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23.05.02

デジタル通貨、デジタル円をめぐる議論
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日はダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【デジタル通貨、デジタル円をめぐる議論】

吉田:中央銀行が発行するデジタル通貨をめぐり、財務省は先月21日、制度面の課題などを整理するための有識者会議の初会合を開きました。日本銀行による「デジタル円」の実証実験と並行して議論を進め、年内をメドに論点を整理したい考えです。神庭さん、まず「デジタル円」というものについて教えてください。


神庭さん:「SuicaやPayPayと何が違うの?同じデジタルで使えるお金でしょ?」となった人もいると思いますが、これまでの電子マネーやキャッシュレス決済サービスというのはすべて民間が事業主体になっているんですね。デジタル円はあくまでも法定通貨、いまある現ナマの通貨をデジタル化するという話なので、最終的な元締めが国家になるわけです。民間のキャッシュレスサービスだと加盟店は手数料を払わないといけないし、利用者の側も加盟していない店では使えないといった不都合があります。その会社が潰れてしまった場合、アプリに入れているお金も返ってこないかもしれません。あと、あまり高額な買い物だと使えなかったりもします。デジタル円ではそういった不便が解消されるのではないかと期待されていて、紙幣や通貨を発行するコストも節約できますよね。


ユージ:聞いていると結構メリットが多そうなので、僕はいいんじゃないかなと思います。


神庭さん:ただ、便利すぎることが逆に問題になる可能性があって、いまの話を整理すると、どこのお店でも使えて、使える金額の上限が上がって、加盟店手数料や決済手数料、送金手数料がかからない、もしくは安くなると良いことづくめなんですが、でも便利すぎるということは、そのぶん今あるサービスを根こそぎなぎ倒していく破壊力を秘めているということの裏返しでもあるんです。民業圧迫になってしまう懸念があるということで、「銀行にお金を預けなくても、スマホにいくらでも貯めておけばいいじゃん。家に金庫を置いておく必要もないし」という使い方が広がってしまうと、銀行からしたら困ってしまうわけですよね。


ユージ:なるほど。今あるサービスを全部否定しちゃうかもしれないですね。


神庭さん:銀行は個人や企業から預かったお金をより高い金利で貸し付けて、その利ざやで稼いでいるわけですが、歴史的な低金利で利益を出しづらくなっています。だからこそ、紙の通帳の手数料をとったり、振り込み手数料を上げたり、口座維持のための手数料をとったりして、様々な形で収益を上げる道を模索しています。最近も三菱UFJ銀行が10月から、店頭の窓口での他行あての振り込み手数料を990円に引き上げると発表して話題になりました。ただでさえこういう状況なのに、手数料なしで決済できて、無料でいくらでも送金できる、しかも金額の上限もないとなったら、みんなわざわざ銀行を使う理由がなくなってしまいますよね。銀行からしたら踏んだり蹴ったりですし、国全体で見た時にも金融システムが不安定化してしまうという懸念があるわけです。


吉田:そういった問題を避ける方法は考えられているのでしょうか?


神庭さん:海外でも中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討が進められていますが、取引額や保有額に上限を設ける方向です。日本ではあくまでも検討段階ですが、実際やるとなれば同じように上限を設定するのではないかなと思います。官と民で役割分担していくことも想定されていて、銀行を中抜きして国が全部やってしまうと、それこそ民業圧迫になってしまうので、デジタル円を国民に届ける仲介機関として銀行にも絡んでもらって、そこで利益をあげてもらうといった形が考えられているようです。とはいえ、じゃあ上限いくらなら競合しないのか?銀行の役割がどう変わっていくのか?といった論点は残るかなと思います。


吉田:その他に課題はありますか?


神庭さん:プライバシーや犯罪への悪用のリスクにどう対応するか、ということですね。誰がいつ、どこで使ったか全部クリアにして国家から見えるようにしたら、犯罪は減るかもしれないですがとんでもない監視国家になってしまいます。一方で匿名性を高めすぎると、マネーロンダリングや脱税の温床になってしまうおそれもあります。個人情報保護と犯罪利用のリスクを天秤にかけながら利便性の高いサービスにしていくことが必要だと思います。あとは、日本だけでデジタル円をどうする?という狭い話をしていてもしょうがなくて、海外の中央銀行デジタル通貨の動向も注視していかないといけないです。


ユージ:それはどういうことでしょうか?


神庭さん:特に中国なんですけれども、中国は2014年からデジタル人民元の研究をしていて、すでに実験をスタートしています。取引額は約1.9兆円にも達しているということで、非常に進んでいます。しかも中国本土だけにとどまらず、香港やタイ、アラブ首長国連邦ともデジタル通貨の取引試験を始めたりもしています。世界銀行によれば、世界には銀行口座を持たない人が17億人いるんです。こういったところに、デジタル人民元が「便利ですよ」「手数料タダですよ」と入り込んでいって、世界の通貨の覇権を握ってしまう、というシナリオも考えられるわけです。そうやって基軸通貨としてのドルが存在感を失っていくと、ロシアへの制裁の時のように「SWIFTから締め出すぞ!」と言っても「僕らデジタル人民元使うからいいもんね」と言われて、制裁が無効化してしまうということも起きるわけです。なのでデジタル通貨の問題は、中国と欧米の対立も踏まえた世界情勢のなかで考えていくことが重要なのかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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