日本を代表する左官職人 久住有生さんが登場
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- 2025/11/09
左官職人の久住有生さんをお迎えして
今回はスタジオに、左官職人の久住有生(くすみ なおき)さんをお迎えしました。
宇賀「久住さんは薫堂さんにお会いしたことがあるんですね」久住「20年くらい前なので覚えていらっしゃらないと思いますが……」
小山「僕、ずっと作品は拝見していて。いつか会いたいなと思っていたのですが、会っていたんですね(笑)すみません!」
宇賀「はじめに久住さんのプロフィールをご紹介をさせていただきます。久住さんは1972年、兵庫県 淡路島生まれ。祖父の代から続く左官家系のもと育ち、3歳でコテを握ったと言われています。高校3年の夏、スペインでガウディの建築を見て衝撃を受けたことが、左官としての道を決める転機になったそうです。高校卒業後、各地の親方に師事し、23歳で独立。アート表現にも挑戦されていて、ニューヨークの国連本部で開催された 国連加入60周年記念行事イベントにて、インスタレーションを行ったり、G7広島サミット会場施工などを担当された実績もあります」小山「さまざまな世界の舞台で土壁を作られて。そういうのは依頼が来るんですか?」
久住「そうですね、ご依頼をいただいてあちこち行っています」
小山「日本の土壁の作り方というのは、海外とはまったく違うものなんですか?」
久住「そうですね。もともとは朝鮮半島とか中国から渡ってきたものなんですけど、日本人独特の四季があったりとか、日本人特有の性質、気質があって、割と繊細にものを作るのでどんどん変化していって、より洗練されたものになったのかなと思います」
宇賀「でも3歳でコテを持って高3でガウディで決断。人生の最初の方の展開が早くないですか?」小山「おじいさまが左官をやられていて、幼心に壁を塗る姿を見ていたんですか?」
久住「父親に子どもの頃から作業をしているところに連れて行かれて、お手伝いというかちゃんと作業をする一人の弟子みたいな感じで、幼少期からお手伝いをしていたので」
小山「もうその頃から左官になることはあたりまえのような、自分の中で決まっていたんですか?」
久住「いやいや、もうすごく嫌だったので、なんとかそれから逃れようといろいろ、はい」
小山「なぜガウディに影響を受けて左官になろうと思ったんですか?」久住「本当はパティシエになりたかったんです。僕は甘いものが大好きで、1週間おこづかいを貯めてはケーキ屋さんに行ってケーキを買う子どもだったので。高校生の時に、パティシエになりたいから父に相談をして『学校に行きたい』と言ったら、淡路島の中でそんなに世間も知らずに育っているので、『世界を見て来い』と言われて。それでヨーロッパを一人で旅させてもらったんですけど、いろんな国に行った時にスペインのガウディが作ったサグラダファミリアを見て、震えたというか、感動して」
小山「その時にもし、パリでおいしいケーキ屋さんに出会っていたらそっちに行っていた可能性もあったんですね」
久住「でもほとんどの国でケーキ屋さんの写真を撮っていたんですよ(笑)」
小山「ガウディの何にビビッと来たんですか?」
久住「やっぱりサグラダファミリアに行って、すごい熱気というか、いろんな古い建物を見て回ったんですけど、スペインが最後の方だったんです。みんながすごく熱狂していて。100年前から作り続けていてまだ300年完成までかかるその施工途中、作っているのか修理しているのかわからない、でもずっと至るところで職人さんがコツコツやっていて。それを世界中から来た人が見て、熱狂して盛り上がっている。それを見て感動して。この国にいきなりこれができた、その当時は宇宙から誰かが来て作ったんじゃないか、くらいの衝撃があったんじゃないかと思って。僕はすごく感動したんです」小山「帰国してお父さんに『継ぐよ』と言ったんですか?」
久住「でも、やっぱりパティシエの夢もあきらめきれたわけじゃなくて(笑)。一応父に相談して、でも本当に簡単な子どもだましな言葉なんですけど『ケーキは食べたらなくなるけど左官は死んでも残るで』とか言われて。18歳だったので、まあそうかなあと思って。最後の決心はそこだったかもしれないですけど、ガウディはすごく僕の左官としての始まりだったと思います」
小山「土探しをやったりもするんですか?」久住「まず海外に行くと、土は輸出とかができないんです。検疫に引っかかっちゃうので。なので僕らはまず海外から仕事が来たら、その依頼先に行って土を探して、砂とか砂利を探して、そこから作ることを始めます」
小山「探す時はどうやって探すんですか?」
久住「何となく山の形状とか断面とかを見るとこの辺に使える土があるだろうな、と。それで行って土をさわって、強度があるなとか、綺麗な色だなとかを探しますね」小山「左官に入って最初は雑用係みたいなことをやると思うんですけど、コテさばきの修業みたいなものはあるんですか?」
久住「僕は子どもの頃から壁塗りの練習をしないとごはんを食べさせてもらえなかったので、小さい頃から」
小山「星飛雄馬の家庭みたいですね」
久住「父は英才教育と思ってたと思うんですけど、スパルタで。土壁を塗っては剥がす、塗っては剥がすというのを毎日繰り返すのですが、僕の弟子の人たちにもそんなようにして教えています」小山「久住さんが人生で最初に塗った壁がどこか覚えています?」
久住「本当に残った壁は、僕が子どもの時に父親に押し入れの中の仕上げをさせてもらったのがいちばん最初だと思います」
