番組ではこれまで、森や自然の恵みから、
新しい価値を生み出している人たちを色々紹介してきましたが、
今回は、その「日本の森や自然」が価値を生む理由はなんなのか。
そもそもの部分を専門家の方とともに考えたいと思います。
ゲストは日本総研の井上岳一さん。
全国の、自然を生かした取り組みに接してきた井上さん、
本当に目からウロコな話がいっぱいありました。


◆井上岳一さんの書籍「日本列島回復諭―この国で生き続けるためにー」

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高橋:井上さんは学生時代から、森や自然に関することを学んでいたとか?

井上:森の勉強をしたいなと中学で思い、
森の勉強をしに大学へ。
林野庁へ。本当に面白くて、森を勉強して一番ビックリしたのは、
森の中には無駄な存在がない。
へんてこな生き物がいっぱいあるが全部に役割があり
、全部が関係しあっている。森林生態系ってよくできている。
土や水を蓄える森があることで、僕らは木材工場のように見てきたが、
生き物が生きる場所を作ってくれているという意味で
森はすごく貴重な存在だと思うようになって、
森の味方がすごく変わった。


高橋:山水郷ディレクター。山水郷という言葉を教えてください!

井上:昔から日本は自然のことを山水と言ってきた。
山から出る水が川になり海に流れ、魚が取れて食べられると考えると、
日本列島で人が生きていくことを成り立たせてきたのは
やっぱり山と水なんだなと思い、
だから山水という言葉を使おうかなと。
日本の自然の特徴は人の暮らしと近いこと。
例えばアメリカ人は大自然というと、ウィルダネスというが、
人間の住むところじゃない世界があって、
そこに自然公園があって自然体験をしに行くのが
アメリカ人の在り方だが、日本人はちょっとクルマを走らせれば
山があって川があって、そこでみんなが遊び、
生活も農林業なりで普通に暮らしをしている。
普通に生きている。自然と人の暮らしがすごく近いのが日本の特徴。
なので山水と人の暮らし「郷」、里山地帯や中山間地域や農山漁村と言わずに、
ちょっと言葉を変えてみようと思って山水郷と。



高橋:素敵な言葉。日本の森林占有率は世界に誇るもの。昔の人は本当に山水と近い距離で享受して生きてきたのにどうしてそれを活用できなくなって、森が放置されてしまったんですかね。

井上:一番大きいのは石油革命。
石油はエネルギーとして使えるが、一番大きい割合はプラスチック。
でもそれまでは全て木か竹で作っていた。ということは森。
資材は森にあった。森の中のものをとにかく生活に全部使っていて、
エネルギーにも使っていたし、生活するには家だけじゃなく
家の中のもの全部が森でとれるものだった。
そこに石油・プラスチックができてきて、
エネルギーとして森を使う必要がなくなり、
資材としても使わなくなり役割がなくなり、
誰も使わなくなったということです。


高橋:いまは竹で使ったものってないですよね

井上: 昔はほんとうにどんな山奥に言っても
竹の職人がいて、それが仕事になっていた。
紀伊半島に住んでいた時期があるが、
そのときに聞いた話では「俺の子供のころは住所のない人がいたよ」って。
山の中で暮らして炭焼をして暮らしている。
木を切って炭を焼いて、次の山に行って・・・という。
そこから小学校に通っているやつがいたよ、とか。
そういう時代が実は日本にはあった。
いま僕らは全然森に入らないが、
使われなくなったから森はどんどん暗くなって、
人間にとって別の世界になっちゃったが、
昔はほんとうにもっと森と近かった。


高橋:いま離れてしまったが、山水郷の力を借りて新たな価値を生み出している人が増えている?

井上:これも東日本大震災が影響しているが、
地方移住者が増えた。
そういう人たちがほんとうの田舎に引っ越すようになった。
地方都市の仙台や福岡に行く人もいっぱいいたが、
仙台から1時間車で登った、
300人しか住んでいないようなところに行くようになった。
本当に使われていない山と農地と家があって、
それを使わせてもらえるという約束ができた人は、
それを使ってなにか新しいことをやっている。
誰も使っていないからこそ、土地代もほとんどかからないし、
本当に山奥でパン屋さんをやっている人も結構いて。
東京で美味しいパンを焼いても土地代がかかる。
お客さんがいっぱい来たとしても。
でも山奥でパン屋なら、小麦も育てている人もいるが、
無農薬小麦で土地代もかからず固定費がない状態で。
総務省家計調査を見ると、どんな田舎でも
日本人の平均で年に3万円パン代に使っている。
だから300人が3万円ずつ使えば900万円。
売上900万円は300人お客さんを捕まえれば取れちゃうのがパン屋。
だから意外とどんな田舎でも手作りパン屋ってすごくある。
とくにパンにこだわる人は天然酵母や、
鳥取の山奥に「タルマーリ」さんってありますが、
そこは麹も自分で取る。
本当に自然環境が良いところじゃないと麹菌が降りてこない。
「農薬を周りで使っていると降りてこないんだよ」と。
そうすると人のいないところいないところに行って、
菌をとって美味しいパンを作っている人もいる。
特にお年寄りはすごくパンが好きな人が多い。
高齢化しているところってパンが売れる。意外と。
アメリカへの憧れとかもあると思う。
だからまずパン屋はどこでも見かけるし美味しいパン屋が。
北海道岩見沢、札幌から1時間位の旧炭鉱。
昭和40年代に閉山になった。
最盛期は13000人だった人口が500人に。
行くと炭鉱住宅が長屋みたいなのがボロボロで捨てられていたりするが、
そこも奥に美味しいパン屋さんがあって。
10時開店だが9時20分にいかないと売り切れるというので
並んだら本当に30分で売り切れ。1個120円で安い。
窯で焼いて焦げ目も美味しいが、
10時20分にはビジネスが終わり、
1日の売上がとれているという。





日本総研 創発戦略センター シニアスペシャリストで山水郷ディレクターの井上岳一さんをお迎えしました。次回も、お話の続きをお届けします。

◆井上岳一さんの書籍「日本列島回復諭―この国で生き続けるためにー」


【今週の番組内でのオンエア曲】
・So Caught Up In You /  Ernie Cruz, Jr
・満月に吠えろ / チャットモンチー

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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