26.08.03
熊本地震で改めて考える”企業の防災”

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【熊本地震で改めて考える”企業の防災”】
手島:7月28日に発生した熊本地震で38人の死亡が確認され、人的被害は143人に達しました。爆発事故があったイオンモール熊本では、従業員7人が死亡、日本製紙の八代工場でも9人が亡くなるなど、企業も大きな被害を受けました。そこで今朝は、企業の防災のあり方について、神庭さんと考えたいと思います。神庭さん、改めて詳しい被害の状況を教えて下さい。
神庭さん:まず、亡くなられた方にお悔やみ申し上げたいです。暑いなか、地震の被害で大変な思いをされている熊本の皆さんに心からお見舞い申し上げます。被害状況ですが、嘉島町のイオンモール熊本では、従業員7人が亡くなりました。LPガスの爆発があったとみられます。イオンモール熊本には9367キロのLPガスを貯蔵することができ、飲食店での調理や空調設備の為に使われていました。詳しい原因は調査中ですが、専門家は地震で配管が破損してガス漏れし、何らかの理由で着火、爆発が起きた可能性を指摘しています。そして、八代市にある日本製紙の工場では、社員6人、協力会社の社員3人の合計9人が亡くなりました。煙突が倒れ、従業員が閉じ込められるなどの被害が出ました。長周期の揺れが煙突の倒壊に影響したのではないかとみる専門家もいます。
ユージ:本当にショッキングなニュースですよね。ショッピングセンターでの爆発事故は本当に衝撃でした。
神庭さん:そうですよね。ショッピングセンターは平和や憩いの象徴のようなところがあります。休日にフードコートで団らんする家族のイメージです。だからこそ、爆発の映像は衝撃が大きかったです。イオンモール熊本は地域の防災拠点です。朝日新聞などによると嘉島町との協定で、駐車場を避難場所にしたり、物資を供給したりすることになっていました。2016年の熊本地震の際も、車中泊の人達の為に駐車場を開放したそうです。
ユージ:これまでも防災に取りんでいたんですね。
神庭さん:熊本に限らず、イオンは国内のほぼ全てのモールで、自治体と防災活動に関する協定を結んでいます。イオンのサイトには「モール運営で何よりも優先するのはお客さまの安全」と記載されています。同社によれば、専門店の従業員らと地震・台風などの災害を想定した訓練を定期的に実施。地域が広く被災した場合にも、施設の機能維持に必要な電力や飲料水を確保しているということです。非常に素晴らしい取り組みですが、防災拠点という以上、大前提として他の場所より安全である必要があります。今回の事故を受け、全国のイオンモールでガス設備の緊急点検をするということです。
手島:企業の防災で大切なことについては、どう思われますか?
神庭さん:1つ目がお客様を守ること。2つ目は従業員を守ることです。お客様を守るという観点で、私が気になっているのが商品の陳列方法です。例えばコストコやIKEAのような倉庫型店舗や、ドン・キホーテのように商品を高く積み上げるような圧縮陳列は見ていて楽しいですが、大きな地震が起きた時に大丈夫なのかどうか心配になります。建物の耐震性に問題がなくても、高いところから商品が落ちてきたら危ないです。もちろん、耐震ラックや落下防止バーなど一定の対策はしていると思いますが、心配になりました。お客さんの保護に関して、地震当時3000人いた客を無事に避難させたイオンモール熊本の対応は非常に優秀だったと思います。一方で従業員に犠牲者が出てしまった点では課題を残しました。
ユージ:従業員の保護で注意すべき点についてはいかがでしょうか?
神庭さん:避難を終えた後に、建物に戻らないことです。RKK熊本放送によると、イオンモール熊本で亡くなった女性従業員は建物の外に避難した後に「一回戻らないといけない」「金庫にお金を入れないといけないと言われたので戻る」と話していたそうです。誤解がないように補足すると、イオンとしては「一旦避難をした者は館内に入らない」ということがマニュアルのルールになっていました。テナントの幹部からは「金庫にお金を入れてください」という指示があったということなので、戻ってしまったのは非常に残念だと思います。
ユージ:最後に、悲劇を防ぐ為にどんな対策が必要だと思いますか?
神庭さん:災害時にショッピングセンター全体の避難ルールと、各テナントの店舗責任者の判断にねじれが生じないようにすべきです。指示が食い違ったら、従業員はどちらに従っていいか分からなくなってしまいます。そういう場合「施設運営者であるショッピングセンター側の避難ルールを優先する」と決めておいた方が良いと思います。もう1点、仕事中のスマホ所持を禁止しているお店も多いと思いますが、スマホは非常時の連絡ツールであり、災害情報の収集にも不可欠です。緊急地震速報の受信や社内の安否確認システムへの回答にも使えます。ゲームや動画視聴など私的利用を禁止しつつ、所持自体はOKにするなど柔軟な対応を検討しても良いと思います。最後に大きな災害が起きた時、お客様を守る為に従業員が犠牲になることを美談にしてはいけないと思います。お客様も従業員もどちらもしっかり守られるような避難対応を考えていけないと思いました。