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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.07.15

『需要に応じた生産』が明記された改正食糧法について

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


【『需要に応じた生産』が明記された改正食糧法」について】

吉田:改正食糧法が7月8日、参議院本会議で可決、成立しました。コメの減反政策と同じ意義とみなされていた「生産調整」の記述を削除し、代わりに「需要に応じた生産」を促すと明記しています。塚越さん、この改正食糧法について、詳しく教えてください。


塚越さん:まず今回の改正は、おととしの夏から生じた「令和の米騒動」を受けたものです。要因としていろいろありますけれども、農林水産省が需要と供給を見誤ったことや、流通実態の把握不足、また備蓄米の放出時期も遅れたことで、価格が急騰するなど、様々な課題がありましたよね。そこで今回の改正法では、まず一定規模以上の大手の出荷・販売業者に、コメの民間備蓄を義務付けます。政府は供給不足の際、民間備蓄米の放出を要請し、従わない場合は段階的に指示を強めて、それでも従わない法人には、最大1億円の罰金が科される可能性があるということです。コメの備蓄については、2026年度中に5万トン程度の実証事業を行って、正式な開始は2028年度からということです。備蓄量は政府が80万トン、民間が20万トンを想定しています。他にも、これまで在庫量の定期報告が義務だったコメ販売業者に加えて、米粉などの加工業、また外食や弁当の製造業者など、一定以上のコメを扱う業者も在庫の報告を義務付けることで、流通を把握するということです。もうひとつ大きな点としては、これまでの法律にあった「生産調整」に関する規定を削除する代わりに、「需要に応じた生産」の推進を明記しました。これはどういうことかと言いますと、「生産調整」という言葉はこれまで、事実上の「減反政策」の決まり文句でした。コメの価格が下がらないように減反を進めるときの言葉でしたが、2025年石破前政権の時に、これを変えてコメを増産する方向性を打ち出したのです。しかし、今回「生産調整」に代わって盛り込まれた「需要に応じた生産」という言葉は、需要が増えれば増産ということになりますが、需要が少なかったり少なめに見積もられたりすれば、結局は減反政策に近づくことになってしまう。そのため、一部の農林水産省関係者からは、先祖返りではないか、実質的には元に戻ってしまうのではないかとの批判も出ています。


吉田:コメの価格は下がってきてはいますが、改正食糧法に「需要に応じた生産」が明記されたことは、コメの価格にどんな影響を与えるのでしょうか?


塚越さん:前提として、法改正してもその影響がすぐに店頭価格に出ることはないのですが、今後には影響します。その上で今のところ農林水産省によると、6月29日〜7月5日に全国およそ1,000のスーパーマーケットで販売したコメ5キロの価格は、2週連続で値下がりして3,458円と、およそ1年半ぶりの低水準です。去年は価格高騰に伴ってコメの販売が鈍るだけでなく、増産や備蓄米の流通もありました。そこで新米の季節を前に、在庫を減らすために今は値段が下がっているわけです。つまり、現状ではコメの在庫は十分にありますが、今回の法律にある「需要に応じた生産」をそのまま捉えると、「じゃあコメの生産を減らすってことになるの?」とも受け取られかねません。そうなると、また数年後に再びコメの価格や流通が不安定になる恐れもあります。問題は需要に応じるということよりも、需要を読み間違えたときでも耐えられる体制をどうつくるかが課題だと思います。


ユージ:コメの価格が下がる中、政府・与党内では、備蓄米の買い戻しを求める声が上がっているようですね?


塚越さん:朝日新聞によると、米余りと価格の下落の中で、備蓄米の買い戻しを求める声が政府・与党内にあって、鈴木農林水産大臣も買い戻しを官邸に打診したと報じられています。ただ、コメ価格が高止まりする可能性から、官邸側が難色を示しているということです。生産者や与党の農水関係議員は、「余っているのだから買ってほしい」ということですが、官邸とは少し意見が違うということで対立がありますね。


ユージ:改正食糧法とコメの価格に関する動き、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:やっぱり重要なのは、余剰を無駄というのではなく、食料安全保障のための余裕として持っておくってことが必要ですよね。今回の改正には流通を把握するなどいいことも多く含まれていますが、それでも需要を読み間違える可能性があるので、どこまで柔軟な対応ができるかということですね。また、私が気になっているのは、政府が打ち出している「輸出のための需要拡大」という方針です。そのためには販路の拡大や現地での契約も必要ですよね。けれども、この姿勢は前政権の姿勢に比べると、今回は少しトーンダウンしている感じがします。そうすると、輸出に向けた前向きな方向はちょっと難しいのかなと思います。コメ政策は、高齢化で農家さんが縮小したりなど課題もたくさんあります。これだけ大きい「令和の米騒動」をみんな経験しました。この失敗をちゃんと認めて、どこまで上手いことできるのかというのは、我々も厳しくチェックしていく必要があると思いますね。

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