先週に引き続き東京慈恵会医科大学 嘉糠洋陸教授のお話です。
マラリア、ジカ熱などの感染症、その感染源である蚊の研究者である嘉糠さん。前回の放送で、蚊は二酸化炭素、匂い、熱、それぞれを感知して、我々人間に近づいてくるなど、蚊が人によってくるメカニズムのお話、ありましたが、今回は更に深く、蚊のすごさについて伺いました。

~蚊はどうやって人間を見つけるのでしょうか。
 かれらにとって、いちばんわかりやすいのが二酸化炭素なんですね。我々が吐く二酸化炭素。これがだいたい距離としては10mくらい先から彼らは検知できます。たとえば、私達人間が公園を歩いていて、当然我々は呼吸していますので二酸化炭素出します。そうするとヤブの中でじっとしていた蚊たちが、10m先から「来た!」と認識して飛び始めます。ただそのときは、「人間が来た」という信号だけなんですね。その後は飛びながら徐々に我々を探していくんです。彼らは一応目を持っていますけれども、そんなに何m先を見ることができる目でもないので、今度は匂いを頼りにします。で、だんだん飛びながら匂いの濃いほうへ向かっていって、最後は距離としては50cmくらいの距離になりますと、熱を感知して、いよいよ獲物がいるということで、我々の肌にとまるということなんですね。我々も何か美味しそうな匂いがしてきたときに、キョロキョロして探しますよね。匂いの濃いほうへどんどん向かって、お店を見つけます。あれと同じですね。

~じゃあたくさん蚊がいるスポットでは息を止めていたら意味ありますか?
 かなり意味があると思いますね。まあどれだけ止められるかということですけれども。

~家の庭の自転車を出すところにすごく蚊がいるんですね。ちょっといてもものすごく刺されるので、それくらいだったら息止められるかと思って。
 ぜひやってみてください。効果あると思います。1分くらい止められると思いますので、その間に自転車を出して出ていってしまうと、その場で刺されることはかなり減ると思います。>

~それはすごいですね。家族にも言わないと!蚊が肌をさす構造はどうなっているんですか?
 注射針のようなものを想像される方が多いのですが、じつはあんな単純な構造ではないんですね。蚊はあんな小さな体では針を人の肌に刺すことはできないんです。ですから、顕微鏡でよく見ると、蚊の口先にはのこぎりのような構造がついているんですね。のこぎりの歯がドリルのようにみなさんの皮膚を切り裂いていくんです。それで初めて血を吸うための管を中に差し込むことができるんです。ですから、非常に細かい構造がたくさん含まれていて、肌を切り裂くのこぎり、血を吸う部分、あともう一つは唾液を送り込む管。我々は出血したら、血が固まりますよね。これは蚊にとってはひじょうにやっかいなことで、血が固まってしまったら、血を吸えなくなります。ですから、唾液を送り込むことによって、血液が固まる、血液凝固といいますが、これを阻止する成分を送り込むんですね。そのための管もあるんです。

~なんで刺されると痒くなるんでしょうか?
 非常に大事なところですね。いま、唾液を送り込んで血液凝固を防ぐというお話をしましたが、あの成分自体は人間の体にとっては異物でしかないんですね。我々の体内にないものが外から送り込まれてきますので。そうすると、我々の体には免疫がありますので、抗体を作ってしまうんですね。それが反応すると免疫応答が起きてしまうんです。これが痒みの元なんですね。

~のこぎりでギコギコやられたら普通は痛いですよね?
 そうですね。蚊の種類のよってはそれが下手くそな蚊がいるんです。そうすると、やっぱりチクチク刺されている感覚があるんですね。ですから下手な蚊はよくわかります。

~そうすると潰されちゃいますね。
 そういう蚊は人間をあまり吸わず、牛とか、豚の血を吸うんですね。我々人間は肌が非常に敏感なので、チクチクしてすぐ気づいていしまいますね。そういう蚊は我々を吸わない。ただ、日頃周りにいる黒と白のシマシマの蚊がいますね。ヤブ蚊といいますが、彼らは非常に上手なんですね。

~近くに来た蚊をつぶそうとしても、逃げられてしまってなかなかできません。すごい飛行技術を持っているんでしょうね。
 蚊は我々の体の周りをフワフワ飛ぶイメージがありますが、あれは実はヘリコプターに近い飛び方をしているということが最近わかってきました。羽が二枚ついていますので、バタバタ飛んでいるようなイメージがありますが、そうではなくて、羽を回しながら飛んでいるんです。バタフライのようなイメージですね。ああいうような回し方をすることによって浮力を生み出して、ヘリコプターのように飛びます。そうすると、人間の様子を見ながら、「そろそろ吸えるかな」って行ったり来たりしながら、最終的に我々の皮膚に着地すると。非常にうまくできていますね。

~前に飛ぶだけですか?
 後ろにも飛べます。他の昆虫、たとえばハエなんかと比べてみると全然飛び方が違いますね。ハエはホバリングできませんから、ほぼ直線の飛び方をしますね。そう思うと蚊の飛び方がいかに際立ってるかがわかると思います。だから、我々がちょっと手で叩こうとしても右にも左にも、上にも下にも逃げられるということなんですね。

~そんな蚊をうまく叩くにはどうすればいいんでしょうか。
 下から叩きに行くと、比較的潰しやすいですね。すくい上げるように叩くといいんです。ぜひやってみてください。蚊も一応目を持っていますので、それで周りを判断するんですけれども、比較的下からのものに対する認識能力が低いんですね。ですから下から叩きに行くと、案外よくたたけます。やってみてください。


下からすく上げるように!


嘉糠先生のお話、いかがだったでしょうか。今回のお話はポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

【番組内でのオンエア曲】
・風になる / Lucky Kilimanjaro
・I Shot The Sheriff / Eric Clapton

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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