「王者の勇躍、敗者の落胆」
スタジアムは、活火山のようだった。ミラン、ユベントスともサポーターの応援のエネルギーは、互角。試合もさることながら、スタジアムの応援もお互い負けるわけにはいかない。サポーターは、カラーボードを用意し、それぞれの街の紋章をモチーフにした、人文字を作る。きれいであればあるほど、統制が取れているというわけだ。試合は、両チームともイタリアらしい守備を固め、ミランのシェフチェンコのオフサイドによる幻のゴールなどもあったが、前後半90分、無得点のまま展開されていく。そして延長に突入するも、0-0もまま。最後はPK戦となり、長い長い戦いを制したのは、ACミランだった。日本の場合、日本代表戦に人気が集中する。
ところが、欧米は違う。これは、サッカー文化論につながるのだが、国を代表するナショナルチームより、自分たちの住む街のサッカークラブの応援に注力するのだ。なぜか?イタリアだとトリノとミラノ、スペインだと、マドリッドとバルセロナ、表面上は同じ国だが、歴史的にそれぞれが独立した都市国家だったため、住民の意識は、まさに敵国。そう、チャンピオンズリーグは、各国のおらが街のクラブチームが最強を競い合うリーグであり、言い換えれば、サッカーフットボールという名前を借りた現代の都市間の戦争なのだ。戦い終えて、ユベントスのサポーターは、落胆し、ミランのサポーターは、王者の勇躍。マンチェスターの街は、早朝まで、ミランサポーターの、喜びの歌声が響き渡っていた。
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