26.09.07
加速する富裕層ビジネス最前線「いつの間にか富裕層」って何?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
【加速する富裕層ビジネス最前線「いつの間にか富裕層」って何?】
吉田:三菱UFJ銀行は8月26日、富裕層向け会員組織「エムット Excellent Club」を2027年3月に立ち上げると発表しました。そこで今朝は、メガバンクが富裕層の囲い込みに動く背景や、最近話題の「いつの間にか富裕層」について神庭さんに解説してもらいます。まずは、この「エムット Excellent Club」とはどういったものなのか教えてください。
神庭さん:「エムット Excellent Club」に入れるのは、三菱UFJ銀行に預けた金融資産が3,000万円以上ある人か、資産運用残高だけで1,000万円以上ある人です。利用者のメリットとしては来年度上期には、アメックスブランドのプラチナカードを入会金・年会費無料で持てるようになります。買い物などによるポイント還元率は銀行に預けた残高によって変化し、3,000万円なら1%。最大で1.6%のポイントがつくそうです。年間500万円カードを使う人なら、1.6%で8万円分のポイントがつく計算です。また、クレジットカードで投資信託を積み立てると最大7%のポイントがつきます。まだまだあります。条件を満たした場合に定期預金の金利を上乗せしてもらえたり、住宅ローンを借りる際も金利を優遇してもらえたりします。資産運用や相続・不動産・税務などについて、専門家にオンラインで相談できるサービスもあるそうです。
ユージ:これを聞いてると至れり尽せりですが、どんな狙いがあるのでしょうか?
神庭さん:それは富裕層の囲い込みです。エムット Excellent Clubは会員数75万人以上、預かり残高は50兆円を超える見通しです。会員数で見ると三菱UFJ銀行の個人顧客のたった2%ですが、会員が保有する預かり残高は全体の約5割を占めます。銀行としては、彼らにお得意様として長く居続けていただかなければ困ります。一方で富裕層は保有資産が大きいだけに経済動向に敏感です。インフレ時代にただお金を置いておけば、実質的な価値はどんどん目減りしていきます。株や不動産などで運用しようと考える人が増えるのは必然で、預金を確保する為には、例えメガバンクでもあぐらをかいてはいられないです。富裕層の心を繋ぎ止める必要があります。
吉田:他の銀行でも、こういった富裕層対策に取り組んでいるのでしょうか?
神庭さん:三井住友銀行が5月に始めた「Olive Infinite」では、同行の円普通預金500万円以上、SBI証券残高500万円以上、両方の合計で5,000万円以上といった条件を満たすと、通常9万9,000円するVisa最上位ランクのカードの年会費が無料になります。有名シェフの限定プライベートディナーといった特別な体験、各種コンシェルジュサービス、一部の博物館の無料観覧といった特典が受けられる。みずほ銀行にも「みずほプレミアムクラブ」があり、入会条件は円預金500万円以上かつ、銀行・信託・証券を合わせた預かり資産3,000万円以上です。サイトでは、高級レストラン2人以上の利用で本人分が無料になり、プライベートクルーザーの利用、不動産仲介手数料の割引といった特典が紹介されています。
ユージ:どこもゴージャスですね。
神庭さん:銀行は預金者に支払う金利と、企業や個人への貸出金利との差である利ザヤで儲けています。貸すお金を増やすには、安定した預金の確保が欠かせないです。今年3月末の日本の家計金融資産は2,386兆円で、現預金は1,126兆円です。この巨額の資産をめぐって、各銀行がしのぎを削っています。ここで注目されるのが「いつの間にか富裕層」と呼ばれる人たちの動向です。
吉田:この「いつの間にか富裕層」とは、どんな人達のことをいうのでしょうか?
神庭さん:野村総研は近年の株式相場の上昇で富裕層となった層を「いつの間にか富裕層」と定義しています。野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングの宮嵜浩さんの解説記事によれば、地主や企業オーナー、開業医といった従来の富裕層のイメージには当てはまらない。自分の給与所得によって金融資産を築き上げてきた人が該当するそうです。従業員持株会や企業年金で資産を増やした人、NISAなどでの投資で成功した人、退職金の運用で儲けた人などがいるということです。純金融資産1億円以上の富裕層は約154万世帯、5億円以上の超富裕層は約12万世帯。「いつの間にか富裕層」は富裕層以上の1~2割を占めるとみられています。
ユージ:そんな「いつの間にか富裕層」がなぜ重要なのでしょうか?
神庭さん:野村総研によれば「いつの間にか富裕層」には給料の範囲でこれまでと変わらない生活を送る人も多く、資産が増えても金融機関との付き合いが変わらない、マス層に近い特徴があるということです。つまり、金融機関はこの層にまだうまくリーチできていないです。メガバンク各社が富裕層向けサービスの入会資格を「金融資産1億円」ではなくて、3,000万円とか5,000万円に設定している背景には、現在の富裕層だけでなく、将来的に「いつの間にか富裕層」になっていく人も含めて、今のうちから唾をつけておきたい、近づいておきたいという思惑があると思います。
ユージ:都内のマンションの平均価格が1億円とかになっているので、物件を持っているだけでも「いつの間にか富裕層」になっているかもしれないということですね。
神庭さん:そうなっているかもしれないですね。