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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.05.28

衆議院を通過した日本版DBS
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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。


今日はダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。神庭さんが注目した話題はこちらです。


「衆議院を通過した日本版DBS」

ユージ:子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を、雇用主側が確認する「日本版DBS」創設法案が先週、衆議院本会議で可決、通過しました。神庭さん、法案は参議院に送られ審議されますが、法案の内容を教えてください。


神庭さん:小・中・高校、幼稚園、保育園、特別支援学校などに対して、教員・職員に、性犯罪の前科がないかどうか確認を義務付けることになります。一方、放課後児童クラブ(学童)、認可外保育所、学習塾、スポーツクラブといった民間の事業者には一律の義務はありませんが、認定制度を設けます。認定された事業者は、職員の性犯罪歴の確認が義務付けられ、そのことを広告などでアピールできるようになります。


吉田:職員に性犯罪の前科が確認された場合、どうなるのでしょうか?


神庭さん:事業者側は、配置転換などの措置を取らないといけません。強制的にクビにするまでの強い措置ではありませんが、職場に発覚した時点で、別の部署で働き続けるというのは、実際のところかなり厳しいかなと思います。事実上の就労制限として機能すると思います。ちなみに性犯罪歴を照会できる期間は、拘禁刑(懲役と禁固)だと刑を終えてから20年、執行猶予がついた場合や罰金刑以下の場合は裁判で刑が確定してから10年と定められています。


ユージ:課題はどんなことが指摘されているのですか?


神庭さん:1つ目は、民間事業者が認定制度にとどまったことです。四谷大塚の講師による盗撮事件や、ベビーシッター「キッズライン」のシッターによる性虐待事件など、子どもの性被害が相次いだことを考えれば、民間事業者も一律、性犯罪歴の照会を義務化した方がよかったんじゃないかなと思います。もちろん、認定制度もないよりはマシです。保護者としては、認定されていないところよりも認定されているところを選ぼうという心理になりますし、結果として後ろ向きな事業者は淘汰されていきます。ただ、それには時間もかかるデメリットもあります。


ユージ:確かに民間の場合は、対応が分かれそうですよね。


神庭さん:朝日新聞が、4月に大手塾50社を対象にしたアンケートでは、河合塾や英進館がDBS参加を決め、早稲田アカデミーも参加の方向。6割にあたる29社が参加する方針を示しました。一方、公文教育研究会は「検討中の項目が多い」、SAPIXを運営する日本入試センターは、「ブランドごとに対応が同じではないため回答が難しい」と説明するなど、回答を見送る会社もありました。(あくまでも4月のアンケートなので、今は対応を決めたところもあるかもしれません)任意の認定という形をとる以上はどうしても各社で対応にバラツキが出てしまいます。また1人経営の個人塾やフリーの家庭教師、ベビーシッターにはそもそも制度の網がかかりません。大手を追われた人たちがフリーになって、密室でより犯罪が起きやすくなるようなことは絶対に避けないといけないかなと思います。


吉田:制度が成立しそうな流れですが、なかなか不安が残りますね。


神庭さん:いま話したように、かえって犯罪が増えては本末転倒なので、そこは注意が必要かなと思います。とはいえ、犯歴情報という非常にセンシティブな情報を小規模な個人事業主に管理させることは、それはそれで心配でジレンマがあります。そして、日本版DBSの課題の2つ目は、対象となる性犯罪が十分なのか?という部分です。法案では、不同意性交、不同意わいせつ、児童ポルノ禁止法などの他、痴漢など都道府県の迷惑防止条例違反なども照会の対象となります。ですが、ストーカーや下着泥棒は対象外です。懲戒処分になったケースや不起訴処分になったケースも含まれません。これでは、不十分じゃないかという意見もあります。


ユージ:ストーカーは除外されるのですか?


神庭さん:そうですね。ストーカーに関しては、私も対象にした方がいいと思います。とはいえ下着泥棒を含めるとなると、じゃあTシャツはどうなのか、ハイヒールを盗んだらどうなる?とか線引きが非常に難しくなってくる部分もあります。だからと言って、窃盗を全部含めろとなると万引きから何から全部入ることになり、「子どもを性犯罪から守る」という制度の趣旨を逸脱してしまう部分もあります。それから、懲戒処分になったケース、民事で性暴力が認められたケースなどは対象に含めることを検討してもいいと思いますが、不起訴事案まで含めると今度は「疑わしきは罰せず」の刑法の理念に反する部分が出てきます。かなり細かな議論が必要な論点が多いので、今回はスピード感優先で法律を通したのかなと思います。


吉田:範囲を決めるのは、本当に難しそうですね。神庭さんは、日本版DBSについて、どう見ていますか?


神庭さん:前にもお話した通り、総論は賛成ですが各論の部分では今挙げたような課題があります。要は、「攻め」と「守り」のバランスかなと思います。義務化の範囲や、対象となる犯罪の範囲は今より広げた方がいい部分もあると思います。一方で、犯歴情報というのは相当にセンシティブで、流出や人違いなどがあると取り返しがつきません。目的外利用などができないように、二重三重の安全策を講じないといけないと思います。犯歴照会の範囲や期間を広げすぎて、「窃盗や薬物事案も含めて社会のあらゆるところから前科者を締め出そう!」みたいなことになると話が変わってきてしまいます。あくまでも、子どもを守るための仕組みですから、日本版DBSが正しく、適切な範囲で運用されるようにしっかりと運用を監視して一定の歯止めをかけることも重要です。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。




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