26.11.02
防災庁きょう発足、期待される役割と3つの課題

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
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「防災庁きょう発足、期待される役割と3つの課題」
手島:災害対策の司令塔となる防災庁が今日、発足しました。細野豪志・防災担当大臣は初日に国民や行政に対して防災を呼びかける「緊急要請」を出す方針です。そこで今朝は防災庁に期待される役割や課題について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、細野大臣が出すと表明した「緊急要請」とはどんなものなのか教えてください。
神庭さん:国民に対して、水・食料・携帯トイレを最低3日分、できれば1週間分備蓄するよう呼びかけるもので、自治体や中央省庁に対しても、防災対策の徹底を求めるということなんですね。
ユージ:「緊急」という言葉が危機感を煽るというか、ちょっとドキッとするんですけど。
神庭さん:「緊急」と言われたらね、えっ何かあったの?と思ってしまうんですけど、どうもそういうことではないようで。産経新聞によると、細野大臣は先月30日の記者会見で「戦争や災害予知の情報があるのかといった話が一部で出ているが、そういうことではない」と明確に否定しているんですね。あくまでも事前防災を徹底するための要請だということです。今のご時世ね、変な陰謀論を流す人たちも出てきますので、「緊急」という物々しい言葉を使わなくても、普通に防災を呼びかければよかったような気もするんですけれどもね。
ユージ:気を引くという意味では効果はあったように思いますね。
手島:改めて、防災庁設置のねらいについて教えてください。
神庭さん:防災に関する司令塔機能の強化ですね。NHKによれば、前身となる内閣府防災担当の定員は昨年3月時点で110人でしたけれども、防災庁発足に伴い352人に増員されます。人員不足でパンク寸前とも言われていたんですが、増員によって体制が強化されます。東京だけでなく地方にも拠点となる「防災局」を設置する予定です。そしてもう1つはタテ割りの打破です。避難所対応ひとつとっても、体育館に冷暖房を整備するのは文科省、支援物資の輸送ルートは国交省、避難所の医療体制は厚労省、そして避難所の管理は市区町村が、それぞれバラバラにこれまで管轄してきました。今後は防災庁が司令塔となって関係機関を取りまとめて、調整していく役割というのが期待されています。
ユージ:まあこれ、どうでしょう。うまくいきますかね?
神庭さん:フタを開けてみたら、ただの看板の付け替えで、タテ割りのタテがもう1本増えただけでした、みたいなことにはならないようにしていただきたいですよね。そのためのカギになるのが「勧告権」というものです。関係省庁の働きが悪いときには、防災大臣が勧告を出すことができるんですね。細野大臣はXで《防災大臣には、総理の権限を背景に、各省庁に対する勧告権が付与されている。この権限を「抜かずの宝刀」にしてはならない》というふうに強調しているんですね。
ユージ:最後に、防災庁の課題はなんでしょうか?
神庭さん:3つあって、1番の課題は「TKB48」の徹底です。「避難所・避難生活学会」が提唱しているもので、Tは清潔なトイレ、Kはキッチン・温かい食事、Bは簡易ベッドを指します。災害関連死を防ぐには、48時間以内にこのTKBを整えること。「TKB48」が重要なんですね。さらにもう1つバス(お風呂)を足して、TKBBと言うこともありますが。残念ながら能登半島地震や熊本地震でも、TKB48を実現できずに、被災者の方が避難所で雑魚寝を強いられるというケースが実際にありました。防災庁が真っ先に取り組むべき課題と言えるんじゃないかなと思います。そして、2つ目がサイバー防災。AIの悪用などで電力や水道、医療などのライフラインが麻痺するような事態が懸念されています。実際、イギリスの防衛大臣はサイバー攻撃や災害などに備えて、食料、水、救急用品の備蓄をするように呼びかけています。先月16日には、M9.9の緊急地震速報が流れ、8分後に取り消されるということがありましたよね。あのときは単なる誤報だったが、不正アクセスなどで意図的に情報が歪められたら社会が大混乱に陥ってしまいます。サイバー攻撃を地震や台風とは違う形のある種の「災害」と捉えて、もしものときのために訓練などで備えておく必要があるんじゃないかなと思いますね。
ユージ:3つ目の課題はなんでしょうか?
神庭さん:3つ目の課題は適切な予算執行です。JNNによると、防災庁の予算規模は前身となる内閣府防災担当時代の218億円の約3倍、要求ベースで652億円まで膨らむ見通しになっています。日経新聞によれば、防災技術の研究開発や防災産業の育成などに全体の3割強にあたる約225億円を投じて、海外への輸出促進に力を入れていくということなんですね。このほか防災のプロを育てる「防災大学校」の設置も検討されています。海外への防災技術の輸出とか、防災人材の育成の重要性も、もちろん否定はしませんが、まずは「体育館で雑魚寝」みたいな劣悪な避難環境を改善するのが第一なんじゃないかなと私は思います。ジャーナリスト・小沢慧一さんの『南海トラフ地震の真実』という本では、「30年以内に70〜80%」という南海トラフ地震の発生確率について、地震学者たちから「科学的に疑義がある」という指摘があったのに、確率を下げると「防災予算の獲得に影響する」という意見が幅を利かせて、高い数字が採用された経緯が紹介されています。その後、政府は昨年の9月に確率の計算方法を見直しているんですね。防災目的であれば青天井で税金を投入していいわけではないですから。「まず予算ありき」ではなく、科学的なエビデンスに基づき、しっかり優先順位をつけて対応していただきたいなと思います。