今週は、先週に引き続き、アスファルトの割れ目、電柱の根本、ブロック塀の穴、石垣など、色んな「スキマ」から生えている植物たちをめぐるお話です。
町を歩く時、ちょっと下を向いて歩くだけで目に留まる、スキマの植物たち。実際、どんなところに、どのくらい存在するものなのか。というわけで、東京大学大学院教授で、植物学者の塚谷裕一さんに職場である、文京区本郷の東京大学の周りを案内していただきました。

◆東京の街の中にもたくさんのスキマの植物が
これはセイヨウタンポポです。冬越しのために縮まっていますね。ヒメジョオンとハルジオンと両方あるみたいですし、4種類はこの一角にありますね。ほかにもオニタビラコがいて、オランダミミナグサがいて、これは和名がちゃんとついていないのですが、イヌノフグリっていうのかな、帰化植物です。で、カタバミがあって、ここにもうひとつシダ植物のイノモトソウが生えていますね。これはホトケノザ、ツルソバはスキマをこじ開けて無理やりもぐりこんでいますね。

これはイヌビワ、さっきあったのはこれがこれが寒くていじけてたやつですかね。
やっぱりちょっとした距離で顔ぶれが変わりますね。向こうとだいぶ違うでしょ?一見、外から見るとわかりませんが、たとえばこの石垣、この部分が湿っていますよね。そういうのにもよるんじゃないですかね。


塚谷先生と一緒に、たった50mくらい歩くだけで、様々なスキマの植物が見つかりました。
石垣のスキマをよーくみると、日が当たりやすい場所、雨水がたまりやすく湿った場所、風が当たりやすそうな場所などがあります。スキマの植物が生えている所には、それ相応の理由があることがあるんですね。

ところで、スキマの植物を私たちは「雑草」と考えがちですが、これを「雑草」と呼ぶのは、どうもスキマの植物たちに失礼にあたるようです。

◆スキマの植物は雑草ではない
僕は理学系なので、気楽に雑草と言ってしまうんですが、農学系の方々に聞いてみると、「雑草」というのは、本来はそういう使い方をするのは間違いだそうです。雑草は農作物の植物と競争して害をもたらすものが雑草といいます。そういう意味では、スキマの植物はそういうことをしていないので、雑草にはあたらないですね。あと街でよくみるスキマの植物には、家庭で育てている園芸植物が逃げ出したケースも結構あるので、その両方の意味で、雑草というのは本当は間違い。本当に古来から日本でその辺に生えていたのもいるので、まあひとことで言うのは難しい。そういう意味でスキマの植物とひっくるめるしかないんです。


それは、大変失礼いたしましたという感じ?
これからは、道端の植物たちを雑草と呼ばず、「スキマの植物」と呼んであげましょう。とはいえ、アスファルトを突き破ったりする、スキマの植物の力強さを「雑草魂」なんていって、ちょっと尊敬しているんですけどね。。。
で、その、スキマの植物たちの、アスファルトを突き破る力。これは人間と違う、植物ならではの特徴が関係しているんだそうです。

◆アスファルトを押しのけるスキマの植物
コンクリートとアスファルトだと植物はアスファルトのほうが得意です。コンクリートのほうは、すでにヒビが入っているところを押しのけることはできますが、なにもないところに亀裂をつくるのはさすがに無理です。コンクリートに比べてアスファルトは非常に硬い飴みたいなものです。道路を舗装したてで、まだ熱いときはドロドロの状態で、冷えると硬くなるわけです。ああいったネバりっこいものを壊すときには、ドリルなどの強い力をいきなりかけてもなかなか壊れない。そのかわり、弱い力でもじっくりかけていくと、ゆっくり押されただけ動く。人間はそんなに辛抱強く待っていられないので、人間にとっては機械で壊すしかないですが、植物は元々ゆっくりしか動かないので、動いた分ちゃんとアスファルトが動いてくれる。ですからよく駐車場にアスファルトをひいてしばらくすると草だらけになるというのはそれですね。



今回、塚谷さんと一緒に散策した、東京大学周辺の石垣には、いわゆる「スミレ」もありました。取材したのはまだ1月下旬ということで、もちろん花はつけていませんでしたが、このスミレって、すごく気まぐれなスキマ植物だということを教えてもらいました。

◆気まぐれなスミレ
スミレは割りとスキマが好きみたいで、駐車場のアスファルトの割れ目などでよくみかけます。あんな過酷な条件で生えているんだから、大事に鉢に植えたら喜ぶだろうと思ったらそうでもなかったりします。日本にスミレってすごくたくさんいるんです。世界的にもスミレの種類が多い国で、園芸価値のあるものもたくさんあるんですが、その割に園芸化されていません。なぜかというと、生えているのをとってきて植えると、植えた年は咲くんですが、次からだんだんいやがって、どこかへ行ってしまうことが多いんですよ。野草を育てるのが好きな人達のあいだでよく言われるのが、スミレを育てたかったら、一鉢、庭の真ん中あたりに置いておく。そうして種が飛んだり、アリが種を運んでいったいりして、自分が好きなところで生えたのを、そこで育てるのがいいといいます。なにか選り好みがあるんですけど、なにが好きなのかよくわからない。だから勝手に生えてくるのを待つほうがいいんです。


なるほど。なんだか人間にはわからない好みがあるんですね。
植物学者の塚谷さん、なにか植物をみていて感じることを聞いてみました。

◆スキマの植物は結構幸せに暮らしている
僕は元々植物が専門なんで、植物の側を基準に考えると、人間のほうがむしろ変わった生き方をしているなと思っています(笑)。植物は光を感じることはできますが、人間のように焦点を合わせるということができるわけじゃないので、自分にあたっている光しかわからない。ですからとても不便な生き物です。そう考えると人間は自由なのになにをしているんだろうなと思ったりします。
スキマの植物は人間からみると閉じ込められてるみたいに見えますが、植物の側からみると回りには邪魔者もいませんし、気楽に生きています。周りに仲間がいっぱいいるところをみると繁殖にも不自由してないみたいですしね。



塚谷裕一さんのお話しいかがだったでしょうか。
ちなみに、こうしたスキマの賞物たち、今の時期はまだ花がなく葉っぱしかありません。花が咲かないとその正体は分かりにくいので、普段の通勤・通学路で気になる植物を見つけたら、そこを気にして毎日チェックしてみると良いそうです。
スキマの植物たちは、桜が咲くころは一斉に色んな花が咲くとのこと。春になると、あーここにこんな植物が!と気づくことになるそうです。

そんなスキマの植物たちの楽しさがわかる本、塚谷教授「スキマの植物図鑑」は中公新書から出ています。


今回のお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・The A Team / Ed Sheeran
・明日天気になれ / ハナレグミ

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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