26.11.04
12月からの電気・ガス料金の補助とガソリン補助金の縮小

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『政府、12月から電気・ガス料金を補助。その一方でガソリン補助金は縮小…その背景は?』
吉田:高市総理は先週木曜、12月から来年2月までの電気・ガス料金を補助すると表明しました。一方で、ガソリン価格の上昇を抑える補助金については、12月から縮小すると話しています。塚越さん、まずは、12月からの電気・ガス料金の補助について、詳しく教えてください。
塚越さん:まず今回の補助は、中東情勢の悪化を踏まえて、冬の暖房需要が増える時期の家計軽減策です。12月から来年2月の使用分の電気・ガス代の補助で、標準的な家庭だと3カ月間で合わせて7,000円程度の負担軽減になるとしています。当初は1月から3月の支援を検討していましたが、寒さが本格化する12月に前倒しされました。来年の3月については、エネルギー価格などを見極めて判断するということで、もしかしたら、追加の補助があるかもしれません。
吉田:その一方で、ガソリン価格の上昇を抑える補助金は12月から縮小するんですね?
塚越さん:そうなんです。現在、政府は全国平均のガソリン価格を1リットル170円程度に抑えるため、石油元売り会社などに補助金を出しています。ガソリンの補助は去年の終わりにガソリン税の暫定税率が廃止されることに伴って終了していましたが、中東情勢の影響もあり、今年3月に補助を再開しています。ただ、原油価格の高騰によって補助額は膨らんでいます。財源となっている基金からの支出は、3月から8月で1.2兆円となっていますし、先月末は1リットルあたりの補助額が52.4円と過去最高となっています。補助がなければ単純計算で220円を超えることになっていて、去年廃止された暫定税率があったらもっと高い計算になり、めっちゃ高いんですよね。財政的な問題もあることから、政府は12月からガソリン価格の目安を毎月5円ずつ引き上げる方針です。つまり、12月には175円程度、その後も毎月5円ずつ引き上げて、補助額を徐々に減らしていくということです。ただし、原油価格は変わるので、それによって実際のガソリン価格も変わるため、必ず5円ずつ値上がりするということではありません。
ユージ:ガソリン補助金の縮小は、どんな背景があるんですか?
塚越さん:最大の理由は、やはり財政負担ですね。政府は現在、ガソリンなどの価格を抑えるために、1日100億円を超えるペースで税金を使っていると説明しています。こうした補助金は2022年に始まったのですが、予算規模が累計で10兆円を超えていて、与野党からも見直しの声が上がっています。政府は、来年4月から食料品の消費税減税も目指していますので、財政への懸念もあるということで、長期金利も高い水準にありますし、市場からも政府の財政運営に厳しい目が向けられています。今回はそういうこともあって、ガソリンの補助を減らして、ほかの政策に財源を振り向けたいという事情もあります。電気はほぼすべての家庭で使われるため、ガソリンよりも恩恵を受ける人の対象が広く、物価の押し下げ効果が大きいといった専門家の指摘もあります。一方で、この補助金はもともと2022年の原油価格の高騰を受けて始まり、その後、ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあって拡充されました。ですが、基本的には一時的な措置ということなんですよね。でも、一度始めた補助金をやめるのはなかなか難しいということで、去年の3月には一度やめましたけど、また再開したという背景もありまして、補助金というのはですね、“始めるのは簡単でも、終わらせるのは難しい”ということで、個人的には、来年からの食料品の消費減税も2年間で本当に終了できるのか注目しています。
ユージ:12月からの電気・ガス料金の補助とガソリン補助金の縮小。塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:海外のガソリン価格を見ると、フランスなどヨーロッパでは日本の倍以上になっている国もあります。もちろん税金の違いもあるので単純に比較はできませんが、日本は補助金で価格をかなり抑えています。報道によると、官邸幹部は国民がある種の「支援慣れ」をしていて、補助されている認識を持ちづらくなっているので、補助を縮小することでありがたみを分かってもらう、といった狙いを語ったということで、ちょっとその言い方はどうなんだろうと思いますが、確かに今の価格に慣れている部分はあるかと思います。世界で何か問題があると補助が行われる。そうすると、海外の影響を自分事として受け取れなくなってしまうかもしれないので、補助がなくて価格が上がるのは困りますが、だからこそ、エネルギー高騰に振り回されないために、新しい商品を開発するなど、新しい消費スタイルを私たち自身が考え、その新しいことをするために政府が支援するという方法もあると思います。なので、少しずつガソリンの補助を減らしていくということですけれども、何でもかんでも補助をしてしまうと慣れてしまう部分もあるので、そういう意味では、私たちも本当に補助がなかったとして、今の社会が、今の世界がどうなっているのかを理解した上で新しいスタイルを作っていく、そこに補助を入れていくという考え方を私たちも頭の中に入れておかなければならないということですね。