25.08.28
日本の公的医療保険は3本の矢、バランスはどうなる?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「日本の公的医療保険は3本の矢、バランスはどうなる?」
吉田:自営業者などが加入する「国民健康保険」の令和5年度の決算がまとまり加入者の減少などで、保険料の収入が10年連続で前年度を下回り、実質的な収支は1,803億円の赤字となりました。そこで、日本の公的医療保険の現状と、これからについて塚越さんと考えます。
ユージ:塚越さん、まず「国民健康保険」の赤字について教えてください。
塚越さん:今回は令和5年度、つまり2023年度の情報がまとまりました。国民健康保険、つまり「国保」は都道府県や市区町村が運営しており、自営業者等が加入するものですが、加入者は前の年度より104万人減って2,309万人となりました。当然、保険料の収入も前の年度から816億円減って2兆3,697億円。依然として大きな額の収入ではありますが、10年連続で前の年度を下回っています。さらに実質的な収支は1,803億円の赤字で赤字も3年連続となります。これが2023年度の数字なので、これ以降の数字も厳しくなるかなと思います。実際、1人あたりの保険料額は前の年から1,600円ほど増えて10万997円と、はじめて10万円を超えました。この背景には、国保の加入者の4割以上が65歳から74歳が占めていることが挙げられます。75歳以上は別の保険になります。この65歳から74歳は、医療費も高くなる一方で、退職者など、どうしても加入者の平均所得が低くなるので、こうした層が増えると財政的に厳しくなるということです。
吉田:国保の加入者数の減少は、なぜ起きているのでしょうか?
塚越さん:これを説明するために、保険制度について確認する必要があります。日本には主に3つの保険制度があります。1つ目が、今回の国保。自営業やフリーランス、非正規雇用者や会社を退職した人などが加入しています。2つ目が、会社勤めの人などが加入する「被用者保険」。そして3つ目が、75歳以上の全員を対象とする「後期高齢者医療制度」となります。日本の保険制度は、この3つが調整補完する構造になっています。その上で、まず戦後のベビーブーム生まれのいわゆる「団塊世代」。人数が多い世代ですが、去年の段階で全員75歳以上になって、「後期高齢者医療制度」の対象にうつりました。他方で、働き方改革の一環で、短時間の労働者などが国保から「被用者保険」(会社勤めの人の保険)に適応が拡大しているので、こうした理由で国保の人数は減っています。
ユージ:国保の加入者の減少や赤字は、どんな影響がありそうですか?
塚越さん:やはり加入者が減って、相対的に医療費のかかる高齢層が多くなると、どうしても保険料負担は増えていきます。そうなると、所得の低い人が多い国保は、支払いが困難になるケースも出てきます。国保を運営している自治体では、赤字補てんのために一般会計から繰り入れる必要もあって、そうなると自治体の財政も圧迫されます。国からの支援や補助金など、税金による支援も増えていくことにならざるを得ません。もう1つは、現役世代の多い「被用者保険」などからも、法律で決められた枠内ですが「支援金」という形で色々支え合う仕組みになっています。3つの保険が基本的にあって、余裕のあるところから手伝うという形になったりするので、このあたりは問題になっています。
ユージ:日本の公的医療保険のバランスについて、どう見てますか?
塚越さん:先ほども申し上げたとおり、3つがバランスに伴ってできていて基本的には、世界的にみて水準の高いものが評価されていて、日本が誇るものです。キープするのは、難しいかなというところです。例えば、75歳以上の「後期高齢者医療制度」は、3年前の10月から、それまで1割だった負担が一定の所得がある人は2割になりましたし、どこかで負担を増やさないといけないということで、こういうことがおきました。他方で、こうした後期高齢者についても、国保や被用者保険の現役世代の保険料で支援金という形で入れるということになっています。なので、そうなっているとなかなか現役世代としては不満が出ているということです。我々が働いたのがそっちにいっちゃうじゃないかということで、今回は国保が厳しいという話になっていますが、全体のバランスの中でどこに皺寄せがくるんだということです。高齢者も負担が増えますし、現役世代のお金もそういうところに回さないといけない。人口バランスも問題ですが、なかなか解決が難しいです。なぜなら、数十年前から少子化対策しないとこうなることが分かってたわけですよね。高齢の人が増えて、現役世代が少なくなる。数十年前から分かっていたのですが、手をうてなかったということです。なかなか、この3つの保険を1本化するという議論もありますが、それも難しいですし保険料がこれからも増えていきます。これは、全体でいうとやっぱり国の制度、政策の欠陥というところがあるので少なくとも現役世代と高齢世代の世代間の対立を煽るようなことは制度の問題もあるので、そこは覚えておいて欲しいです。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 28, 2025
『日本の公的医療保険は3本の矢、
バランスはどうなる?』
自営業者などが加入する国民健康保険の決算がまとまり、保険料収入が10年連続で前年を下回り、全体として赤字だったことがわかりました。今後も減少が続く見通しです。#ワンモ
TREND NET②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 28, 2025
保険は、いざという時に助けてもらうための制度です。
制度自体が赤字だと、「本当に助けてもらえるのか」という不安や不信感から
納付しないという“負の連鎖”は避けたいところです。 #ワンモ
TREND NET③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 28, 2025
少子化が進み、現役世代が減れば、さらに1人あたりの負担は重くなります。
自分たちが高齢者になったときに、十分な給付が受けられないかもしれないという中で、今払う若い世代は、自分が高齢になった時への“投資”のような気持ちで…
TREND NET④
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) August 28, 2025
日本の医療保険は世界的にみても評価されてきた仕組みです。
現役世代が高齢者を支える制度自体は悪くないと思います。
だからこそ「若者」と「高齢者」の対立を生まないシステム設計のために、
医療保険の役割を見直し、建設的な議論をしてほしいと思いました。#ワンモ