26.07.23
酷暑日と熱中症警戒アラートについて

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
「酷暑日と熱中症警戒アラートについて」
吉田:昨日7月22日、総務省消防庁が、7月13日から19日の1週間に、全国で1万857人が「熱中症」で救急搬送されたとの速報値を発表、1週間の搬送者が1万人を超えるのは今年初めてです。そして今日は、関東から西日本、沖縄の38都府県で、熱中症警戒アラートが発表されています。
ユージ:塚越さん、連日「熱中症警戒アラート」が発表されていますね。
塚越さん:2021年から全国で本運用が始まった熱中症警戒アラート。当日や翌日の気温や湿度、日差しを考慮した「暑さ指数」というのがあって、33以上になると予測された時に発表されます。この指数が35を超えると、その上の「熱中症特別警戒アラート」となって、イベントや運動の変更や中止が求められるのですが、これらはニュースやスマホのアプリでチェックできます。いずれにせよ熱中症リスクが高まるのですが、こうしたアラートは気温以外の要素も考慮されて発表されるので、気温だけじゃなくて注意が必要ですね。
吉田:連日のこの暑さ、社会や経済にも影響を与えていますね。
塚越さん:帝国データバンクの調査によると、猛暑日や酷暑日などを記録した日に、業務に「支障が出た」と答えた企業は5割となっています。また、企業の9割弱がこの1、2年以内に暑さへの対策を強化・拡充して様々な対策をしています。去年から「労働安全衛生規則」というものが改正されまして、職場の熱中症対策が義務化されました。一定の高温環境で働く職場では、熱中症のおそれがある人を早く見つけて報告する体制や、そうした手順を決める必要が出てきたということです。また医学誌「ランセット」の報告ですと、2024年の日本は熱によるストレスによって、およそ14億2,000万時間の潜在的な労働時間、つまり本来なら仕事できたであろう時間が失われていて、潜在的な損失額もおよそ500億ドル、だいたい8兆円程度と推計されています。暑さだけでこの規模のマイナスになってしまう大きな問題です。さらに、これまでビジネスの常識として、暑くなるとビールが売れたりレジャーに行く人が増えたりと、季節性の需要が高まると考えられていましたが、35度を超える暑さになると、外出が減って外食も旅行消費も減る傾向があるという分析も出ています。気温が高くなりすぎると様々な消費活動が減ってしまいます。さらにいうと、エアコンを長時間使用して電気代がかさむなど、日常の家計にも影響が出ますので、それがレジャーや外食の消費減にもつながると考えられます。暑すぎることはビジネスにもマイナスというのは、この数年日本で生きてきた私たちには直感的に理解できる話だと思います。
ユージ:暑さを逆にプラスにしようとしているところはありますか?
塚越さん:暑すぎるからこそ、暑さ対策投資が新しい市場を生みます。断熱や遮熱材はもちろん、最近は「ハンディファン」や首に巻く「ネッククーラー」「空調服」など、新たな熱中症対策グッズも増えましたよね。個人的には、日傘が毎年進化していて、紫外線だけでなく遮熱性も高くなっているものが出ています。私はもう常に日傘をさしています。皆さんも使ってみてください。あとはですね、街でも涼める場所として「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」と呼ばれる施設が、熱中症特別警戒アラート時に開放されます。これは自治体が正式に指定した公共施設が該当します。民間施設も自治体と協定を結んで、大型のショッピングモールなどが指定されることもあります。民間にとっては集客につながりますね。あとは、宅配やネットサービスです。外出を避ける人が増えれば、需要が宅配やネット通販に移る可能性があります。ただし、私たちが外に出ずに済む分、暑さの危険が配送員の方に移る面もあります。企業側も休憩や冷却設備、無理のない配送計画を作る必要がありますし、私たちも置き配やまとめ配送で再配達を減らす必要があると思いますね。
ユージ:酷暑日と熱中症警戒アラートが生活に変化を与えていますね。
塚越さん:エアコンを我慢しない方がいいということは、なんとなく皆さんも分かってきたかと思います。ただ、暑さというのは気温だけでなく、湿度や日差しなど、様々な要素が関係しています。そのため、気温だけにとらわれず、自身の体調変化をチェックすることが大切です。あとはやっぱり、熱中症警戒アラートも発表されますので、そうした情報に気を配って、「今日の数値はどれくらいかな」とチェックすることが重要なんですね。
ユージ:あと、発表されている気温だけを見て「この温度ならまだ平気か」ではなく、その時の自分の体調によっても変わったりするので、自分の胸に手を当てて、体がどういう状況なのかを理解した上で安全対策を行ってほしいですね。