24.04.22
転勤で減給は違憲、裁判官が異例の提訴

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。今日はダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
「転勤で減給は違憲、裁判官が異例の提訴」
吉田:先週、地域手当の支給額に差があることで転勤により給与が減額されたのは憲法に違反するとして三重県の津地裁に務める竹内浩史判事が、減額された給与の差額支給や国家賠償を求め、近く名古屋地裁に提訴することを明らかにしました。現職の裁判官が国を訴えるのは異例ということですが、もう少し詳しく神庭さん、このニュースについて教えてください。
神庭さん:憲法80条は「下級裁判所の裁判官の報酬は、在任中、減額することができない」と定めています。先日、弾劾裁判の時にも解説しましたが、裁判官は独立した存在として公正な裁判をしないといけません。時には国や行政の方針に反することもありますし、違憲判決を突きつけたりすることもあります。だからこそ、国会や内閣からの不当な干渉を受けることがないように裁判官の身分は憲法で手厚く守られているという建前ですが、裁判官は働く場所によって地域手当がつきます。手当の額は都市部ほど高く、地方は低い傾向にあります。このため地方転勤によって、実質的に収入がダウンしてしまうケースがあるということです。
ユージ:具体的には、どのくらい変わるものですか?
神庭さん:報道によると、竹内判事は2020年に大阪高裁から名古屋高裁へ移り2021年に津地裁へ異動したそうです。大阪高裁にいた時期に比べると、直近3年で合計240万円ほど給与が減ったということです。これは「憲法違反だ」ということで、減額分の支給と国家賠償を求めて国を訴えようとしています。
吉田:240万円!結構大きな額ですね。
神庭さん:そうですよね。裁判官など国家公務員の地域手当の支給額は、そのエリアの民間企業の給与などに対応して決められています。1級地から7級地まであり、基本給に一定の割合を掛ける形で算出されるのですが、1級の東京23区が最も高く20%、仮に基本給が50万円だとしたら10万円。2級の大阪市・横浜市は16%なので8万円。3級のさいたま市・千葉市・名古屋市は7.5万円。今回話題になっている津市は、仙台市や静岡市などと同じ6級。6%なので3万円ということになります。
ユージ:地域によってかなり差がありますね。
神庭さん:そうですよね。都市部と地方では当然、物価も違えば最低賃金も違います。民間企業でも都市部で勤務する人や、燃料代がかさむ寒冷地で勤務する人に手当を支給する仕組みはあります。一定の合理性がある仕組みだとは思います。この地域手当の額が、憲法で減額を禁じられた「報酬」に含まれるかどうかが裁判の焦点になりそうです。「貰っていたものが減額された」と考えるか、「都市部は生活が大変だし上乗せしますよ」と基本の報酬にオンされたものと考えるかによっても、捉え方が変わってくるかなと思います。
ユージ:神庭さんは、この問題についてどう考えていますか?
神庭さん:裁判官の異動には「広域異動手当」というものもあります。異動先が300キロ以上離れていれば、異動日から3年間(基本給+扶養手当)×10%が支給されます。60キロ以上300キロ未満なら5%。今回問題になっているのは地域手当ですが、異動で増える手当と減る手当があります。全体でプラスマイナスを見ないといけない。それとは別に、裁判官の働き方についても考えていかないといけません。
吉田:どういうことでしょうか?
神庭さん:朝日新聞の記事によると、裁判官不足のため地裁203支部のうち44支部には裁判官が常駐していない。判事補の欠員は常に2割前後で数年後には判事も減り始める可能性があるということで裁判官は転勤族で、3年に1度は転勤があります。これは癒着を防ぐ意味合いがあるのですが、家族がいる場合はついていかないといけないので大変です。かといって単身赴任を選ぶと、パートナーや子どもとの時間を犠牲にせざるを得なくなります。なので、法曹資格を持つ若手のなかには、ワークライフバランスの観点から裁判官を敬遠して、弁護士を選ぶ方も増えています。
ユージ:この場合は、どうしたらいいですか?
神庭さん:転勤の回数を3年に1度から5年に1度に減らすとか、報酬を抑える代わりに全国転勤でなく首都圏、関西圏、北海道、九州のようなエリア別採用を検討するとか、やりようは色々あります。「キャリタス就活」が来年3月卒業予定の学生に調査したところ、「転勤したくない」が76.2%で「転勤したい」は23.8%でした。ワークライフバランスへの考え方の変化を受けて、企業側もそもそも転勤をなくすとか転勤の際の手当を増額するなどの動きが広がっています。三菱UFJ信託銀行は去年10月から引っ越しを伴う転勤に一律50万円の一時金を支給する制度を始めました。いまや「転勤するなら金をくれ!」という時代になりつつあるのかもしれません。裁判官という職業柄、転勤をなくすことはできないと思いますので、少しでも負担を減らすとか転勤が損になるのではなくて、むしろお得になるようなインセンティブを考えた方がいいと思います。
ユージ:僕もそれは思いました。考え方によっては、まだ工夫できるという気はしました。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 22, 2024
TREND NET #ユジコメ①
テーマは「転勤で減給は違憲 裁判官が異例の提訴 」
僕は知らなかったのですが、裁判官の給与は地域によって1級から7級まで階級の棲み分けがあります。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 22, 2024
報道によると今回の例では、3年間で240万円 も給与が減ってしまったそうです。
仕事内容が同じなのであれば、住む地域によって物価は違いますが、全国各地で物価の高騰が続いているので給与の差をつけずに同額でいいのではないでしょうか。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 22, 2024
また、「キャリタス就活」 が来年3月卒業予定の学生に調査したところ、「転勤したくない」が 76.2%で、「転勤したい」は23.8% という結果となりました。
裁判官に限らず転勤がある会社の場合、転勤希望者にうまく活躍できるような環境づくりが大切だと思いました。#ワンモ