「ナポレオンの島」 コルシカ島
その昔、コルシカ島に定住した古代ギリシャ人は、地中海に浮かぶこの小さな島を「美しい島」と呼んだ。以来、島を訪れるツーリストは、春になるまで雪をいただく2000メートル以上の高い峰、むきだしの峨々たる山脈、光にあふれた黄金の砂、絶壁にかこまれた海岸、広大で広々とした湾、閉じられた渓谷、広大な森、潅木林の香りと燃えるような色彩、緑の絨毯の中に点在する村々など野性的な自然環境に目を奪われている。
そんな豊かな自然が織り成すこの島の「妙なる音色」が、まるで神々が住んだ島のような、失われた原初的な風景をツーリストに思い起させるようだ。「美しい島」と名づけたギリシャ人の賛嘆の言葉は、数千年の時を隔てて現代人をも魅了している。フランス本国から180キロ、イタリアから83キロ、スペインから450キロに位置するコルシカ島の地の利と、年間平均気温が12−16度という地中海型の亜熱帯だが温和な気候に惹かれ、毎年大勢のツーリストが訪れる。コルシカ島を訪問するツーリストのもうひとつの目的は、この島がナポレオンの生地だからである。なぜ島を脱出したナポレオンが、わずか30年あまりでフランス皇帝としてヨーロッパに君臨するようになったのか、甘い海風に吹かれ上等なコルシカワインを飲みながら、その権力の源泉に思いを巡らせるのも一興かもしれない。(続く)