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24.11.19

高額療養費制度、上限額の引き上げについて
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「高額療養費制度、上限額の引き上げについて」

吉田:医療費の患者負担を一定の限度額に抑える「高額療養費制度」に関して、厚生労働省は負担の上限を引き上げる検討を始めました。神庭さん、まずは「高額療養費制度」の基本的なところを教えて下さい。


神庭さん:医療費は、69歳以下が自己負担3割で70〜74歳が原則2割。現役所得のある方は3割、75歳以上の方が原則1割で、所得によっては2割~3割負担の方もいる状況です。この自己負担分が一定額を超えて高額になってしまった時に、限度額を超えた分について、後から払い戻してもらえる制度が「高額療養費制度」です。1カ月ごとの限度額が年収に応じて定められています。突然の大きな病気、手術などで医療費負担が膨らんでしまうリスクをヘッジできるありがたい制度になっています。


ユージ:そうですよね。それの負担を引き上げようという動きですが、具体的には、どれぐらい上げようとしていますか?


神庭さん:朝日新聞の報道によると、69歳以下ではこんな案が検討されているそうです。住民税非課税世帯の場合、現状の月額3万5,400円から900円のアップ。年収約370万円までの場合は、5万7,600円から2,400円のアップ。低所得世帯ではそこまで大きな負担増ではありませんが、所得が上がるに連れて、引き上げ幅が大きくなっていきます。年収約370万~約770万円の場合は、月額8万100円+αの現状から5,400円アップ。年収約770万~約1,160万円の場合は、16万7,400円+αから3万3,300円アップ。年収約1,160万円以上の場合は、25万2,600円+αから5万400円アップしています。医療を受ける側からすると限度額、上限額は低い方が、ありがたいわけですが、上から2つの所得区分に関しては一気に20%跳ね上がっちゃうということです。


吉田:区分によっては、かなり上がりますね。これはやはり、高齢化・医療費の問題ですね?


神庭さん:その通りです。膨らみ続ける医療費の抑制が最大の目的です。日経新聞によれば、高額療養費制度が適用されるケースは年々増えており、2021年度の支給総額は約2.85兆円。2011年度からの10年の間に、件数で3割、金額にして4割も増えています。高額な新薬が続々と保険適用されていることや、生活習慣病が広がって、薬を継続的に使う人が増えていることが影響しています。今の制度になったのが2015年で、その時に比べれば収入も上がっているから、上限額も合わせて引き上げようということのようです。「103万円の壁」見直しとか国民負担が減る方向のインフレ対応は、全然進みませんが、こういう国民負担が増える方向の話となると光の速さで進んでいく状況があります。


ユージ:確かに!ただ、現役世代の負担を減らそうという願いがあると報じられていますよね?


神庭さん:どの報道を見ても「現役世代の保険料負担の軽減が狙い」だと書かれているので、厚労省・政府の側からそういうレクチャーがあったのかなと思いますが、正直「本当かな?」と疑っています。というのも、高額療養費制度の上限額の引き上げ幅は住民税非課税世帯など低所得層は薄く、所得が多い層ほど大きく引き上げられる案になっています。ただ、昨日も説明した通り、住民税非課税世帯の中で65歳以上の高齢者が74.7%を占めるという試算もあります。現役世代はフローの収入はある一方で、ストック、資産の蓄えは少ないです。高齢世帯は、フローは年金だけでも、長年の蓄えとして資産は多く持っている傾向にあります。ということは「現役世代のためだ」と言いながら、相対的に高齢世帯の負担は薄く、現役世代にばかり多くの負担を求めることになるのではないか?ということです。


ユージ:ここでも、世代間格差の問題が出てきましたね。


神庭さん:その通りで、政府は「応能負担」だ。支払い能力がある人には多めに払ってくれと言っています。ただ、「支払い能力」としてフローしか見ていないから、結果として現役世代に不利な制度になっています。年金収入が100万円で1億円の資産がある高齢者と、年収770万円で貯金が100万円の会社員がいたとして、急に倒れて多額の医療費がかかってしまった場合に、会社員の方がずっと多くの負担を求められることになるのは少し変だと思います。もう少し公平な制度設計にして欲しいなと思います。


吉田:高額療養費制度の上限額の引き上げ、神庭さんはどう見ていますか?


神庭さん:現役世代の保険料負担軽減のためだと言うのなら、実際にいくら安くなるのか示して欲しいです。高額療養費制度をあてにして、民間の医療保険の契約は必要最小限にするなど支出を抑えている人は結構います。公の制度があてにできなくなれば、民間保険への支出が増え、本末転倒なことにもなりかねません。「医療費を抑える」という大目標に反対する人はそんなにいないと思います。ただ、やはり順番がおかしくて、現状で9割引、8割引になっている高齢者医療費を改めて、現役世代と同じ3割負担に統一するなど、先にやるべきことがあるのかなと。よく言われる話ですが、病院が井戸端会議の場になったり、サロンのようになっている状況をまず解消して欲しいなと思います。


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