今週も引き続き、国立科学博物館の人類進化学者 海部陽介さんのお話、お届けします。いまからおよそ3万年前、わたしたち日本人の祖先は、大陸から何らかの方法で日本へやってきたはず。じゃあそれは一体どんなルートで、どんな方法を使ったのか・・・。
今回、お話を伺った国立科学博物館の人類進化学者 海部陽介さんはそのルートの一つ、当時大陸とつながっていた台湾から舟で沖縄の島にたどり着いたとされるルートを、「再現」しようとしています。それが「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」。
海部さんはチームを組み、3万年前の技術で可能な、草や竹の舟を製作して、当時と同じように「漕いで」海を渡る実験をすでに実施。そして、実験は次の段階へと進もうとしています。

 今までのテスト航海はある意味では成功していないです。目標の島にたどり着く事はなかなかできないんです。それは海流が強いとか、天気の問題もあるんですけれども、そういう中でまざまざと海を渡る難しさを思い知らされています。それでも祖先たちは来ているわけですね。
 草と竹の舟の実験はとりあえず一通り終わっていて、これから木に着手します。それぞれみんな癖がある船なんだなというのが改めて思っています。草の舟は形を作るのは簡単なんです。柔らかいので曲げたりできますし、右側が多すぎるかなと思ったらちょっと抜いてやればいいとか、あとから出したり整形が簡単です。竹は厄介ですね。空洞が大きくて浮力が強いので、太い竹を使いたいのですが、これを曲げるのはとても厄介です。火を使って曲げるんですけれども、とても手間がかかりますね。また、草は少しずつ水を吸ってしまうので、最初は浮力が強いんだけどだんだん水を吸っていきます。ずっと水につけていくと水の塊になっていきます。竹はそこはないのが良さですが、2つともやってみて感じたのは、どちらもとても安定性があるので海の上でひっくり返る心配がないんです。漕いでいる人は安心して漕ぐことに集中できる。波が来てもしなるんで、乗っていて気持ちがいいですね。難しい点は、スピードが出ないということでした。草は水を吸ってしまって重いということもあって、あまりスピードが出ません。竹はもっといけるかなと思ったんですが、やってみたらそうでもなかったですね。草と同じ位だったんです。その意味では、ちょっと黒潮みたいな大きな海流を超えるのは厳しいかなというのが今の率直な感想です。黒潮は世界最大の海流なんですね。スピードがすごくて、秒速1から1.5メートルあります。人の早歩きくらいのスピードが幅100キロにわたって流れているのが黒潮の本流です。これが台湾と与那国島の間に流れていて、これを越えなければいけないものですから、やっぱりある程度スピードが出ないとても乗りきれない。そこが僕らの抱えている難点ですね。
 海流に乗ったらどうなるかということも調べているんですけれども、面白いことがわかりました。台湾沖から海流に乗って流されると、島には絶対にたどり着けないんです。九州の方まで流されちゃうんですね。じゃぁ九州にたどり着けば良いじゃないかと思う方もいるかもしれないんですが、九州に着くのは30日ぐらいかかるんです。ですからちょっと人間が耐えられるような状況ではないでしょうね。


〜与那国島までは何日でいけるんですか?
 僕らが船を作ってスピードを知って初めてわかることなんですけれども、今の計算だと2日か3日ですね。それぐらいかかってしまう。少なくとも夜が2回きます。そこをずっと航海しなければいけない。そういう難しさのある場所に祖先たちが何故かいるんですよね。
 いまは、来年の本番を目指して総まとめに入っているところです。この集大成として舟は何であるか、何人ぐらい行かなければいけないのか、どうやったら黒潮を越えられるかということや、全く休まずに二日間漕ぐということはありえないですが、でも全員寝ちゃったらアウトです。じゃあどういう休憩をしたのか、そういうことをやりながら考えているんです。こんどは第3の候補の丸木舟の実験をします。それが終わってから、いちばんベストと思われるモデルを選びます。同じようにすべてのことに対して、ベストの仮説というものを作ります。
 そもそも3万年前に台湾から与那国島を目指すとするなら、祖先たちはどういう作戦を立てたのかというシナリオを作らなければいけません。彼らが最初にどうやって島を見つけたのかという話が、じつは面白くて、台湾から与那国島が見えるはずだと思っていたんですが、台湾の人には、そんな島は見えませんと言われちゃったんです。地元の観光局にも聞いて、標高1,000メートルの地で生まれ育った90歳のおじさんにもインタビューしたんですが、島なんか知りませんと言われちゃったんですね。島が見えなかったらそこにたどり着く動機も何もわからなくなってしまいます。そこで。台湾で広告を出しました。島が見えた人はいませんかと。そうしたら情報が出てきたんです。山の上から見えている写真も届きました。これでやっぱり見えるんだということがわかって、私自身も台湾の山に去年の夏の四日間入って、見える瞬間を捉えてきました。それを見たときにどんなことを感じるかと言うことも、大事にしたかったので自分で行ってきたんです。


〜島が見えたとき、行けるなと思いましたか?
 いや、全然思わないです。イメージとしては、一瞬だけ見える幻の島みたいな感じですね。距離は100〜110キロあります。僕らは地図を見ながら話し合ってますが、でも山を降りて海岸から見ると見えなくなります。地球が丸いので見えないんですが、山から見えれば、方角が分かるので、星だとか太陽だとかを使ってあっちにあるはずだとわかります。面白いことに、台湾から見て与那国島は太陽が出る方向にある島なんです。それを天体を使って目指すということをするわけです。でもちょっと沖に出ると黒潮があて、必ず北に流される。ですからまっすぐ行ったらこの島には行けないということを悟るんです。じゃあもっと南の方から出ましょうとなると、ますます遠くなりますし、ますます見えなくなる。でも方角は星で分かりますから、そうやって目指したというシナリオ以外にちょっと考えられない。僕らの目では飛行機を使って簡単に行けるところですけれども、実は3万年前の技術で行くのは相当大変なことなんですよね。それでも、ここだけではなくて、他の島にもどんどん祖先たちが出ていくんです。そういうことを繰り返して海へ挑戦して新しい島に住みつく。そうやって世界を広げていくということを実はやっていたんですよね。


国立科学博物館の人類進化学者 海部陽介さんのお話、いかがだったでしょうか。
この、『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』は来年の本番へ向けて、クラウドファンディングで、資金を集めています。目標支援額は3000万円。募集期間は9月14日までです。資金協力した方にはいろんな特典もあるそうなので、興味のある方はウェブサイトをチェックしてくださいね。
https://readyfor.jp/projects/koukai2

また、「世界初! 3万年前の道具で丸木舟を作る」実験の一般公開が、上野の国立科学博物館・正面玄関にて8月6日(月)まで実施中です。こちらは見学自由となっています。こちらもぜひチェックしてみてください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Defunkdafied / DEF TECH
・狩りから稲作へ feat.足軽先生・東インド貿易会社マン / レキシ

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高橋万里恵
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