26.11.03
アメリカ中間選挙、目前!アメリカ国内と世界に与える影響

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
けさ、取り上げるテーマはこちら!
「アメリカ中間選挙、目前!アメリカ国内と世界に与える影響」
吉田:アメリカの中間選挙は現地時間11月3日に投票が行われ、日本時間では明日4日から順次開票が始まります。けさはアメリカの中間選挙の争点や選挙後の注目ポイントなどについて、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:まずは最新の選挙動向を教えてください。
神庭さん:いま現在は上院・下院ともトランプさん率いる共和党が多数派を握っています。今回の中間選挙では、多くの調査機関が下院での民主党の過半数奪還を見込んでいます。そして上院も民主党が過半数を取るという予測が出ていますが、こちらはかなり接戦で見通せない部分も残っています。ロイター/イプソスの世論調査では、登録有権者の47%が民主党、36%が共和党を支持すると答えました。中間選挙はトランプ政権の信任投票という側面が強いですが、トランプさんの支持率も32%と低迷してまして、トランプさんへの逆風がそのまま共和党への逆風になっているように見えますね。
吉田:何が争点になっているんでしょうか。
神庭さん:一番は物価高です。アメリカは車社会ですから、ガソリン価格の上昇が庶民の財布を直撃しています。そして食料品も上がっています。新潮QUEは、ワシントンで働く日系企業の社員の声として、この10年でラーメンが1杯約1,650円から3,768円に、マクドナルドのビッグマックセットは約880円から1,570円超に上昇したと伝えているんですね。これではもう、おいそれとマックにも行けないと。自宅でバーベキューしようにも牛肉代も高騰してしまっているということなんですよね。
ユージ:そういう意味ではアメリカ国民にとってもやっぱり「勘弁してくださいよ!」みたいな感じなんですか?
神庭さん:お肉大好きなアメリカ人は多いので、AP通信によると、ミシシッピ州の共和党議員が過去に「消費者が牛肉の高値に不満を抱いているなら、他にも選べるタンパク質はたくさんある」とマリー・アントワネットみたいな発言をしていたことが掘り起こされました。ライバルの民主党候補はこの発言を逆手にとって「別のタンパク質を選ぶ? それなら、別の上院議員を選んだほうがマシだ」という批判動画を作成し、SNSでバズるという展開もありました。もともとトランプさんはバイデン政権のときの物価高を批判していました。トランプさんならインフレを抑制してくれるに違いない、と期待していた人も多かったんです。ところが、関税の引き上げやイラン攻撃など、わざわざインフレや原油高を招くような政策ばかり進めてきてしまったと。ある意味、自業自得ですが「話が違うじゃないか!」という庶民の怒りが、トランプさんや共和党にいま向かっている状況ですね。
吉田:他にはどんな争点がありますか?
神庭さん:反AI感情も大きいかなと思います。トランプさんはAI推進派で最近は「スーパーインテリジェンス(SI)」なんて呼んでいますが、市民の間ではじわじわと反AI感情が高まってきています。ロイター/イプソスの世論調査では、有権者の84%が「AIは米国の労働者にとって脅威だ」と回答しました。「AIが制御不能になり人類の未来を脅かす恐れがある」と考える人は62%、データセンター建設の制限を支持する人が56%、トランプ政権のAIリスクへの対応を「不十分」と受け止める人が57%を占めています。物価高に対する反発も、AIへの不安も実は根っこのところでつながっていると私は思っているんですね。
吉田:それはどういうことでしょうか?
神庭さん:左右ではなく「上下」の分断こそが本質だということです。物価高であれば、政治家やエリート優遇にうんざりした人たちが、自分たちの方を向いて政治をやれと怒っているわけですね。庶民の間に既存の権威、エスタブリッシュメントを引きずり下ろしたいという強い願望があると。トランプさんはそういう人たちの心をぎゅっとつかんで支持を伸ばしてきたはずですが、何も変わらないどころか、かえって悪くなっているじゃないかと失望に変わりつつあります。AIに関しても「AIで儲かるのは巨大IT企業でしょう。電気代や騒音を負担するのは地元住民ですよね。不公平じゃないか!」という根深い不満があるわけですね。
ユージ:あと気になるのは、中間選挙後のアメリカと世界の行方。これどうなると思います?
神庭さん:「スターライトUSA…トランプさんは今、何を思う?」というのが焦点になっているかなと思います。下院、下手をしたら上院も民主党に取られてしまうと、予算が通りにくくなり、政府閉鎖も現実味を帯びてきます。国内政治がにっちもさっちもいかなくなると、トランプさんの関心は自然と外交・安全保障でレガシーをつくることに向かうと思うんですね。これまでは原油高で支持率が下がることが嫌だから、それを警戒してイランへの大規模攻撃を控えていましたが、中間選挙に負けて失うものがなくなったら、トランプさんはある意味「無敵の大統領」と化してイラン再攻撃に突き進んでいくかもしれません。そうなると、世界的な原油高、インフレがさらに加速してしまうので、日本も全然他人事ではないです。トランプさんは前々からノーベル平和賞への野心を隠してないですよね。功を焦ってウクライナ戦争でロシアに譲歩するとか、台湾問題で中国の要求をのんでしまう、といったシナリオも考えられます。北朝鮮やキューバも火種になり得るかなと思います。だからアメリカの選挙といっても、決して他人事ではないですし、「日本は今、何を思う?」という点が問われているかなと思います。
ユージ:いろんな意味でね、良くも悪くもアメリカの動きっていうのはやっぱりどこかで日本に影響が出てくるじゃないですか、これまでを見ても。アメリカは物価高で日本より賃金が上がっている印象があったんですけど、苦しいんですね。
神庭さん:その苦しさが庶民の間で耐えきれなくなって破裂しそうなのがいまの選挙ということなので、ここは日本への影響もしっかりウォッチしていただけたらなと思います。