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THE ONE 音楽界の偉人を毎週1人ピックアップ。アーティストの持つ世界をみつめます

2011年8月28日(日)
降谷建志(Dragon Ash)
陽はまたのぼりくりかえす / Dragon Ash
「陽はまたのぼりくりかえす」
Dragon Ash
Dragon Ash、みなさんご存知ですよね?HIP HOPやラテン音楽など、あらゆる音楽的要素を吸収し、進化を続けるミクスチャー・ロックバンドです。CDデビューは1997年ですから、現在14年目。デビュー当時17才の降谷さんも、今年で32才になっています。『バンドは金のため』。デビュー当時、あらゆるインタビューにこう答え、若さゆえの苛立ちを隠すことなく表していた降谷さん。14年目の今、降谷さんはどんな思いで音楽と向き合っているのでしょうか?
『ロックは好きじゃない、っていうか、興味ない』これは、17才の降谷さんが雑誌のインタビューに答えた言葉。そのままの意味で受けとってしまうと、なぜロックバンドを結成しているのか?と疑問に思ってしまいますが、これは、当時の降谷さんなりの表現。楽しいからやっているのであって、ロックと限定されるのを嫌っての発言でした。キリスト系の学校に通っていたことから、小学生の頃に聴いていた音楽は、賛美歌。その後、アニメの主題歌からブルーハーツを知り、「トレイントレイン」や「リンダリンダ」などを、よく聴いていたそうです。しかしそれでも、ロックへの興味はさほど深まることはなく中学3年でバンドを組み、ベースを担当することになった時も、ベースを買いに行って、間違ってギターを買ってしまうほどでした。はじめて曲を作ったのは、楽譜が読めず、耳で聞いて覚えるのが面倒だったから。自分で作れば覚える必要がない、その程度だったといいます。ところが、そのはじめて作った曲を、バンド仲間が知らないうちにレコード会社へ送りそれがデビューのきっかけとなります。音楽の知識も憧れも、乏しいままに導かれたプロへの道。話はトントン拍子にすすみ、17才でミニアルバムをリリースします。はじめの1年は鳴かず飛ばず。結成まもないロックバンドには珍しいことではありませんが、この頃の降谷さんは、リスナーが壁を作って、自分たちの音楽を受け止めてくれないのだと思い込んでいました。次に出す曲が売れなかったら、終わりかも… 早くもそんなムードが漂っていたといいます。
繋がりSUNSET / Dragon Ash
「繋がりSUNSET」
Dragon Ash
しかし、そんな状況の中で、降谷さんは『壁を作っていたのは、自分の方だったかもしれない…』と思うようになります。気付かせてくれたのは、活動して行く中で知り合った、他のバンドマンたち。彼らは、音楽が好きな気持ちや、自分の曲が認められた時の嬉しさを、素直に口にしていました。そんな彼らが、降谷さんには眩しく見えたのでしょう。自分は、バンドが楽しくてしかたないのに、防御線をはっていた。誤解されかねない乱暴な言葉を発して、壁を作っていたのは、自分自身だった…。それからの降谷さんは、素直な気持ちで曲を紡ぐように変わっていきます。すると、先ほどお送りした『陽はまたのぼりくりかえす』がオリコン上位にランクイン。徐々にリスナーに受け入れられるようになるのです。
HIP HOPとロックを融合させた音楽をメジャーにし、ミクスチャー・ロックを牽引する存在となったDragon Ash。1999年、3rdアルバム『Viva La Revolution』はオリコンチャート1位を獲得し、200万枚を超える大ヒットとなりました。しかし、“出る杭は打たれる”もの。さまざまな音楽要素をミックスすることは、批判の対象にもなり、特に降谷さんは、俳優・古谷一行の息子ということだけが取りざたされ、不愉快な思いをすることもありました。『売れたら売れたで、問題が出て来た。だからこそ、Dragon Ashはやめられない』そんな思いが、その後の創作活動を後押ししていきます。アルバムを出すごとに、ガラリとサウンドを進化させ、ラテンの要素なども大胆に取り入れるようになったDragon Ash。気がつけば、こうしたミクスチャー・ロックが当たり前の時代がやってきていました。『百の敵を作ることを恐れていては、千の味方も作れない』。降谷さんは、賛否両論を受けとめ、千以上の味方を作っていったのです。
DREAMIN’ / Dragon Ash
「DREAMIN’」
Dragon Ash
そんな降谷さんがここ数年、憂いているのは、ミクスチャー・ロックの並列化。いろいろな音楽要素が、少しずつ薄まって、同じような音楽になっているのではないか?本来のミクスチャー・ロックが絶滅しかかっているのではないか?アイドルの歌や、コンピレーション・アルバムは売れるのに、ロックのアルバムは今ひとつ。こんな現状にも、疑問を感じているといいます。アイドルにはアイドルの良さがあるように、バンドにはバンドの魅力が必ずある。自分が傷き、悩み、泣き、笑い、身を削って言葉を綴り、それをバンドのみんなで一つの曲にして表現しているからこそ、伝えられることがある、そう信じて、音楽を作り続けているといいます。『ロックバンドが、いかにカッコイイ生き方なのか、知ってもらいたい』デビュー当時から取材を受けている雑誌のインタビューに、こう答えている降谷さん。降谷さんにとって、Dragon Ashは、男の生き様を音楽で表現する、最高の舞台なのかもしれません。デビュー当時は3人だったメンバーも、現在はダンサーを入れ、7人構成となっています。音楽だけでなく、踊りや演出なども含めたライブ全体で、ロックバンドの魅力を表現するチームとなっているんですね。デビュー10周年の時、降谷さんは、Dragon Ashについてこう語っています。『続けていることが、カッコよくて美しい』途中、投げ出したくなることもあったという降谷さん。それを思いとどまらせたのは、いつも自分自身の気持ちだったといいます。続けるためにはどうしたらいいのか、死ぬほど考えてきたからこそ、彼らの音楽は、いつまでもカッコ良く、美しく響くのでしょう。今夜は、降谷建志さんをピックアップしました。