今週も、製硯師・青傍史さんに、書道用具「硯」作りをめぐる、知られざる世界のお話を伺います。
青柳さんはいま取り組んでいるプロジェクトがあるということで、日本が誇る硯用の石の採掘地、宮城県雄勝にある「御留石」を持ってきてきていただきました。

 宮城県の硯産業は、日本の硯の最大生産地なんです。現在は、東日本大震災で津波をかぶり、職人も大勢いなくなってしまいましたが、それまでは全国の小学生の書道バッグの硯は雄勝の玄昌石で作って全国の子どもにまわっていたんです。いまの小学生はプラスチックの硯が主流です。それがいまの雄勝と日本の硯と習字の現状ですね。
 宮城の雄勝町は歴史がありずっと硯産業を担ってきました。伊達政宗が雄勝湾の対岸の石で作った硯をみて、「すごく良い」と、雄勝の職人に作ってもらい愛用していました。それで、大変優秀な硯なので仙台藩外への流出を禁止するということから、御留石という名前がつきました。宮城が生んだ日本の至宝です。大変素晴らしい石です。
 雄勝は震災で町が壊滅してしまったので、いろいろなインフラ整備をしています。その整備の一環で、道路が御留石の鉱脈のど真ん中を通過してしまうので、鉱脈を潰してしまう形になる。着工が近々ということで御留石が取れなくなる可能性が非常に高いので「今のうちにとりにきてみませんか」というお話を宮城の方からいただいて先日採石にいきました。ただとれば良いわけじゃないんです。ざくざくとるのでは使わない石が出てしまうので、僕は基本的に石を山からいただくときはオーダーに応じていただくんです。ピンポイントで「山のここをほしい」とタガネを当てていただいてくるんです。山の中に矢印が見えるようになると良いんです。斜面に矢印が見えると石がどういうふうに山にセットされているか、石が出来上がるまでの矢印が見えてくると山から石をいただきやすいんですね。小さな矢印がたくさんみえると、そこは集合している霜降りの部分。それが見えてくると無駄なく石が頂けるし、素材をとって、僕の調理台にもっていったときに、矢印が見えた状態だからこそ石にストレスを与えず、矢印に抗うこと無くカタナを当てることができる。
 硯創りは技術的に造形を作るのは後でもよいと思っています。山の情報をどこまで理解できるかが前提で、良い硯というところに導いて差し上げられるんじゃないかと思うんです。例えば宮城の若い職人さんと交流して、そこの職人が山に対してより愛情が深まるような山や石との付き合い方を雄勝の職人の若手と一緒に取り組みたいと思って、御留石の採石に挑んだという経緯があるんですね。石はしゃべらないので、視覚的にどういう状況なのか、せめて矢印が見えることが石を理解するのに最も早い方法で、かつ濃密に石を理解できることなんです。僕も勉強が必要だし、これからも雄勝に入って職人たちと仲良く勉強していきたいと思ってます。
 御留石は日本の硯の材料の中で、たいへん優秀な材です。これを、硯の本場の中国のコレクターやプロがみても「日本にもすごい石があるぞ」と、日本の硯も馬鹿にできない、なかなか良いもんだと思ってもらえたら嬉しいですし、そういった材を生んだ現場、山自体を含めて宮城の職人が愛してもらえるような環境を整えるために、僕は技術でお手伝いできればと思っています。材を活かし切る製硯をしてみたいと思っていますし、その提案を雄勝の職人に差し上げて、それを見て、僕たちはどうやろうかと考えて硯を創り合ってみようという発想もあります。御留石は今は量産する材料として使われていないので、たくさん作る機会もない。せっかく取る機会をいただけたなら活かし切る方法をやりあってみないかと話しをしています。



製硯師・青傍史さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください。

【番組内でのオンエア曲】
・Get Lucky / Daft Punk
・Lover / Taylor Swift

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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