今週も先週に引き続き、「森林ジャーナリスト」の田中敦夫さんをお迎えして、ここ最近の「森」をめぐるニュース、出来事をお話しいただきます。今週は、昨年 千葉県をはじめ各地を襲った台風被害についてです。


〜房総半島での大停電は倒木が原因だったということなんですが、それは倒木の処理がうまくいかないっていうことなんですか?
そうですね。もちろん倒木の数が多かったというのが第一にあるんですが、一般の方は倒木ってすぐに片付ければいいじゃないかと思うんですけれども、じつはそんなに簡単ではないんですね。特に今回の場合は、完全に地面に倒れるのではなく、隣の木に引っかかる、あるいは電線に引っかかるという倒れ方ですよね。かかり木っていうんですけれども、こういう木の処理の仕方って非常に難しいんですね。下手に切ったらどう動くかわかないんです。パーンと遠くにはねてしまうこともありますし、枝が飛んできてしまうこともありますし、非常に危険なんですね。実は林業界でも毎年何十人か死んでいるんですけれども、その事故の殆どはそういう伐採時に倒木の処理を失敗したりとか、かかり木の処理を失敗したケースが多いですよね。私も自衛隊の処理をテレビで見ていたんですが、もう危なっかしくてしょうがなかったというのはあります。やっぱりさすがの自衛隊もそんな細かな伐採技術は持ってないわけですよね。立っている木を切るほうがよほど安全で、倒れかけている木を切るというのはものすごく危険なんです。だから丁寧に丁寧にやっていかないといけないので、それが今回の処理が長引いた一つの理由だと思います。

〜台風の時期に倒木があったときは、技術者の数が大事になってきますね。
数もそうですし、技術を身に着けていただかないといけない。プロである林業家でも事故を起こしわけですから、いかに安全にできるかっていうのは、これから考えていかなくちゃいけないことでしょうね。

〜水害に関しては「緑のダム」というのが有効だという意見もあると聞きましたが、緑のダムというのはどういうものですか?
この言葉はよく使われるのですが、基本的には緑というのは森林、山林のことですね。山に木が生えていると、土に水を貯める保水力があるといいますね。じゃあ本当に水が溜まっているのかというと、森林というのは生き物ですよね。生き物っていうのは生きていくために水を吸いますよね。だから、水を貯めるんじゃなくて、水を吸って使ってしまうわけですから、水を減らしてしまいますよね。だから、緑のダムに水を貯めるのではなく、水を減らしていくというのが本来の見方じゃないかと思います。しかも雨が降ったら全部地面に染み込むわけではなく、枝とか葉、幹に水が付きますよね。仮に雨が降った翌日に晴れたら、枝についた水滴は地面に落ちる前に蒸発してしまいます。だから、実は水というのは、地面に到達する前になくなってしまうケースも結構多いんですね。研究結果によっては6%といったり、20%とかいろいろあるんですけれども、でも1割前後の降水は枝葉についていて、地面に落ちていないんです。地面に落ちても、植物である樹木が吸収して蒸発させてしまう分もある。それだけ水を減らすわけですから、洪水を防ぐ効果は若干はあることになりますよね。でもあまり過大な期待をしないほうがいいというのがあります。みんな緑のダムがあれば洪水を防げるんだと思い込んでしまうこともあるんですけれども、それほどの効果があるのかというとちょっとあやしい。よくたとえで言うのですが、雨が降ったら傘をさしますよね。傘をさせば普通ならばそれで濡れないけれども、台風のような豪雨になってしまったら、傘をさしても傘は飛ぶし濡れちゃいますよね。だから、緑のダムというのは傘程度の役に立つのではないかということなんです。普通の雨だったら濡れずに済ませます。でも大災害を起こすような豪雨になったときは、もう緑のダムも効果がなくなってしまうので、そういうときにまで緑のダムがあるから安全だとは言い切れない。危険なときは危険なので、避難もしなければいけないですし、場合によってはコンクリートのダムも必要かもしれないですよね。

〜話は変わりますが、田中さんは昨年岩手県の釜石のラグビー場、釜石鵜住居復興スタジアムを取材されているということなんですが、実は知る人ぞ知る木材が使われているんですよね。
もともとこのスタジアムをつくるときに、できる限り地元の木を使おうということになっていたんですね。だから、かなり木の多いスタジアムになるのは最初からの計画なんですが、実は3〜4年前ですかね、山火事が起きたんですね。そこで400ha以上の山が焼けてしまっています。だから、本当はそこの山の杉の木をスタジアムに使おうと思っていたのが、焼けちゃったんですね。しかも、その山主からしても、自分たちの財産である山の木が燃えてしまったから林業をやめるというような、そういう事態に追い込まれてしまった時がありました。でも、オーストラリアのケースでも言いましたけれども、山火事が起こったらたしかに山は真っ黒になってしまう。でもよく見るとすべて燃えたわけじゃないですね。表面だけが燃えているわけですね。幹の部分はちゃんと残っていて、製材して、四角に切ったら、中は十分優秀な木材がちゃんと残っていて、焼けていないというのがほとんどだったんですね。

〜じゃあ山火事があった山の木を使ってたんですか?
そうなんですね。森林組合の方々が苦労して、これは十分使えるということで、山火事の災害から立ち直るためにもここの木を使いましょうということになって、一般の木材よりも高く買い取ったんですね。1割位高く買ったと聞いてますけれども、お金を山主に還元することによって、その山主さんは、じゃあもう一度次の山をつくるために植林しましょうという気持ちになりますよね。全部お金にならなかったら、50〜60年育てたものが全部焼けて1銭にもならなかったら、もう林業をやる気がなくなっちゃいますよね。でもちゃんとお金になったんだということであれば、もう一度植えようという気持ちになるじゃないですか。

〜しかもそれが鵜住居復興スタジアムのように、地域の人の誇りになるようなスタジアムになるんですもんね。
そうですね。だからあれは本当に復興のシンボルのようなところがありますからね。

森林ジャーナリスト田中敦夫さんのお話、いかがだったでしょうか。
田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。

『絶望の林業』新泉社

今日のお話もそうでしたが、さらに日本の林業の問題がはっきりわかる内容です。ぜひチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・強く儚い者たち / COCCO
・Family Song / 星野源

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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