去年2019年7月。「三万年前の航海 徹底再現プロジェクト」がついに実験を成功させたのを覚えていますでしょうか。
私達の祖先はどのように日本へやってきたのかという大きな謎に迫るこの実験。番組ではいくども取り上げてきましたが、きょうのゲストは、その当事者お2人!国立科学博物館の海部陽介さん、そして船の漕ぎ手キャプテン 原康司さんです。2ヶ月経ったいまどんなことを感じていますか?

海部:到着して良かったというのが大きいですよね。着いた瞬間、僕は伴走船の上で安全なところから皆さんの奮闘を見ていたんですが、鮮明にいまだに覚えています

原:お尻の皮も剥けたんですけど、無事に皮も再生しました(笑)海部さんと一緒で到着したときにすごい喜びが爆発したんですけれども、その喜びもまだふんわりと残ってるような感覚ですね」


〜およそ3万年前、わたしたちの祖先であるクロマニヨン人は、アフリカからヨーロッパを経て、海を渡ってこの日本へやってきたと考えられていますが、そのルートの一つが、当時は大陸と地続きだった台湾から海を渡り沖縄にたどり着いたルートだったのではないか・・・ということが考えられました。ただ、そうだとするなら疑問が山ほど出てくるわけですよね?

海部:そもそも38,000年前位に日本列島に遺跡が急にたくさん現れ始めるんです。当時は、沖縄だけではなく、日本の本州や九州も含めて大陸から離れているので、海を越えなければならないわけです。じゃあ彼らはどうやって海を渡ったのか。特に気になるのは沖縄です。何故かといえば沖縄島は遠い。所々隣の島がみえないくらい遠いところがあるその海をどうやって渡ったのか。当時の遺跡から船は出ていないので、どんな船を使ったのかわからないんです。どうやって渡ったのかわからないということで、それを徹底的に探求して、わかるところまで追求したいなという事でこのプロジェクトを始めました。

〜どんな船で渡ったのかわからないところから、どうして丸木舟になったのでしょうか。

海部:わからないんですが消去法を使って選択肢は絞られます。縄文時代には丸木舟があるので、船の選定には丸木舟を超えてはいけないと言う条件を課したわけです。それから地元に材料がないとダメですから、地元の材料しか使えない。そして当時の道具で作れないとダメ。ということで候補になったのが草の船、竹を束ねたイカダ。そして丸木舟が候補にあがってそれを調べてみました。自分たちで山に行って材料をとって、当時の道具で切れるかどうかを確認して一通り作って海に出して、ということをやっていきました。準備期間を入れると6年かかったプロジェクトなんですけれども、与那国島で草の船を使って実験したのが最初だったんです。草の船は沈まないんです。波の上でもひっくり返らないんですね。ものすごく安定しているんです。だから乗っている人たちはとてもそこは安心を感じていましたね。ただ問題は、遅いということ。結局黒潮にやられてテスト航海は、西表島に着くことができなくて失敗するんですけれども、流れに弱いんですね。
 次に竹の船を試しました。これは台湾の竹を使って作ってみたんですけれども、結構スピードが出るんじゃないかとみんな期待していたんです。でもスピードが出ないんですね。そうすると流れのある海を越えるのは非常に難しい。とうことで、最後は丸木舟をテストすることになりました。丸木舟の疑問点は、30000年の人が巨木を切り倒すことができるのかということでした。大体直径1メートル位の木を使い使いますけど、それを切り倒してくりぬくんですよね。でもそんな技術が30,000年前にあるのかというのが一番の疑問でした。ところが日本列島から出ている不思議な石器がありまして、端の部分だけを磨いてある斧なんです。これを試してみたら切れたんですよね。時間はかかったんですけど、1メートルの杉の木が見事に切れました。それから切りたおして、水分を含んでいる状態のやつを乾燥させて、おいたりしなければいけない。いろんな処置や時間なんかもあるんです。僕らの場合は1年以上かけて作っています。ただ、結局浮かべるとなんかうまくいかないんですよ。

原:ただくりぬいただけでは船にならないんですよね。人間が乗れるように安定してまっすぐ進む船にしなければいけないので、丸木舟をそうやってデザインした人が現代にいないので、本当に年輪を1枚1枚はぎながら海に出して戻して、また剥いでという繰り返しを何回も何回もやりました。

海部:これはとても面白い経験だったですね。僕は研究者なので、縄文時代の丸木舟なんかを参照して、こういうデザインじゃないとおかしいみたいな事は理論的なことを言う。作る職人さんは石の斧だとこういう風にしかできないと作り手の立場でものを言う。最後は原さん達が来きて、使う人の立場で海の上ではこうじゃなきゃ困ると。みんなで意見をぶつけ合いながら、喧嘩をしないですけれども、いろいろぶつかりあいながら面白かったですね。


〜原さんは普段から丸木舟を使っていらっしゃったわけではないですよね。

原:丸木舟も竹のいかだも今回が初めてです。普段はシーカヤックのツアーガイドをしたり子供たちの自然学校を開催したりしています。最初は一回断ったんですよね。黒潮を経験したことがなかった、南西諸島の海を経験したことがなかったので、力になれるかどうかがわからなかったんです。でも非常に興味はあるし、やりがいのあることだということで、最終的には引き受けて、何度も何度も練習で黒潮の中に漕ぎ出していて経験値を高めていきました。

〜不安ではありませんでしたか?
原:不安は当然ありますよ。丸木舟で30時間、40時間経験ある人はいません。重たくてなおかつ長時間、持久力+パワーがいる。後はナビゲーションですね。コンパスも地図も何も持たないで出る航海だったので、それが一番の課題だったですね。でも、残念ながら本番では一緒に漕ぐことができなかったんですが、ニュージーランドで星の航海術を学んでいる漕ぎ手のメンバーがいて、彼らから僕たちも教えてもらいながら自分でも国内でも星が出れば夜じゅうずっと星の運行を覚えて、そういうトレーニングを続けて本番を迎えるんですけどね。

海部陽介さん、原康司さんのお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続きインタビューの続きをお届けします。
今回お話を伺っている「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の成果をまとめた本が、2月12日に講談社より出版されるそうです。こちらもぜひチェックしてくださいね。
【番組内でのオンエア曲】
・Baby You Can Cry / AI
・「In the Blood / John Mayer

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

あなたからのメッセージ・ご意見をお待ちしております

各放送局の放送時間

  • JFNヒューマンコンシャス募金は鎮守の森のプロジェクトを応援しています。

ポッドキャスト

  • ポッドキャスト RSS
  • ※iTunesなどのPodcastingアプリケーションにドラッグ&ドロップしてください。
  • 鎮守の森のプロジェクト
  • EARTH & HUMAN CONSCIOUS
  • LOVE&HOPE〜ヒューマン・ケア・プロジェクト〜
  • AIG損保 ACTIVE CARE

PAGE TOP