- 2019.04.21
父島在住の写真家・映像作家 MANA野元学さんインタビュー3

先週に引き続き、東京からはるか1000キロ南、小笠原諸島・父島在住の写真家で映像作家、MANA野元学さんのインタビューをお届けします。
「東洋のガラパゴス」とも言われ、独自の進化を遂げた生物・生態系をもち、世界自然遺産にも指定されている小笠原諸島。
ただ、人が生活をする中で持ち込んだ、本来は島にいないはずの生き物によって、その固有種の存在が脅かされてきた現実もある・・・
先週はそんなお話を伺いました。
その一方、小笠原では、こうした固有種を守るため、様々なルールを作ることで、島の固有種を守ろうとしています。
やはり、意図しないところでも外来種を運んでしまうことがありますよね。例えば靴の底についた泥と一緒に紛れている植物の種や、他の生き物といったものが入ってしまう可能性もあります。ですので、できるだけ自然にインパクトを与えない、そして、小笠原の固有種を大切にする、将来残していく色んな取り組みがされています。
小笠原に行くには、東京からおがさわら丸に乗るんですが、船のタラップに、海水を染み込ませたり足拭きマットのようなものもあります。そこで少しでも靴に付着した植物の種ですとか、泥などの他の生物が入る可能性があるものを取ろうということです。定期船が父島に着いた時にも、やはり同じように海水を染み込ませたマットと、泥落としマットを歩いてから上陸します。他の所でも、たとえば山の中に行く時も、いろんなことがあります。靴の底に付いている泥の中にプラナリアという生き物が潜んでいる可能性があるんです。ミミズのような、細長いヒルのような生き物なんですが、これがカタツムリを食べてしまう。小笠原を世界自然遺産に導いた立役者のカタツムリたちを食べてしまうんです。でもこのプラナリアは、海水に弱いので、海水の染み込んだマットで防ぎます。また、靴底に酢のスプレーを吹きかけるとプラナリアは死んでしまうので、そうやってブロックをします。
~ちゃんと人間がルールを作って守ろうとしているんですね。小笠原の海の色を”ボニンブルー”と呼ぶそうですね。
ボニンブルーとは小笠原の独特の青い海の色のことです。ハワイや沖縄の浅くて、きれいな青色のことをボニンブルーだと思ってらっしゃるかもしませんが、ボニンブルーは濃くて深くて青い海の色のこと。”ボニン”は小笠原の英語名で”ボニンアイランド”からきています。本当にきれいなコバルトブルー。暖かい潮が運んでくるので冬の間はあまり見られないんです。夏の間の温かい潮だときれいな青色になります。海に入ると映画グランブルーのような感じですね。青い色に染まる。イルカたちが泳いでいて、ドルフィンスイミング、イルカと泳ぐツアーもたくさんあります。
~ホエールウォッチング発祥の地が小笠原、いろんなルール作りも元祖だと聞きました。
小笠原は日本で初めて商業的なホエールウォッチングが始まった場所です。その時にウォッチングの自主ルールも作られました。小笠原はたくさんの鯨類がいますが、その代表がザトウクジラ、マッコウクジラ、ミナミハンドウイルカ、ハシナガイルカ。イルカとクジラは同じ生き物で大きさによってイルカと呼んだりクジラと呼んだりします。4メートルより大きければクジラで、それ以下がイルカ。その4種類が小笠原で見られる代表的なものです。例えば冬の間に出産や子育てのためにやってくるザトウクジラを見るためにウォッチングしている船は、クジラとの距離が300メートルになったら船を減速させます。ザトウクジラの場合は、クジラとの距離が100メートルになったら、エンジンを止めて船を動かさない。マッコウクジラの場合は50メートルです。また、クジラの進行方向には船は侵入しないというルールもあります。ある時、船にどんどん近づいてくる子鯨がいました。クジラから100メートル以内になったら船は動かさないよという自主ルールがありましたけれども、クジラの方から船に寄ってくる分には、関係ないんです。何度も何度も近づいてくるんですよ。そのたびに母鯨が来て「だめですよこんな所にきちゃ」と言っているかどうかはわからないけれども、子鯨が現れると母鯨があらわれて連れて行く、また子鯨が母親の目を盗んで近づいてくる。そのうちに、ウォッチングをしている船の横に来て、ゴロンと横になったんですよ。そして、大きな目玉でじーっとこっちを見ているんですね。クジラは人間みたいに目が前についていませんから、ゴロンと横になってホエールウォッチングをしている僕たちを見るんですよ。僕たちがホエールウォッチングをしていると思っていたら、実は鯨がヒューマンウォッチングをしているんですね。
また、親鯨も大接近してくることがあります。こちらは大きいんですよ12~14メートルくらいあります。そんな大きい鯨が船の真横でいきなり、浮上してきて潮を吹くんですね。もうびっくりです。
MANA野元学さんのインタビュー、いかがだったでしょうか。来週も続きをお届けします!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Calling me / EGO-WRAPPIN'
・Big Sur / Jack Johnson