さて今週は、北海道の先住民族「アイヌ」の生命観・自然観に関するお話です。
みなさんは、『ゴールデンカムイ』という漫画/アニメをご存知でしょうか。明治時代末期の北海道を舞台に、ヒロインのアシリパ(本来”リ”は小字)をはじめ、様々なアイヌの登場人物たちが活躍する冒険活劇。
この漫画をきっかけに、アイヌの自然観・生命観に関心を持つ人が増えているそう。
そこで今回は、この漫画のアイヌ語を監修している、千葉大学文学部教授 中川裕さんをお迎えして、アイヌの人たちの森との関わり、自然との向き合い方を伺います!


「カムイ」とは、普通は神様と訳します。それは、間違いではないのですが、神様と訳してしまうと、空の上に、人間から隔絶したところにいる、手の届かない存在みたいなことになってしまいます。しかし、アイヌ語のカムイは、そこら辺に歩いている犬や猫もカムイ。雀もカラスも全部カムイ。動物が全部そうかとはいうと動物に限らない、木も草もみんなカムイ。火もカムイ。火の神様がどこかにいてそれが人間に与えてくれるとかそういう話ではなく、ガスコンロでも火をつけたらそこにカムイがいる。そういう風に考えます。
 どういうことかというと、メラメラ燃えている炎は、カムイの服、衣装。カムイそのものは霊魂、魂なので人間の目には見えないのなのですが、人間社会にいるときには人間の目に見えるように服を着てくる。その服が火のカムイであれば赤い着物で、それが炎という形で見えると考えます。そう考えていくと、「カムイ」とは、自然ということなんじゃないかと思うかもしれませんが、実は自然ではぴったりこない。人間が作った道具類、家とか船とか臼と杵とかそういったものも全部カムイです。という事は、日常触れるもの、目に見えるものありとあらゆるものがみんなカムイということになります。いま、私の目の前にあるマイク、昔の伝統的な考え方で言えば、これはどう考えてもカムイなのです。
 カムイとは、人間が作った人間の何らかの役に立っているもの。なんで役に立っているかというと、これ自身が意思を持って、考えて活動している。マイクであれば、私がしゃべった声を拡大してスピーカーに流すとか、録音機に流すとかそういう仕事をしている。なぜ仕事ができるかというと、このマイクに魂があって活動しているから、ということであらゆるものに魂があって、それが人間と同じように活動しているものと考えてるのが「カムイ」です。「カムイ」をどう日本語に訳したらいいかというと、そういうことを全部表すには、強いて言えば「環境」。人間はその身の回りをカムイにとり囲まれている、カムイの中で生活をしている、言い換えれば環境じゃないかと言うことになるわけです。
 よく言う話なんだけれども、家もカムイだけれども、床もカムイなんですね。お酒を飲んでいる。お酒をひっくり返して床にこぼれる。われわれは普通、「しまった!」と拭こうとしますね。しかし昔のおばあさんやおじいさんは「拭くな」と必ず言います。「それはお前がこぼしたのではなくて床のカムイが酒が飲みたいと思ってお前にこぼさせたんだ」というわけです。床のカムイが飲みたくてこぼれたんだから拭いてはいけない。必ずそう言います。つまり、偶然何かが起こってるんではなくて、カムイの意思で動いているんだということなんです。
 また、カムイにも良いものも悪いものもいます。良いものばかりがカムイではない。悪いカムイもいるわけですね。悪いカムイ、例えば熊だって、熊は偉いカムイなんだけど、人を襲って殺して食ったりする熊もいる。これは悪いカムイなので、ゴールデンカムイの中でも出てくるけれども、ウェンカムイっていう悪いカムイには罰を与えなければいけない。罰を与えるというのは人間がカムイに対して罰を与えることができるということです。神様って人間に罰を与えるというふうにイメージしちゃうんだけれども、アイヌの考え方では人間がカムイに対して、罰を与えることもできるし、抗議をして脅かすこともできる。そんなことばかりしていると地獄に落とすぞと。どうやって罰を与えるかというと、いろいろなやり方があって、ゴールデンカムイの中に出てくるのは、人を食べた熊は絶対に食べないし毛皮も利用しない。何故かというと、それを利用するとその熊のカムイを正式にお客さんとして迎えたことになってしまうから。そうすると魂はカムイの世界に帰っていて、再び熊の毛皮をまとってまた人間世界にやってきてしまう。そうさせないために悪いクマに対してはそうさせないように、肉は食わない、毛皮を利用しない、粉々に刻んでばらまいてしまう。なおかつそれをゴミと一緒に埋めたり、燃やしたりして、正式に向こうへ帰っていく儀式とは全然違うやり方で地獄に落とすわけ。これが最大の罰なんですね。



千葉大学文学部教授で、漫画「ゴールデンカムイ」のアイヌ語を監修されている中川裕さんにお話を伺いましたが、いかがだったでしょうか。
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アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」著者: 中川 裕 野田 サトル(集英社新書)

来週も中川裕さんのインタビューの続きをお届けします。

【今週のオンエア曲】
・Sight Of You / Sigrid
・JUMP / ROTH BART BARON

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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