今週も「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんのお話をお届けします。
さて、“成長産業”と言われる日本の林業の、怖い言葉でいえば「闇」の部分を、次々と明らかにした田中さんの新刊「絶望の林業」。
じゃあ日本の林業ってもうダメなの?とズーンとなってしまうんですが、最後は、「かすかな希望もある」、というお話です。

”自伐林業”とは、自分で切る林業ですね。これまでは作業をプロに発注していたわけですが、発注したらその分お金を取られるわけですから、全然利益が出ない。だったら山主が自分で切って作業をすればその分利益が出るじゃないかと、それが自伐林業なんです。
ただすべての山の主がそれをやるというわけにはいかない、中には何100ヘクタール、何千ヘクタール持っている山主もいるわけで、自伐できるわけないですよね。どうしても誰かに依頼しなければいけない。その時に信用できる、丁寧に扱ってくださる人にお願いしようと、これが自伐「型」林業ということになるんですね。規模を小さくしようという事ですね。
政府の推進している日本の林業はどんどん規模を大きくしてこうというとです。その分低コストになるから利益も増えますよということなんですが、そうじゃなくて1人で1ヘクタールだけをコツコツやっていこうという考え方ですよね。丁寧に山主の気持ちになって、やっていこうという発想ですね。山主が頑張って50年間育てた木を、私が預かって切らせてもらうんだなと思いが、丁寧にやろうという気持ちになりますよね。


〜”山主”のほかに”山守”という言葉もありますが、これは別のものなんでしょうか。
こういう言葉を使ったのは、奈良県の吉野の林業家で使っています。”山主”はまさに山の主、所有者です。吉野では山主が直接手を出すのではなくて地元の山村に住んでいる方に「家の山を守ってくれ」と預けるんですね。これを”山守”といいます。かれこれ500年続いている制度ですね。

〜1つの成功例として、吉野型林業というのがあると本で書かれていますね。
誤解を招くんですが、吉野の林業自体は日本で最も古い林業地で、しかも非常に技術も良く、最高峰と言われているところなんですが、今もそんなに優秀かというと、残念ながら今の林業不況は日本全国を被っている状態で、吉野も苦しんでいます。ですので、今の吉野がこのまま優秀なモデルになるかというと、そういうものじゃないんですが、歴史を振り返ってみたら500年間維持してきた林業は非常に技術も、システムも含めて意味深いものがあるのではないかなとは思います。吉野は先程言った通り山の所有者、管理者を山主と山守として分けているわけですね。技術は山守がきっちり磨いて、代々継いでいく。しかも山主と山守は普段から顔を見ているわけです。ですから、山守は山主の気持ちになって作業ができるということになります。山主と代々付き合っているのに、荒らすことはできないですよね。そういう形のシステムは、戦後すぐまではすごくうまく機能していたんですね。ただ残念ながら、いま吉野の林業も苦しいと言ったのは、木材の需要の問題ですよね。ちゃんと高く良い値段で高く買ってくれる需要がなくなっているんです。かつては吉野材といったら値段が天下一品で、他の林業地の何倍もする良い値段で売れたんです。ところが今はそういう良い木が高い値段で売れなくなっちゃったので、苦しくなってきている。だからやっぱり木材需要をどうやって作るかですよね。それがないと山主も儲からないし、山守も儲からない、だったら林業なんてやってられないよということになっちゃうんですよね。

〜田中さんから見て、国産の木材が海外のものより秀でているというポイントはありますか?
残念ながら国産材が優秀かというと私は疑問なんですね。客観的に言うと、例えば強度なんかは国産材が悪かったりするんですね。客観的に国産材が良いという要素はあまりないと思います。ただ、ここで必要なのはもっと感情的な問題ですよね。これはブルネイのどこそこのジャングルの木だよというのと、これはあの人の山で、50年前に苗を植えた育てて、ようやく収穫した木だよと。どっちを選ぶ?という問題ですね。そこを追求してほしいんです。もちろん触って気持ちよいとか、目で見て気持ち良いというのもあるんですが、そこの歴史、ストーリーですよね。地球の裏側から運んできた木にストーリーを描くのがありえないとは言いません、それはそれでロマンがあるのかもしれないんですが、やっぱり普通の人が喜ぶのは、「裏山の木を使って自分の家を建てるのがかっこいいな」ということじゃないでしょうか。あるいはそのうちの1本くらいは自分で切らせてくれと言う人もいるかもしれない。そういうストーリーを描いて、そのかわり値段はちょっと高くなるよといっても、それはみんな満足するんじゃないですかね。
それに、国産材は高いというイメージがあるんですが、例えば2000万円の木造住宅を建てたとして、そのうち、何%が木材の価格だと思いますか?実は1割もないんです。かなり頑張って木をつかっても1割、つまり200万円そこら。300万はいかないでしょうね。建売住宅ハウスメーカーが建てるときは5%だから100万円もないです。木材ってそれぐらい安いものなんですよ。それを仮に1割高く買いましょうといっても、200万の1割で20万円ですよ。2000万円の家を建てるときに20万円を惜しむかどうかですよね。言葉は悪いですが、木材はなくても生活できるんですね。鉄でもいいし、合成樹脂でもいい、ガラスでもいい。そこに木材に何を求めるかというと、見た目の良さ、感触の気持ちよさ、感性の部分ですよね。そこに訴えていかなければいけないなと思いますね。


森林ジャーナリストの田中敦夫さんのお話、いかがだったでしょうか。

田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。


『絶望の林業』新泉社

この本を3冊プレゼントします!
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【番組内でのオンエア曲】
・俺たちの明日 / エレファントカシマシ
・桜 super love / サニーデイ・サービス

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高橋万里恵
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