23.03.27
文化庁の京都移転

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
【文化庁の京都移転】
吉田:文化庁は、東京・霞が関の本庁を京都市内に移し、今日から業務を開始します。中央省庁の地方移転は初で、伝統文化が根付く京都から、地域の視点を取り入れた政策立案や情報発信が期待されています。またその一方で、東京に残る部署や他省庁との連携、国会対応に支障がないのか、果たして本当に地方創生につながるのか、懸念する声も上がっています。改めて、今回の移転の経緯から教えてください。
神庭さん:文化庁移転の直接の引き金になったのは、安倍政権が2014年、東京一極集中の是正策として政府機関の地方への移転を打ち出したことなんです。毎日新聞によると、京都含め42の道府県が69機関の誘致に手を挙げたものの、ほかの省庁との連携がネックになってほとんどが断念という事態になりました。「全面移転」が実現したのは文化庁の京都だけで、それ以外は消費者庁の機能の一部を徳島県、総務省統計局の一部を移すにとどまったそうです。
ユージ:今回の移転ですが、現在の霞ヶ関の全機能を京都に移すということなんですか?
神庭さん:「全面移転」と言いつつ、実際のところ文化庁に9つある課のうち京都にくるのは5つの課だけなんです。「著作権課」など4つの課は東京に残ります。報道によれば、5月15日に本格稼働し、ゆくゆくは非常勤を含め全職員約590人の3分の2にあたる約390人が京都を拠点に働くことになるそうです。宗教法人を所管し、旧統一教会に対する調査などで大忙しの「宗務課」も移転対象になっているんですが、旧統一教会関連の業務が一区切りつくまでの間、当面は東京に職員が残って仕事を続けるということです。
吉田:さきほど、東京一極集中の是正策という話がありましたが、具体的にはこの移転にはどんなメリットがあるんですか?
神庭さん:京都には全国の国宝の20%があると言われていて、重要文化財もたくさんあります。そういう歴史・文化の現場に近いところに身を置くことで、文化財の保存・修復であったり、観光資源として活用していくうえでシナジーが期待できるかもしれません。京都の地元との人材交流もしやすくなりそうですよね。あとはすぐにわかりやすい利益が出るわけではないですが、大災害で首都圏が甚大な被害を受けた際に、地方に政府機関を移転しておけば一定のリスクヘッジにはなるという点はあると思います。
ユージ:一方でデメリットはありますか?
神庭さん:デメリットとしては、京都と東京の2拠点になることによる非効率が挙げられます。2020年度のシミュレーションで、すべての仕事のうちリモート対応できたものは25.6%にとどまりました。なかでも国会議員への「ご説明」はリモート率がたったの12%。9割近い場面で対面での対応を強いられてしまいました。予算に関する業務も85%以上が対面だったそうです。文化庁は「特に重要な案件、迅速な対応が必要な案件、機密性の高い案件、複雑な協議・交渉が必要な案件等については、リモートでは十分な対応が困難と説明しているんです。そうなると、必然的に出張が増えます。仮にその都度東京に出張した場合、勤務時間のロスは次長クラスで年間210時間、審議官で年424時間、課長・室長クラスで240時間にもなるそうです。時事通信によると、年間4700万円の出張費がかかる見込みだということです。
吉田:あと、省庁の移転が地方創生につながるのか、という疑問もありますが…。
神庭さん:そもそも論ですが、地方創生を役所の移転で実現しようというのは、ちょっとピントがズレていると思います。本来は地方で若者が就業できるような仕事をつくる、産業を生み出すのが最優先のはずです。官僚たちが地方の飲み屋でお金を落とす経済効果なんて、たかが知れています。加えて、最近はただでさえ優秀な学生のキャリア官僚離れが進んでいて、就職先が「霞ヶ関」ではなく地方になった場合、「じゃあいいです」という人が出てこないか心配なところです。
ユージ:この省庁の移転について、神庭さんはどう思いますか?
神庭さん:スモールスタートで実験的にまずやってみる分には、文化庁は規模として悪くないのかもしれません。実際、運用してみたら上手くいかない部分、課題が沢山浮かんでくるはずなので、割に合わないなとなったらスパッとやめればいいと思います。
ユージ:ほかの省庁に広がっていく可能性はありますかね?
神庭さん:農水省を北海道に持って行ったらどうかとか、観光庁を沖縄に、とか妄想するぶんには面白いですが、現実にはなかなか厳しいです。根本的な問題として、国会議員への「ご説明」や国会の答弁対応などが官僚にとって大きな負担になっています。内閣人事局の調査によれば、官僚たちが答弁の作成を終える平均時刻は、午前3時前というド深夜だったそうです。こういう状況だと、いくら省庁を地方に持っていこう、東京一極集中の是正だ!と叫んでみたところでぜんぜん現実的ではないです。国会対応や議員対応の業務を減らして、できるだけオンラインに切り替えていくという前提があって初めて、移転を検討するスタートラインに立てるのかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 27, 2023
今朝のテーマは「文化庁の京都移転」
現在、各省庁は東京に集まっていますが、
これを全国的に分散したら地方創生につながるのではないかといわれると…
僕は各省庁の分散を理由に
それぞれの地域が盛り上がるわけではないと思っています。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 27, 2023
例えば、各省庁が移転せず東京に集中したままでも、
それぞれの地方では別の理由で盛り上がることは可能でしょう。
一方、移転で分散されることによって、
出張による資金面や時間がかかることで
各省庁の連携がスムーズにいかなくなることも出てくるかと思います。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) March 27, 2023
リモートが今後確立していけば、
全国各地への分散もありだとは思うのですが、
今の段階だと、リモートでは連携しきれない部分が出てくるかもしれません。
距離が近いからこそ生まれる連携もあるでしょう。
今回の文化庁の京都移転に関しては、今後も注目していきたいです。#ワンモ