っていないんです。ですからどいういうものかはわからない。ずっと後の時代の縄文時代には丸木舟があったことが遺跡から出てわかっているので、丸木舟を超えてはいけないという制限がかかります。もう一つのポイントは地元に素材があること。もう一つは当時の遺跡から出てくる当時の道具で加工ができること。最後は作った船がそれなりの耐久性とスピードがあって、ちゃんとこの海を越えられるかというテスト。これを全部やれば、どういう船だったかということが絞られるんじゃないかと考えました。

〜縄文人が使っていた丸木舟よりも前の時代の船は、素材は何が考えられますか?
 いろいろ考えた結果、草で作るか竹で作るか、その2つだろうということで、日本の1番西で、台湾に1番近い与那国島に生えているヒメガマという草を使って船を作りました。
 琉球列島に人が渡るにはいろんな海を越えないといけないんですけれども、僕らは最後に台湾から与那国島を目指すという航路に挑戦したいと思っているんですが、それまでにいろんなテストをするんです。船を作って試して、祖先たちがどうやって海を越えてきたのかという仮説を作るわけです。草の船が使えるのか、竹の船がうまくいくのか、これからテストを始める第3の候補の船、丸木舟ですね。この3つの中から絞っていきます。ベストの仮説、3万年前はこれだったに違いないという仮説を作って、来年、台湾から黒潮を越えて与那国島に入るという実験航海をやりたいと思っています。


〜テストを通じて既に解けてきた謎はありますか?
 僕らは船を漕ぐということをやっているんですが、よく帆はなかったんですかと聞かれるんです。これもいろいろ調べているんですけれども、縄文時代の船に帆がついてる証拠がないんです。櫂はたくさん見つかっているので、縄文人が舟を漕いでいた事は間違いない。それから弥生時代に描かれた舟の絵だとか、古墳時代の舟の埴輪があるんですけれども、これを見ても全て漕ぎ船なんです。つまり風を自在に操るような技術は、当時はまだなかった。ましてや3万年前ですから、人類最初の頃の船にそういう高度な技術があったわけはないということ考えています。それからもう一つのポイントは、僕らが本番をやる台湾と与那国島の海域は西風が吹かないんです。これは台湾が大きいからなんですけども、追い風を利用して進みたい方向に進むと言う事はできない場所なんです。それも考えると人力でやるしかないと考えています。人間の力って実はすごいなというのがだんだん見えてきているんです。

国立科学博物館の人類進化学者 海部陽介さんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」
https://www.kahaku.go.jp/research/activities/special/koukai/

そしてこのプロジェクトを応援するクラウドファンディングについてはこちら
https://readyfor.jp/projects/koukai2

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Passionfruit / Drake
・Born To Be Yours / Kygo & Imagine Dragons

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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