JET STREAM TOKYO FM AND
ONAIR:MONDAY-FRIDAY 24:00-24:55
JAPAN NET WORK
WELCOME TRACKLISTINGS CREW SPECIAL COLUMNS GALLERY SPECIAL ISSUES
MAIL:jetstream@tfm.co.jp PHONE:03-3221-0080
COPYRIGHT (c) 2003
THIS PROGRAM IS BROUGHT TO YOU BY JAL.
JAL

04 SPECIAL COLUMNS (第4話)1000ルーブルの価値


   外はすっかり暗くなっていた。彼女のアパートの扉の前まで来るとすばやく1000ルーブルを取り出した。そして彼女に差し出した。彼女はお金をじっと見た。そして僕の顔を見た。「あなたはわたしのともだちか」もちろんだしあしたもよろしく。と僕は言った。彼女はロシア語で何かをわめきばたんと扉を閉めた。紙切れをポッケにしまい扉を背に座る。たばこに火を付けゆっくりとけむりを呑み込んだ。お礼のつもりだった。職業病だ。考えた。たばこをすてて立ち上がりとびらを何度も叩いた。何度も。

 日曜日がやってきた。この日二人はネヴァ川を渡って対岸で過ごした。
彼女の鞄には露英辞典がスタンバイしていた。伝えたいことがあると時節彼女は立ち止まった。銅像が壊されてしまっている公園でロシアの犬は大きいか小さいかで口論した。この街を映し出す光の美しさについて長い間話した。当たり前のことではあるが僕は企画にこだわっていた。取材の失敗は失業を意味する。リュックの中でライカがスタンバイしている。
(つづく)
AVRORA~オーロラ~
文|牧野耕一
UP DATEundefined