22.08.15
“新冷戦”時代の安全保障を考える
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。
“新冷戦”時代の安全保障を考える
ユージ:今日は「終戦の日」ということで、新冷戦時代においての安全保障、平和を守っていくために、日本はどう行動していくべきなのか?神庭さんと考えていきたいと思います。
吉田:さっそくですが、改めて「戦後の国際情勢」についておさらいしていただけますか。
神庭さん:1989年まで、アメリカと旧ソ連が大量の核を抱えてにらみ合う冷戦が続き、ソ連の崩壊とともにポスト冷戦期に突入しました。2001年の911テロ以降は、アルカイダやイスラム国(IS)など国際テロ組織に注目が集まり、「国家対国家」の戦争というのは、なんとなく後ろに退いたような印象もあったんですけれど、アメリカが「対テロ戦争」に精を出している間にも、中国は覇権を目指して着々と経済力をつけ、軍備を拡張してきました。そして、ついにはアメリカが「唯一の競争相手」と認めるまでになったんですね。特にここ数年は米中対立が激化していて、もはや米中「新冷戦」時代に突入したと言ってもいい状況になっています。ロシアのウクライナ侵攻もあり、少し影が薄くなっていた「国家対国家」という構図が、再び前面に押し出されてきた感がありますね。
ユージ:そんな中、日本を取り巻く情勢ですが、こちらはいかがですか?
神庭さん:台湾危機が深刻化していて、中国がミサイルを打つなど緊張がエスカレートしています。尖閣周辺では、連日中国船が確認されていますよね。北朝鮮は核実験を繰り返して、相変わらずミサイルをバンバン打っています。北方領土問題を抱えるロシアも、ウクライナ侵攻に対する日本の経済制裁に反発を強めています。日本企業が出資する石油・天然ガス事業「サハリン2」を、事実上接収するような大統領令を出すなど、無茶な行動に出始めているんですよね。日本は四方八方を「厄介なお隣りさん」たちに囲まれて、あちこちで火種がくすぶっているような状態と言えるんじゃないかと思います。
吉田:そんななか、最近ニュースで「敵基地攻撃能力」という言葉をよく耳にしますが、これはどういうことなんでしょうか?
神庭さん:岸田総理は1月の施政方針演説で《「敵基地攻撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します》と話したんですね。この「敵基地攻撃能力」というのは、ミサイルが自国に飛んできてから撃ち落とすのではなく、その前段階で相手国のミサイル基地を叩く、という考え方です。昔からある議論ではあるんですけれど、中国や北朝鮮がミサイル開発を加速させるなかで、改めて注目が集まっているんですね。なかでも、極超音速ミサイルは軌道が変速的で、探知や迎撃が難しいと言われています。相手国が発射作業に着手した時点で、基地を攻撃しないと間に合わないんじゃないのか?ということが議論されているわけです。
これに関しては与野党で意見が分かれていて、与党でも公明党は慎重な姿勢でした。そんな公明党への配慮もあって、自民党は4月に「敵基地攻撃能力」ではなく「反撃能力」に変えよう、という提言を出したんですね。これは非常に馬鹿馬鹿しい話で、本質的ではないと思います。戦後日本の防衛戦略は、アメリカが「矛」になり、日本は「盾」になるという役割分担でやってきました。それを抜本的に変える必要があるのであれば、小手先の名称変更などでなく、憲法改正や集団的自衛権の是非も含めて、真正面からしっかり議論をしていく必要があるのではないかと思いますね。
ユージ:平和を守っていくために、日本はどう行動していくべきだと思いますか?
神庭さん:そうですね。「平和である」というのは<be動詞>というよりは、「平和にしようとする」という<一般動詞>でなければいけない、一生懸命平和にするために努力しなければいけないと思うんですが、日本は戦後長らく、アメリカを用心棒代わりにして「軍事関係はアメリカさんお願いします」という形でやってきました。冷戦期はそれで良かったですし、実際その作戦で高度経済成長を実現できたんですね。ただ、そんな「お任せ安保」も、そろそろ限界にきているじゃないかな、と思います。
最近、アメリカの元国防省の高官が、日本の防衛費をGDPの1%から3%へ、3倍に引き上げるべきだ、と日経新聞のインタビューで答えて話題を呼んだんですけれど、これは非常に情けない話でして、僕はサイバー防衛の強化も含め防衛費は増やすべきだと考えていますが、日本が自分の頭で考えてそう決断するのと「アメリカさんに言われて仕方なく」決めるのとでは、天と地ほどの差があるわけです。3%という数字の根拠もよくわからないですよね。
福沢諭吉は『学問のすゝめ』の中で、「一身独立して一国独立する」と説きました。平和を守るというときに、その主語を「アメリカ」ではなく「日本」に置かないといけないと思います。「誰かに守ってもらう」ではなく「自分たちで守る」という発想に切り替えていかないと、もしもウクライナのような事態になったときに、総崩れになってしまうのではないか、という危機感があります
安全保障について考えること、議論すること自体が「戦争につながるのでは…?」ということで、変にタブー視されてきたところがあるんですけれど、これは本当に良くないと思っていまして、むしろ戦争を防ぐためにこそ、積極的に議論していくべきだと思います。米中双方と経済的に大きな結びつきがある日本だからこそ、危機がエスカレートしないように、偶発的な衝突を避けるために果たせる役割があるのではないかと。
政治学者の千々和泰明さんという方が、朝日新聞のインタビューで「戦争終結について考える議論が日本には欠けている」と指摘したんですね。戦争を未然に防ぐ努力ももちろん大事なんですけれど、同時に「戦争の終わらせ方」についても平時からしっかり考え、備えておくことが大事だと思いました。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 15, 2022
テーマは「“新冷戦”時代の安全保障を考える」
今日で終戦から77年。戦争を体験した方が少なくなってきている今、当時の話を聞ける機会も減ってきています。ただ、その方々から直接お話を聞いた方はたくさんいて、そこから語りつないでいくことはできます。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 15, 2022
争いを起こさないことはもちろんですが、アクションを起こさないことが平和ではありません。
悲しい出来事を語りつなぎ、同じことはもう起きてほしくないと思う気持ちもアクションのひとつです。
終戦の日の今日は、改めて戦争当時の気持ちを考え直す日なのではないでしょうか。#ワンモ