26.09.02
学校でのカスハラと、その対策

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
情報社会学がご専門の学習院大学 非常勤講師の塚越健司さんにお話を伺います。
塚越さんに取り上げていただく話題はこちら!
『「学校版カスハラ」への対策をまとめたガイドライン…その内容は?』
吉田:文部科学省は先週金曜、保護者らによる教職員に対する暴言や過度な要求への対策をまとめたガイドラインを全国の教育委員会に通知しました。塚越さん、まずは、文部科学省がこのようなガイドラインをまとめたのはどういった背景があるのでしょうか?
塚越さん:今年の10月から「改正労働施策総合推進法」というものが施行され、企業などにカスハラ(=カスタマーハラスメント)の対策が義務付けられます。学校法人や教育委員会もこの対象となるので、学校現場でも保護者や近隣の方などからのカスハラが課題ということで今回は文科省がガイドラインを作成したというわけです。
吉田:このガイドラインに書かれている内容を詳しく教えてください。
塚越さん:まず、前提として保護者から学校に寄せられる意見や要望は、誠実に向き合うことが重要だとしています。これは当然ですよね。ただしその上で、児童・生徒や教職員を守るために、社会通念上、許容される範囲を超えた言動には、毅然とした対応が求められるとしています。その「許容されない言動」の例を挙げると
①理不尽な理由でクラス替えや担任の交代など、対応が著しく難しい要求
②何度も電話して、同じ要求を執拗に繰り返すこと
③教職員を無断で撮影すること
④長時間学校に居座って業務を妨害すること
などです。対処方法としては、可能な限り教職員が一人で対応しない、複数人で対応しましょうということですね。それから、相手に断りを入れた上でやりとりを録音すること、企業でも「この会話を録音します」とかありますよね。あとは、十分な説明をしても要求が繰り返される場合には、30分など一定の時間で切り上げて退出を求めたり、電話を切ったりすることが挙げられています。もちろん対応はケースバイケースですが、あまりにも過度な行動はダメですよということです。文科省が昨年度に全国11の自治体に調査したところ、回答した563校のうち、およそ4割が過度な苦情や不当な要求を受けたことがあるとしています。
ユージ:教職員に対するカスハラとその対策をまとめたガイドライン。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越さん:企業などでのカスハラ対策はこの数年で対応が進んでいますし、社会的にも「カスハラ」という言葉がかなり普及していて、みなさんも知っている言葉となりましたよね。今回は教職員ということですが、私の親友も高校教員をしていて、保護者対応はどういう理由であれ、やはり気を使う仕事と言っています。実際に、OECDが2024年に行った調査では、ストレスの原因として「保護者の懸念に対する対処」を挙げた日本国内の教員は、小学校も中学校も5割を超えていて、2018年の調査から10ポイント以上も増えています。もちろん、保護者からの正当な意見や要望まで、何でもカスハラと決めつけてはいけませんし、ガイドラインも学校側の不適切な対応が原因や背景になっている場合に留意するよう求めています。その上で大事なのは、どこから許容範囲を超えるものなのかを判断することです。先ほどもお伝えしましたが、こうした判断を教職員個人に背負わせないことも重要だと思います。教員だけでなく、場合によっては第三者に介入してもらって、教員と保護者の二者関係にしないことが重要です。今後は全国の学校で対応が義務化されることになりますので、自治体や学校を越えて、事例や判断基準を共有する仕組みも必要になると思います。こうした仕組みを整えて、学校も保護者も、共に健全なやりとりができる空間づくりが重要だと思います。今は教員が個人で我慢してしまう状況になっていますし、教員も人材不足や過労などいろいろ言われていますので、そういったところをならしていく仕組みを作ることが今回のガイドラインの重要な点だと思います。
ユージ:僕はカスハラ対策は絶対にした方がいいと思います。あるところから“お客様は神様”的思考を持っている方が増えすぎちゃって、こっちがサービス受ける側だろ!って学校でも同じなんですけど、先生がお店の店員だとしたら、俺たちは客だぞ!みたいなスタンスの保護者が増えすぎちゃって…、僕はどっちが上とか下とかじゃなく、人間としてどちらも対等に大人のやり取りをするべきだと思っているので、互いにリスペクトを持つ。先生側もそうですけど、保護者側も、自分の子どもたちの面倒を見てくださってありがとうございますというスタンスで、その上で、伝えたいことは伝えていいけど、大人の良識ある伝え方は絶対に必要だと思います。
塚越さん:お互い一緒に対等に話ができる空間づくりをこういう制度で整えていくのが大事だと思いますよね。
ユージ:そう。守るべきところはしかるべき対応をとってもいいかなと思います。