26.06.29
データセンターに不安、行政が要望書提出

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【データセンターに不安、行政が要望書提出】
吉田:データセンターの建設をめぐって周辺住民の不安が高まっているとして、東京都江東区は6月23日、業界団体「日本データセンター協会」に対して、対応の改善を求める要望書を提出しました。そこで今朝は、国内外でデータセンターへの反発が起こる背景について、神庭さんに解説してもらいます。まず、データセンターとはどんな施設なのか、教えて下さい。
神庭さん:大量のデータを処理・保存するための施設です。インターネットのサーバーや携帯電話の通信機器などが多数設置されていて、24時間365日体制で運用されています。日本データセンター協会によると、光ファイバーなどの通信回線が多く引き込まれていて、電力が途絶えた時に備えて、大容量の蓄電池や自家発電装置も設置されています。AIの普及でビッグテックによる計算資源の争奪戦が加速しており、各国でデータセンターの建設が進められています。データセンターの市場規模は、2030年までに全世界で278兆円まで膨らむとみられています。
JOY:そんなデータセンターが、なぜ周辺住民との摩擦が起きているのでしょうか?
神庭さん:騒音や排熱が懸念される、地域の電力インフラに負荷がかかる、大量の水を消費する、景観に良くない、といった不安・不満を抱く人がいます。特にアメリカでは大規模な反対運動が巻き起こっています。ギャラップの調査によると、アメリカ人の71%が地元にAI用のデータセンターが建設されることに反対しています。原発に反対する人の割合が53%なので、データセンターは原発よりも嫌われているということになります。反対理由としては、過剰な電力・水の使用、環境への影響、騒音などを挙げる人が多かったそうです。日本も他人事ではないです。読売新聞によれば、東京都昭島市や小平市で住民の反対運動が起きており、千葉県印西市と白井市では、住民が開発許可や建築確認の取り消しを求める訴訟を起こしている状態です。
吉田:今回の江東区の要望はどんな内容でしょうか?
神庭さん:NHKによると、データセンターの立地を検討する段階で、自治体への報告や周辺住民への周知を徹底するよう事業者側に求めています。他にも、情報公開、環境への配慮、住民との継続的な対話、災害対応などを要望しているという状態です。要望書を受け取った「日本データセンター協会」の側も無策だったわけではなく、実は5月の段階で「地域共生ガイドライン」を発表しています。ガイドラインには、立地検討段階での行政への連絡、周辺住民への説明といった項目が盛り込まれています。排熱や騒音、交通渋滞、景観などに留意し、丁寧に説明することが明記されています。今回の江東区の要望書は、こうした業界の自主規制ガイドラインに沿ったものです。自分たちで決めたので、しっかり守ってね、ということです。
JOY:他にも、何か気になる点はありますか?
神庭さん:江東区は準工業地域が半分弱を占め、工業地域や工業専用地域も合わせると65%を占めます。23区と比べても工業地域の比率が大きいです。そもそもが工業のためのエリアで、後からタワマンがニョキニョキ建ったりしています。データセンターどころか工場が隣に立ってもおかしくない立地なので、住宅地などに比べると住民の立場は弱いです。また、現行の建築基準法では、データセンターにピッタリ当てはまるような用途区分がないです。結果として「事務所」とか「倉庫」として届けられるケースが相次いでいるようです。データセンターがオフィスのような扱いになっているのはさすがに不自然なので、法的な対応が必要なのではないかと思います。
吉田:神庭さんはこの問題、どう考えていますか?
神庭さん:アメリカのデータセンター反対運動には、反AI感情も絡んでいます。Googleの元CEOがアリゾナ大学の卒業式でAIを称賛したら、大ブーイングが巻き起こりました。先週のビッグステイの時にも話しましたが、アメリカではAI失業で「ギュられる」恐怖が日本以上に身近です。だから、AIの為にデータセンターをつくるという話にも「チッ、なんだよ」という反発が生まれます。産業革命の時代のイギリスでは、労働者が機械を打ち壊すラッダイト運動が起こりました。AI革命時代のデータセンター運動は、現代のラッダイト運動的な側面もあります。
JOY:この問題、どうしたらいいんでしょうか?
神庭さん:なかなか難しいですが、データセンターには会社や工場と違って大きな雇用を生まないですし、お店のように街の賑わいにも繋がらないです。そうした点も不満に繋がりやすいです。NTTファシリティーズは、データセンターの廃熱をサウナに活用し、周辺の住宅やオフィスビルの暖房、ビニールハウスにも使ってしまおう、という面白いアイデアを考案しています。データセンターはちょっと微妙、でもサウナ付きデータセンターならウエルカムだよ、という人もいると思います。AI時代により多くのデータセンターが必要になることは間違いないです。「なんとなく嫌だ」という住民エゴと、深刻な実害が発生しているケースをしっかり切り分けて、事業者と立地地域がWin-Winになるような事例を積み上げていけると良い思います。