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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

26.08.06

災害時、病院の情報共有が命を救うEMIS(イーミス)

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!


「広域災害救急医療情報システム・EMIS 病院の情報共有が命を救う」

吉田:先月発生した熊本地震の被災地で、病院間の入院患者搬送に広域災害救急医療情報システム、EMIS(イーミス)が活用されています。


ユージ:塚越さん、まずEMISが、どんなシステムなのか教えてください。


塚越さん:EMISは「広域災害救急医療情報システム」の略で、厚生労働省が運用しています。内容を簡単に言いますと、病院の状況を共有するシステムのことなんですね。災害が起きると各地の病院が建物の被害や停電、断水、患者の受け入れ状況などを入力します。その情報が一元的に集約されて、自治体の災害対策本部や、今回の災害でも注目された「災害派遣医療チーム=DMAT」にリアルタイムで共有できます。このシステムが生まれたきっかけが1995年の阪神・淡路大震災で、当時は各病院の被害状況が共有できなかったことがあって患者さんの移送に遅れが出ました。こうした経験から、1996年から運用がはじまりました。


吉田:運用開始から30年、EMISの活用状況はどうでしょうか?


塚越さん:EMISでは、平時から病床数や自家発電機、受水槽、燃料の備蓄など、医療機関の基本情報を登録しておきます。そして災害が起きると、建物の被害や停電・断水、診療を続けられるかなど、その時点での状況を入力することになっています。平時の設備や備蓄と災害後の状況を組み合わせることで、どの医療機関に、どんな物資や支援が必要か判断しやすくなるからです。そのために平時とその緊急時を分けるということなのですが、運用面でいうと、平時の基本情報の入力に課題があったということです。厚労省によると、今年3月の時点で医療機関の基本情報の入力完了率は、病院や有床診療所など全国で63%でした。また災害時に拠点となる「災害拠点病院」でも89%と、課題が残る数字でした。この原因としては、EMISが去年2025年に新しいシステムへ移行したことで、追加で記入するものが記入されていなかったり、更新されていない項目などがあったと考えられます。それは理解できますが非常時の備えとしては課題が残っていました。そこで厚労省が改めて入力を要請し、4月17日の時点では災害拠点病院の入力率が100%、全体でも88%まで上がりました。


ユージ:今回の熊本地震で、EMISが活用されたようですね。


塚越さん:震度7を観測した宇城市の「熊本南病院」では被害が大きく、127名の入院患者の避難先を確保するにあたって、EMISを利用して他の病院の空きベッド状況を確認したということです。その他、電話等を利用して調整するほか、救急車や福祉タクシーも利用して、地震発生からおよそ15時間後には入院患者全員の移送が完了したということです。熊本県は10年前の2016年の熊本地震のあと、自治体と病院が連携して、平時からEMISの入力や災害を想定した研修を重ねてきたことで、今回のような迅速な対応ができたということです。そのため、EMIS自体もうまく活用されているのですが、同時に現場の判断も重要です。EMISのようなデジタル化された情報共有ツールと同時に、人間のアナログな判断も両輪で利用していくのが重要になってくると思いますね。


ユージ:改めて、災害時の情報共有、重要ですね。


塚越さん:そうですね。ただEMISの基本情報の記入は全国で100%には届いておらず、4月の段階では熊本県でも86%となっていました。災害時の情報共有を的確に行うには、前提として平時の運用が必要になります。一方で熊本県では、10年前の災害の経験もあって、災害を想定した訓練なども行ってきたことが迅速な対応につながった面がありますので、デジタルの部分とアナログな部分、両方を使っていく必要があります。そして平時の情報も重要になってきますので、平時にいかにやるかということですよね。このように考えてみると、今回の災害から私たちも学ぶ必要があると思います。今回は医療機関のお話でしたが、企業はもちろん、各ご家庭でも災害時のルールを平時から準備しておくことが大切ですよね。災害が起きたらどうするか、連絡が取れない時にどう動くか。もちろん備蓄も当然のことですが、特にお子さんや高齢者の方にも分かりやすくお話ししておく必要があると思います。何事もひとごとではないですよね。あとは、こうした情報共有ツールは今後、道路のインフラ状況などと複合的に大きくなっていく可能性があると思います。逆に複雑になって見づらくなる懸念もありますので、そこはAIをうまく使って自動化していくなど、活用が大事になると同時に、やはり一番重要なのは現場での人間の判断です。現場の人的リソースに力を入れていくことは忘れてはならないと思いますね。

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