「豊かな文化遺産」 シチリア島
「太陽の島」と呼ばれるシチリア島は、周辺の小さな島を含めて面積２万６０００平方キロの地中海最大の島だ。ギリシャよりもギリシャ的な古代的遺産を持つといわれ、スエズとマルセイユを結ぶ最短ルートにあるために、古来、東洋と西洋、歴史と文化の重要な架け橋の役割を果たしてきた。フェニキア人、ギリシャ人、ローマ人、アラブ人、ノルマン人、フランス人など、この島ほど諸民族が入り乱れた島は他にない。しかしどんな時代も動乱も消し去ることができなかった不滅の遺跡が残り、数々の遺跡や文化遺産がぎっしり詰まっている。
ギリシャ人が各地に建設した優美な神殿と壮大な円形劇場、ローマ人が建立した村々、ノルマン人が残した教会の典雅なフレスコ画、アラブ人は遺跡を建造しなかったけれどオレンジやレモン、サトウキビの栽培法を伝授するなど、各民族がシチリア島の繁栄に大いに寄与した。シチリアの旅はそうした素晴らしい遺跡や文化遺産を再発見する楽しさに満ち満ちている。第２の都市カターニャから車で走った港湾都市パレルモまでの３５０キロの道のりは、忘れがたい美しい思い出の画集を作ってくれた。
かつてシチリアといえばマフィアの存在が有名だった。「雪と火」の性格を持つといわれるシチリア人の、大胆にして臆病、無口にして激越な感情、運命論者にして冒険好きな性格の一端がそこに表れていたような気がしてならない。(続く)
