今週も「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんのお話をお届けします。
先週は、昨年の台風による千葉県の大規模停電は、言い方を変えると「大規模倒木」であり、林業の衰退が一つの要因だったのでは…というお話でした。
実はこれ、日本の林業が抱える問題の一部にすぎないんです。
長年、林業を取材してきた田中さん、あまり知られていない、林業の実態を明かしてくれます。


森林ジャーナリストとして森林を取材をするという事は、林業を取材するということにつながっていくんですよね。ほぼ30年ぐらい続けているわけですが、残念なことばかりが目に付くんですね。まず、林業は今、成長産業だと言っていますが、ちゃんと儲かっているのかを調べてみました。そうしたら、例えば木材の売上高は2000億ちょっとあるんですが、そこに補助金が2000〜3000億位突っ込んでるんですね。赤字なんですよ。それじゃあ林業がちゃんと立ち直ったと言えないじゃないかという話になりますよね。税金をつぎ込んでいるだけで赤字を垂れ流している状態ですね。木を植える、苗を植える、草を狩る、干ばつをする、何をするにも全て補助金でやっています。「補助金が出るからやろうか。」ということなんです。本当だったら育った木を売って、その利益で林業経営をしなきゃいけないのに、ひたすら補助金が出ることでやっている状態です。
それには、木材の値段が下がったというのも第一にはあります。それに木材の使い道も変わりましたね。いま日本の人口がどんどん減っているわけですから、住宅建築はどんどん減っています。そういう需要がなくなってきているんですね。使い道がないからってバイオマス発電所で燃やすとか、そういう使い道になっちゃうと、値段も安いし、60年育てた木を一瞬で燃やしてしまうのか、ということになりますよね。そうしたら山主さんも林業をやる気がなくなっちゃう。
その補助金のことも含めて、とりあえず林業をやりたい若者が増えているというのは事実なんですけど、残念ながら年以内に半分以上が辞めています。もちろん給料が安いとか、そういう問題もあるんです。月給のところは少なく、日給制がほとんどです。働いた日、働いた分しかもらえない。そういう意味ではあんまり儲からない。非常に体力を使う仕事なんですけど、報われないということになりますね。さらに事故が多いんですよ。全国で45,000人ぐらいしか林業従事者はいないんですが、それで毎年2桁、多い時は30人ぐらい作業中の事故で亡くなっています。事故率という計算方法があって、1000人のうちの何人が事故を起こすかなんですが、全産業の事故率と、林業を比べたら、林業の事故率は十数倍です。むちゃくちゃ高いです。命がけの仕事になっちゃってますよね。しかもそれに報われるだけの給料がもらえないとなったらみんな辞めて行きますよね。


〜林業は危険な仕事なんですか?
もちろんそもそも危ないんです。地形は千差万別で、斜面で木を切る作業では、非常に足場が悪いという事はありますし、そういうように条件も悪いんですけど、本当はそれを完全にこなすためには安全教育が欠かせないんです。残念ながら皆さんがちゃんとそこまで教育を受けているのかは怪しいという事ですね。チェーンソーという刃物は扱うのに、ちゃんと安全教育を受けなかったら、何かの拍子で自分で足を切っちゃうという事故も起きてしまいますよね。

〜林業が正常になるにはどうすればいいのでしょうか?
本当に難しいんです。一種の政策の問題になっちゃう。ちゃんと自立するためには教育もしっかりして、安全教育も必要ですし、木を育てる教育もきっちり教えて、ちゃんと守るということも必要です。さらに、現在は、政策的には木をどんどん切っているけど使い道が決まっていなかったりするんですね。だから市場でだぶついて値段が下がっちゃう。そうじゃなくて、ちゃんと使い道をわかった上で生産していかないと値段は上がらないですよね。この木は住宅のどこの部分に使うんだから、高さ3メートル、あるいは6メートル欲しいということをちゃんと計算してやっていけば値段も高くなるのに、とりあえず出して木材市場で売っていたら値段はどんどん下がっちゃってます。そういう仕組み作りが必要になっていくんだと思いますね。ちゃんと高く買ってくれる使い道を作っていかなくちゃいけない。ただ、いま住宅需要がどんどん減っているからこれまでの需要はどんどん縮んでいるんですね。だから新しい需要を作らなければいけない。残念ながら今の日本の林業界は新しい、しかも高く売れる需要が生まれていないですね。結果的にはバイオマス発電みたいに、安くても燃やすだけみたいな重要になっちゃっている。もったいないですよね。住宅も外材の方が多いわけですし、しかも木造住宅と言いながら、部屋に入ってもどこにも木が見えない。みんなクロス貼っちゃっていて見えないですよね。だったら何を使っても構わないでじゃないですか。傷だらけの木を使っても良いし、あるいは鉄骨を使っても上にクロスを貼ったらわからないじゃない。そう考えたらなぜ木造なのということになってしまいますよね。

〜また、所有者不明の山がニュースになったりもしていますね。
日本中の所有者不明の土地が、九州よりも広いという状態なんです。そのほとんどが山林なんですね。結局、所有者が儲かる時代はちゃんと相続をしてやるんですが、儲からないからほったらかしになっている。所有者が亡くなって、相続者が誰だかわからなくなっちゃう。そしたら手をつけられないですよね。もう一つ厄介なのが、大体この山は私のものだというのがわかっていて、相続者も大体わかっていたとしても、境界線がわからないんです。ここからここは自分でここからここは他人の土地という境界線がどこにあるかわからなくなっちゃっています。木を植えたときは、大体覚えているんですが育ってしまうと景色が変わっちゃいますからね。だからわからない。本当はしょっちゅう通って変化を見ておかなくちゃいけないんだけど、今は不在地主になってしまっているので相続者が街に出て山に1度も行っていないとか、そういう人ばっかりになっています。そうすると境界線を見ようにもわからないんです。他人の山の木を切ったら犯罪行為になりますからね。だから切れないなとなっちゃいます。そもそも林業は儲からないと言われていますから、そこまで無理して切る必要はないんじゃないとなりますよね。所有者不明の山は本当に大問題で、何とかそれを整理しようと思っているんですが、残念ながら政府もお手上げ状態ということになりますね。

「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんにお話をうかがいました。
田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。

『絶望の林業』新泉社

今日のお話はもちろん、もっと「うそでしょ?」ということも書いてあります。そんな『絶望の林業』を3冊プレゼント用に頂きました!
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【今週の番組内でのオンエア曲】
・花が咲く道 / THE CHARM PARK
・若葉 / スピッツ

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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