小山「それはまだあるんですか?」
久住「あると思います。何歳だろう、小学校の4、5年生だったと思います」
小山「その壁を切り取って額をつけたら『久住有生最初の作品』として売れるんじゃないですか」
宇賀「薫堂さんは土壁をオーダーをする時はどうやってお願いするんですか?」小山「『いい感じにしてください』(笑)」
宇賀「おまかせですね」
小山「おまかせするしかないですよね」
宇賀「実際は細かくオーダーされることもあれば、おまかせみたいなこともあるんですか?」
久住「僕は割とおまかせが多いんですけど、おまかせっていうのは信頼して依頼いただいているのでそれはすごく職人冥利に尽きるんですが、やっぱりお客さんの好きなものとか好みをいろいろ言ってくれたり、その人の考えを言ってもらえると、反応して自分一人で考えるもの以上の何か新しいものが出てくるので、僕は割と打ち合わせをしながら作るのが好きかもしれないです」小山「いちばん緊張する瞬間ってあるんですか?」
久住「やっぱり最後ですね。その仕上げによるんですけど、特に日本の伝統的な仕上げだと、何日も前から全部準備していて、いざ仕上げ出して……コンマ数ミリの話なんですけど、コテを使いながら息を止め、作り込んでいくんです。ほぼほぼ8割9割すごくいい状態で、もう一声したら最高のものになるんですが、そのもう一声の時にやっぱりちょっとのコテの滑りとか、タイミングですべてがダメになることがあるんです。そうするともう全部一から剥がして、また一からやり直しになるので。最後の最後はすごく緊張感があるというか、結構大事なところですね」
小山「きっと天候によっても変わったりしますよね」
久住「すごく変わりますね。湿度とか温度は大事なので」
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、久住さんはお手紙が書きたくなるような場所というとどこか思い浮かぶところはありますか?」久住「海外に仕事に行ったりとか旅行に行った時に綺麗な絵葉書が街角に置いてあるんです。あれを見ると、ああ送りたいな、と。その時に手紙を書いてみたいなというのはありますね」
宇賀「今日は久住さんに、『今、想いを伝えたい方』に宛てたお手紙を書いてきていただきました。どなたに宛てたお手紙ですか?」
久住「師匠である父親に」
久住さんから、お父様へ宛てたお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聞きください。
(*11月16日まで聴取可能)
宇賀「今日の放送を聞いて、久住さんにお手紙を書きたい、と思ってくださった方は、ぜひ番組にお寄せください。責任をもってご本人にお渡しします。【〒102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 久住有生さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
久住有生さん、ありがとうございました!
久住有生 ウェブサイト今回の放送は、radiko タイムフリーでもお楽しみいただけます。
「SUNDAY’S POST」Xのアカウントはこちらから。
BSイレブン『うららじ』でSUNDAY’S POSTが特集されます
11月9日(日)夜9時30分からBSイレブンで放送される「うららじ」でSUNDAY’S POSTが特集されます。普段の収録や手紙を選ぶ様子など、番組の裏側をご覧いただけるのでぜひチェックしてください!皆さんからのお手紙、お待ちしています
毎週、お手紙をご紹介した方の中から抽選で1名様に、大分県豊後高田市の「ワンチャー」が制作してくださったSUNDAY’S POSTオリジナル万年筆「文風」をプレゼントします。引き続き、皆さんからのお手紙、お待ちしています。日常のささやかな出来事、薫堂さんと宇賀さんに伝えたいこと、大切にしたい人や場所のことなど、何でもOKです。宛先は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST】までお願いします。
今週の後クレ
熊谷郵便局のみなさん
今回のメッセージは、埼玉県〈熊谷郵便局〉太田 梓さんでした!
「私は北海道の小樽出身なのですが、先日、実家に住む両親から久しぶりに手紙をもらいました。そこでお返しにと、今年8歳になる娘と一緒に手紙を書くことにしました。娘はちょうど漢字を覚え始めたばかりで、一生懸命に文字を書いたり、北海道に生息するシマエナガという野鳥のイラストを描いたりして、手紙を仕上げました。最後はポストに投函するところまで、自分でやり遂げる姿を見守りました。その様子を見て、子どもの成長を改めて感じるとともに、手紙には人の気持ちや時間がしっかりと込められていることを実感しました。自分の仕事も、お客さまの思いをのせて届ける大切な仕事なんだと改めて感じています。これからも、手紙の持つ力を伝えられるような取り組みに、積極的にチャレンジしていきたいと思います。」
※出演した郵便局、及び郵便局員宛ての手紙はいただいてもお返事できない場合がございます。あらかじめご了承ください。
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この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
全国の皆さんからのお便りや番組で取り上げてほしい場所
を教えてください。
〒102-8080 東京都千代田区麹町1−7
SUNDAY'S POST宛








