23.04.10
奨学金の対象拡大

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。今日は「BuzzFeed Japan」編集委員の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
【奨学金の対象拡大】
吉田:文部科学省は先週、少子化対策として大学生らを対象とする奨学金制度を2024年度から改正すると発表しました。そこで今朝は、「次元の異なる少子化対策」のなかで、奨学金制度はどう変わるのか、変えるべきなのか?今回の改正の内容と課題について、神庭さんに解説してもらいます。まずは、今回の改正点について教えてください。
神庭さん:大きく分けて3つあります。
①従来は低所得世帯を対象にしていた大学の授業料減免や給付型の奨学金について、中間層や子どもの多い世帯に拡大
②修士課程の大学院生向けに授業料の「後払い」制度を創設。在学中は国が授業料を立て替え、卒業後、年収が約300万円を超えた段階から返済が始まる
③貸与型の奨学金に関して、月々の返済額を抑える「減額返還制度」という仕組みがあって、現状では年収325万円以上の人しか使えないが、この上限を425万円に引き上げる
この3つが柱になっています。
ユージ:1番目に出てきた「給付型の奨学金」というのは、返済する必要がないということですか?
神庭さん:給付型の奨学金というのは、貸与型と違って返済する必要がない奨学金のことです。もともと、この給付型の奨学金を支給したり、授業料を減免したりする「修学支援新制度」という仕組みはあったんですが、利用できるのは年収が約380万円未満の世帯に限られてきました。この世帯年収の上限を約600万円まで引き上げることで、中間層も使えるようにするということなんです。ただ、年収600万円までなら誰でも使えるわけではなく、条件があります。その条件にも2パターンあって、1つは子どもが3人以上いる世帯の場合。この場合は約40万円分の支援が受けられます。もう1つが私立の理工農系の学生のケースで、こちらは支援額30万円ほどが想定されています。いまの修学支援新制度の対象が約60万人ですが、これに加えて3人以上の多子世帯が10万人、理工農系が10万人、あわせて20万人が新たに支援対象に含まれる見通しだということです。
吉田:今回の改正の狙いについても教えてください。
神庭さん:一口に奨学金といっても、大半は貸与型で要は学生ローンみたいなものです。返済の負担が重荷になって、結婚や子どもをつくることをためらう人も少なくないので、そこを少しでも和らげようということなんです。ただ、このやり方でどこまで少子化対策につながるか?奨学金の対象になるから子どもは3人産もう、という発想になるかは少し疑問ですね。
ユージ:ネット上での反応はいかがでしょうか?
神庭さん:どんどんやってほしいという声もあれば、支給対象も金額も不十分だと不満を訴える声もあります。なかには、理系の学生だけ支援するのは文系差別じゃないか?という批判もありますが、これは少しピントがズレていまして、私立大の理工農系に通う学生の場合、もともと私大文系に加えて授業料が高い傾向にあるので、差額を埋めるために30万円ほど出しましょう、という話なんだと思います。
ユージ:課題など、何かありますでしょうか?
神庭さん:形を変えた大学への補助金のバラマキになりはしないか?というのは、大いに懸念される部分です。旺文社 教育情報センターによると、国内の大学の数は1971年度の389校から、2020年度は795校とこの50年で2倍に増えているんですね。一方で、少子化で大学経営は厳しさを増しており、全国598校の私立大のうち、実に47.5%にあたる284校で、去年の春に入学者が定員割れしています。ひと頃騒がれた「分数ができない大学生」くらいならまだマシで、就労目的の偽装留学生を大量に受け入れていることが発覚し、大問題になった大学もありました。大学の本分はあくまでも教育ですから、そこが疎かになっているような大学、学生や保護者のニーズを満たせない大学は今後どんどん淘汰されていくし、そうあるべきだと思います。これが奨学金という形で間接的に国費が注入された時に、巡り巡って本来なら退場すべきゾンビ大学が生きながらえてしまう可能性があるわけなんです。
ユージ:なるほど…。
神庭さん:勘違いしてほしくないのは、給付型奨学金をやめろと言っているわけではなく、どんどんやってほしいと思っています。4~5年前に、東大生の親の6割以上は年収950万円以上だという記事が話題になりましたが、実態として富裕層の子どもしかいい大学に行けないとなると格差が固定され、教育機会の均等が果たされなくなってしまいます。金銭的に厳しい環境で一生懸命勉強している子たちにも「一発逆転」の機会が与えられるべきで、給付型奨学金はそのための大きな武器になると思います。ただ問題は配り方で、のべつまくなしに配るのではなくメリハリをつけてほしいんです。現在の就学支援制度は98%の大学・短大が対象になっていますが、例えば論文の引用数や優れた研究実績、教育成果を挙げている上位30%とか40%の大学に絞り込みをかけて、そのぶんだけ支援を手厚くする、所得制限を緩和するといった工夫はできないのかなと思います。出産一時金の引き上げをめぐって、出産費用の便乗値上げが起きているという指摘がありますが、授業料の減免に関しても全く同じことが起こる可能性があるので、大学の授業料の便乗値上げが起きないように、国としてしっかり監視していくことも大切だと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 10, 2023
今朝のテーマは「奨学金の対象拡大」
奨学金といえば、全額支給してくれるもの、何%かを支給してくれるもの、
減免してくれるもの、返済が必要なもの等さまざまな種類がありますが、
その対象を広げませんか、ということで今見直しが進んでいます。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 10, 2023
奨学金というと、返済することに苦労するという懸念点があるなか、
僕はやっぱり努力した人たちを評価するといった意味でも、
学費全額免除が理想かとは思います。
ただ、今回の見直しにもそれぞれ条件はあって、
奨学金の対象が拡大されることで心配していることもあります。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 10, 2023
それは、神庭さんも言っていたように、
今回の奨学金の対象拡大で支給額が増えることによって
学費も便乗値上げをするのではないか、ということです。
今後そういったことが起こらないためにも、奨学金をめぐる制度変更は
しっかりと監視していく必要があると僕は思いました。#ワンモ