22.11.21
ワールドカップと人権問題

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【ワールドカップと人権問題】
吉田:ワールドカップといえば、120万人が訪れ、50億人が視聴すると見込まれる世界最大級のスポーツの祭典ですが、その一方で外国人労働者に対する人権問題など、批判的な報道も相次いでいます。神庭さん、改めて、どういった批判が起こっているんでしょうか?
神庭さん:ヨーロッパを中心に、カタールの人権問題に対する批判が高まっています。1点目は、外国人労働者の扱いです。カタールの人口は280~290万人ほどですが、カタール国籍を持っているのはそのうちの1割で、残りの9割は外国人だと言われています。ワールドカップ開催にあたって、カタールはスタジアムや空港ホテルなどのインフラを整備してきましたが、過酷な暑さや労働環境のなかで多くの外国人労働者が犠牲になったと言われています。イギリスの新聞ガーディアンは、10年前にワールドカップ開催権を獲得して以降、インド、パキスタン、ネパールなどからの出稼ぎ労働者がカタールで6500人以上死亡した、と報じています。ただ、カタール側はその間にW杯関連の業務では3人しか死んでいないと真っ向から否定しているんですね。
吉田:先ほど1点目と言っていましたが、ほかにも人権問題があるんですか?
神庭さん:2点目の問題はLGBTQ、性的少数者の人たちに対するスタンスです。イスラム教で同性愛がタブー視されていることもあり、カタールではほかの中東諸国と同じく、同性愛が禁じられています。在カタール日本大使館はサイト上で注意事項を呼びかけており、それによると、「カタール国内では、同性愛者や未婚者カップルの同室宿泊は違法とされていますが、 W杯期間中に限り、同国への訪問やホテルでの宿泊に制限はありません。ただし公共エリアでのスキンシップはトラブルになる可能性があるため控えてください。」とのことです。最悪、身柄拘束の可能性もあるということなんです。
ユージ:そういった人権問題に対して、さまざまな反応、発言も話題になっていますよね。
神庭さん:大物歌手のロッド・スチュワートは、約1億4000万円の高額ギャラで開会式への出演オファーを受けましたが、「行くのは正しくない」と断りました。一方、年間20億円以上の契約金でカタールのアンバサダーを引き受けたベッカムは、「金で魂を売った」と叩かれています。フランスやスペイン、ドイツではパブリックビューイングやスポーツバーでの中継を見送る動きも広がっています。
吉田:出場する選手たちからは、どういった反応があるんでしょうか?
神庭さん:報道によると、イングランドやフランス、ドイツ、オランダの代表のキャプテンは、多様性や反差別の意味を込めて「One Love」と書かれた腕章をつけるそうです。デンマーク代表は、建設現場で亡くなった労働者を追悼するために黒のユニフォームを用意したということです。オーストラリア代表はカタールの人権状況に抗議するビデオメッセージを公開するなど、欧米の選手の間では批判の声が広がっているんですね。
ユージ:神庭さんはどう思いますか?
神庭さん:この問題を読み解くキーワードは2つあると考えていまして、1つは「スポーツ・ウォッシング」。様々な問題を抱えている国が、国威発揚のために大金を投じて大型イベントをやって、色々あったけど、最後はよかったね!ときれいにまとめちゃうことを「スポーツ・ウォッシング」と言います。北京五輪しかりですが、スポーツを利用してネガティブな面を洗い流してしまうことから「スポーツ・ウォッシング」と言うんですね。そういう「ウォッシング」を許さないためにも適切な批判を加えていくことは大切だと思います。
もう1つのキーワードが「オリエンタリズム」。これは、エドワード・サイードという人が批判的に考察した概念。先進的なヨーロッパに対して、アジアやアラブを「後進的」で「遅れた」存在であるとみなす、ヨーロッパ中心主義的な考え方のことです。欧米によるカタール批判はもっともな部分がありますし、僕もカタールの人権状況は改善されるべきだと思いますが、一方で、欧米からの批判のなかに「これだからカタールは…」と小馬鹿にしたようなオリエンタリズム的な眼差しが混じっていないか、気になるところなんですね。共同通信によると、FIFAのインファンティノ会長はおとといドーハで記者会見し、カタールへの批判報道に「ひどく不当だ」と反論しました。特にヨーロッパのメディアに対して「私も欧州人だが、批判する前に3000年分の歴史を謝罪するべきだ」と述べました。強い言葉ですが、一理あると思っていて、欧米が植民地支配について謝罪したことは過去ほとんどないわけで、ダブルスタンダードをよく突いているなと思います。今回のワールドカップに限らず、ヨーロッパの強豪クラブチームにも中東の潤沢なオイルマネーがじゃぶじゃぶ流れ込んでいるんですね。そういう現実を無視して普段は陽気にサッカー観戦を楽しみながら、いざワールドカップとなったら急に騒ぎ出す欧州メディアに対しても、ちょっとどうなの?と違和感を抱く部分があるのは事実です。ワールドカップを通じて、いろいろなことが見えてきます。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 21, 2022
テーマ「ワールドカップと人権問題」
ヨーロッパを中心にカタールの人権問題に対する批判が高まっています。
今回のワールドカップ開催にあたって、
インフラの整備や過酷な暑さの労働環境のなかで、
多くの外国人労働者が犠牲になったといわれています。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 21, 2022
しかしこういった人権問題は今回に限ったことではなく、
以前から問題として取り上げられていることです。
だからこそ、
大きなイベントがある時ばかり表立ってしまうのはよくないと思います。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) November 21, 2022
人権問題には、これからもしっかりと向き合っていかなければなりません。
ただやっぱり今回のメインは、世界でスポーツを楽しむワールドカップです。
さまざまな問題は残っていますが、まずは無事に、
ワールドカップが最後まで事故なく終わることが1番だと僕は思います。#ワンモ