26.04.14
映画の「ネタバレ記事」をめぐる異例の刑事裁判

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝のテーマはこちら!
映画の「ネタバレ記事」をめぐる異例の刑事裁判
吉田:映画の内容を詳細に書き起こした、いわゆる「ネタバレ記事」をめぐる裁判が注目を集めています。そこで今朝は、裁判の争点やネタバレの是非について、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:まず、注目されているのは、どんな裁判でしょうか?
神庭さん:起訴状などによると、会社役員の男性とフリーライターの男性が、映画『ゴジラ-1.0』やアニメ『オーバーロードⅢ』の第1話について、登場人物の名前、動作、セリフ、情景、場面展開などを文字で説明した記事をサイトに公開して著作権を侵害したとされています。このうち、『ゴジラ-1.0』に関しては著作権法上の「翻案」にあたるか否かというのが争点の1つになっているんです。
吉田:翻訳の翻に、案内の案と書いて「翻案」。これは何でしょうか?
神庭さん:翻案というのは、元の作品の表現の「本質」を残しながら、別の形に作り替えることです。わかりやすいところだと、小説を映画化する、ドラマ化するといったケースがあてはまるかなと思います。著作権者の許可なく翻案をした場合、10年以下の拘禁刑か1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。法人の場合は3億円以下の罰金ということで結構重いんですね。翻案について、2001年の最高裁判例にはこう書かれています。《既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為》簡単に言うと、元ネタの「らしさ」を残したまま作り替えることを言うんですね。
ユージ:そして、今回の裁判では問題になっているのは一体何でしょうか?
神庭さん:読売新聞によると、弁護側は「文字だけでは映画の本質は伝わらない」として無罪を主張。迫力のある映像とか俳優の演技こそが表現の本質だとして、『ゴジラ-1.0』を法廷で流すように求めたんですね。結果、実際に裁判所でゴジラの一場面が上映されるというちょっと熱い異例の展開を迎えました。一方の検察側は「映像がなくても映画の内容を最初から最後まで詳しく書けば本質的な特徴を感じられる」ため翻案にあたる、つまり有罪だと考えているということなんですね。
吉田:今回の裁判はあさって16日に判決が言い渡される見通しです。ポイントはどの辺になるでしょうか?
神庭さん:著作権法では「事実」とか「アイデア」は保護されません。映画の「表現」の本質が、文章で再現されていると言えるのか?ネタバレ記事によって、どの程度の経済的な損害が出たのか、あるいは出ていないのか? この辺が焦点になってきそうです。過去には映画を10分程度の短い動画に編集した「ファスト映画」をめぐって、著作権法違反で有罪になった3人に対して、民事で5億円もの損害賠償を命じる判決も出ています。ネタバレ記事が果たして「テキスト版ファスト映画」とまでいえるのかどうか、裁判所の判断が気になるところです。
ユージ:今回、もし有罪判決が出たら、例えばSNSで映画の感想をつぶやくっていう人も中にはいたと思うんですけど、注意が必要になってくるんですかね?
神庭さん:そこまで気にする必要はなくて。普通に感想を投稿しているだけなら、過剰反応して萎縮する必要はありません。ただ、アクセス集めとか収益目的で「あらすじ紹介」「ネタバレ考察」みたいな記事を大量公開している業者とか、解説系YouTuberなんかは影響を受ける可能性もありますね。ただそもそも「ネタバレ記事」「ネタバレサイト」という言葉自体がちょっとミスリードだなと私は感じているんです。
ユージ:それはどういうことでしょう?
神庭さん:ネタバレっていうのは、そもそもドラマとか映画のオチを目にしてガッカリする、本来は観客にとってネガティブな話なんですよね。私も『じゃあ、あんたが作ってみろよ』というドラマが大好きで、録画で見ようと思って楽しみにしていたら、ニュースサイトで結末をバラすような記事が流れてきて、おいおい!となったことがあるんですけど、これはマナーの問題だと思うんですよ。ただ、俗に言うネタバレサイトの多くって、読者が望んでネタバレされにいっているというか。「タイパ良く映画を見た気になりたい」「流行についていきたい」みたいな欲求を満たしているわけですよね。ここでダメージを受けるのは、読者とか観客よりどちらかというと「映画の製作サイド」。場合によっては「一生懸命つくったのにタダ乗りしやがって」となるかもしれないですね。こちらはマナーじゃなくて法律の問題なわけですよ。「ネタバレ」という言葉によって、マナーの話と法律論が少し混同されてる部分があるかなと思いますね。
吉田:一連の問題、神庭さんはどう見ていますか?
神庭さん:映画といっても、別に大どんでん返しがあるとかものすごい結末があるみたいな作品ばかりじゃないわけですよ。淡々とした静かな映画だとしても、仮に「ファスト映画」ばりに本編を見る必要がないくらい、事細かに書き起こしたら、著作権侵害にあたる可能性は出てくると思います。逆に、映画のオチとか犯人をSNSやブログに書いたとしても、引用の要件を満たして論評をしている限りは、著作権法上の問題にはなりません。例えばですけど「考察を深めてもう一度映画を見返したい」とか「家族と見て大丈夫かどうか、気まずいシーンがないか事前に確かめたい」といったニーズもあるわけですよね。「あらすじを書くこと=悪」ではないということは注意が必要。ネタバレという言葉に引っ張られて、この辺りをごちゃごちゃにしてしまうと良くないんじゃないかなと思いますね。
ユージ:それでいうと僕はWBCがあったとき、家帰って試合見たいなとワクワクしてたらメディアニュースで「日本が何対何で勝ち!」というのが出ちゃって「えっ」てなってましたけど、あれはいいんですね。
神庭さん:あれは一応、法律上はOK。マナーは良くないかもしれないけど。
ユージ:わかりました!